表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/185

たこ焼き

 ショックなことがありました。


 長年、私が慣れ親しんで愛し続けてきた、タコ焼き屋さんの味が変わってしまったのです。


 私の実家から車で少し移動したところにあるタコ焼き屋さん。

 美味しかったのです。

 そのお店の前にはタコ焼きが焼きあがるのを待つ車が、何台も並んでいるのが常でした。


 油をたっぷりとひき、焼きというよりは揚げに近く、皮はカリッと香ばしく、中はトロリ。

 タコは大きめ、アツアツ、ソース味はもちろん、醤油味もあり。


 父、母がその店の前を通るときには必ず買って帰ってくれたものでした。


 今までに食べたタコ焼きは数あれど、このお店より美味しいと思ったタコ焼きは無かったなあ。

 日本一、美味しいタコ焼き屋さんに違いないと私は思っておりました。

 主人に食べさせたくて連れて行きましたが、主人も美味しいと絶賛。

 世界一、と言っても過言ではなかったと思うのです。

 それが。


 ある日、久しぶりにそこのタコ焼きを買って食べたという父母が。

「全然、美味しくなかった。もう、食べたいとは思わんわ」

 と、私に言ったのです。

 たまたま新人さんが焼いたのだろう、と私は軽く考えていました。


 主人が下船して、早速そのお店に食べに行きました。お店の中で大皿に盛ったのを食べることができます。

 早速、注文してテーブルに運ばれてきたタコ焼きを口に運んだら。


「味、変わったね」


 主人が残念そうに言いました。

 私は信じられませんでした。

 なに、この味。今までとは全然、別物……!


 ソースが違う。

 今までは秘伝のソースを使ってらしたのだと思うのです。それが。

「お◯ふくソース」のたこ焼きの味、そのまんま!


 焼き方も焼き過ぎていて、以前とは程遠い。

 私は悲しくなってしまいました。父母が言っていた通りだと。


「これなら、醤油味、頼んだ方がええな」


 主人と話して醤油味の追加注文をしました。

 醤油味も美味しいですが、やはりこの店の一番の売りは元祖ソース味だったはず。

 残念に思った私は、注文を取り終えたお姉さんに、勇気を出して聞いてみました。


「あの、ソース、変えはりました?」


 お姉さんは当然のように答えました。


「いえ、以前からこのソースです」


 ショックでした。

 明らかに違う味なのに。子供の頃から数え切れないほど食べてきたのです。間違うはずありません。

 そのお姉さんは新人さんだったかもしれません。それでもショック。


 それからそのお店には行ってません。

 ぐるナビで取り上げられて、観光客の方がバスで乗りつけてきたりしていますので、お客さんは減ってはいないようです。

 でも、お店の前の車の列の姿はなくなりました。昔馴染みのお客さんは、やっぱり去ったようです。


 コスト削減等、お店にも事情があってそうせざるを得なかったのかもしれませんが。

 長年、その味のファンだったものにとっては、それが喪われた今は裏切られたような切なさ、やるせなさを感じずにはいられないのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ