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群像

還情

作者: ゆう

闇の中、何も見えない白い闇の中。

僕は口から泡を漏らす。

体は緩やかに動き、心地よい音が耳を打つ。


光の外、全てが見える黒い光の外。

仄かに暖かい、薄く微笑む。既に上辺は剥がれた。醜く膨れた肉体が顕になる。

その心を満たすのは、一体感、絶対感、全能感、それとも悲壮感、焦燥感、劣等感。


黒く霞んだ意識。鋼のような世界を覆う闇の中の霧。

自覚が僕を灰にする。無数の生命が内に潜む。

白く濁った精神。永久からの移動の証、延命治療の体現者。


始まりの場所、誕生の秘境。零が一になる点。

全てを激流で攫い、奪い、葬る源泉。一を零に返す線。

先に行ってしまった物には既に還れない凡ての故郷。


その源は、神の水。神の涙、神の血、神の脳漿、神の尿。

倒れこんだ神の体は、全ての基盤、全てが此処にある理由。

光り輝く神の意識。鈍く輝くその恒球は全てを動かす熱の源。


遥か頭上から全てを見る者の定め、胸を焦がし、愁い、望みを絶つ。

彼女は世界に還元される。演繹の名の元に、帰納の姓が落ちた所へ。

闇を無くすために闇を作り出す矛盾。光を生み出すために光を失う順当。


君の中で万物は生まれ悲しみ涙を流し、君の上で全てが立ち狂い高笑いをし、君の下で一切は踊り照らされ巡り廻る。


世界の果てで僕は悠久の時を過ごす。其処に居れば、何時の日か、君が死ねるのでは無いかという希望を持って。

世界の限界で僕は眠りに就く。其処に居れば、何時の月か、君の存在する意味が分かると感じて。

世界の終りで僕は君を待つ。其処に居れば、何時の年か、君に会えると信じて。


夏目漱石の夢十夜、第一夜に触発されて書きました

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