なぜか険しい道のり
なぜか保健室までの道のりは険しかった。
大した距離じゃなかったはずなのに、今はやたら遠くに感じる。
呼び止められて連れてかれて、目の前には怖いお姉さん方三人。先輩かな?
メイクとか凄くしてるような綺麗な……やっぱり怖い人達。
「あんた、大して可愛くもないくせに流星と付き合ってるって?」
一際けばい人が言った。
流星君のこと、呼び捨てにしてるけど、別に親しいわけじゃないと思う。
一方的なファン。そんな感じ。多分。
「生意気なのよ。どんな手使ったか知らないけど、別れなさいよ」
「それは保証できませんよ」
今から流星君を迎えに行って、どうなるかはわからない。
流星君から別れようと言ってくれるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
だって、別れろって言われて、「はい、そうするつもりです」とは言えない。
別れたいわけじゃないんだ。
「これを流星に見せたらどうなるかしらね?」
突き付けられるのはケータイの画面。
相馬君と私、さっきの頭を撫でられてるところ。
これが絶妙な角度で……全然、気付かなかったなぁって。
何て言うか、お見事?
「別に構いませんよ。やましいことがあったわけじゃないですし」
それで流星君の本音が聞けるかもしれないし。
相馬君だってはっきり否定してくれるはず。
あれは妹にするみたいな……多分、そんな感じだった。相馬君なりの応援だと私は思ったけど。
「痛い目に遭わないとわからないの?」
手が首元に伸びてきた。
薄い色のマニキュアに彩られた長い爪、こんな風にはできないなぁって。
そんな手首を掴むのは小さな手、ネイルなんかしてないし、お化粧もしてないような可愛い女の子が先輩達を睨んでた。
「そういうのって、脅迫じゃないんですかね?」
「あんたには関係ないでしょ!」
「でも、見ちゃったんですよねぇ……」
困ったように女の子が肩を竦めて……
「痛っ……何するのよ?」
「とりあえず、この手は離しましょうよ」
平然と先輩の腕を捻り上げて、私の襟から外させる。そして、ぱっと手を離す。
先輩は彼女を殴ろうとしたんだろうけど、さっと避けた。
「虎が出るか、猫が出るか、城が出るか……ちょっと試してみます?」
ケータイ片手に不敵な感じで、ちょっとかっこいいなぁって思ったりして。
ネコちゃん先輩もかっこいいけど。
そう私は可愛い女の子になれなくても良いから、こういうかっこいい女の子になりたかったんだ。
「思い出した! 白虎の女だ!」
「チッ……」
白虎?
よくわからないけど、先輩方は顔を見合わせて、舌打ちしたりしていなくなって……助かったのかな?
「篠木林檎ちゃん、でいいんだよね?」
先輩達の後ろ姿を見送って、女の子が聞いてくる。
「そうだけど……」
「私、あなたのこと、一方的に知ってるから放っておけなくて」
何で、私の名前知ってるのかな?
やっぱり、噂で知られちゃってるのかな?
「私は二年F組の玉城楓」
たまき、さん?
あれ、たまき、って聞いたような聞かなかったような……
「えっと、ありがとう」
「私が勝手にしたことだから」
助けてとは言ってない。でも、助かったから。
「生徒会の結城天真君の幼馴染みで寧々子先輩とも話すから、あなたのこと聞いてるの」
「それともう一つ、あなたが付き合ってる男の子の友達と、その、付き合ってて」
「と、友達って相馬君、じゃないよね」
だって、相馬君に彼女がいるなんて聞いてないし、この前赤い糸が繋がってなかったとか……
いや、違う。この子ネコちゃん先輩が言ってた子だ。
南城会長が生徒会長に入れたがってた玉にお城の玉城さんで、南城会長と結城先輩が可愛がってたっていう子。
不良と付き合ってる……それがびゃっこさん? 不良と流星君が友達?
「流星君とクラス一緒になって、最近なぜか凄く懐かれたと思ったら、今日は泣きつかれてうぜぇって愚痴ってるの」
聞いたことないけど、流星君怖い者知らずだし、ありえなくない。
「なんか迷惑かけてるみたいでごめんなさい……」
知らないところで迷惑かけてたなんて思わなかった。
「私達だって結構周りに迷惑かけたし、現在進行形でかけてそうだし……だから、頑張ってね」
玉城さんは私の肩を叩いて、去っていく。
そうだ。流星君のところに行かないと……




