大好きだった人
休みが明けて、私は流星君と距離を置いてた。
流星君は色々言ってきたけど、少し考えたいことがあるからって無理矢理納得させて……
凄く不満そうだったけど、物凄く嫌そうだったけど。
「まあ、賢明な判断よね」
バンリはそう言う。
「あたしは、天城流星にあんたを幸せにできる覚悟があるとは思えないな」
「流星君は私と一緒にいても幸せになれないと思うんだ」
私が幸せになるよりも流星君だよ。
「あたしはね、あんたが幸せならそれでいいと思うのよ。あんたが、その相手が天城流星だって言うなら止めない。でも、そうじゃないなら何だって協力するわ」
「協力?」
な、なんか嫌な予感……。
「天城流星にガツンと言って、綺麗さっぱり別れさせてあげるわ」
うん、ちょっと物騒だ。不穏な気配。
ぐっと拳を握り締めるバンリは本気だと思った。
「慰謝料はいくらにする?」
「い、慰謝料?」
な、何でそんな話になるんでしょう?
「大事な大事な林檎のファーストキスがあの頭のゆるい奴に奪われたかと思うと今になって怒りが……!」
あーっ! そうだった私のファーストキス!
……いや、慰謝料とかいいけど、いらないけど。
「大体、相馬が……」
バンリがブツブツ言い始めた。
怖い、目が怖いっ!
「大丈夫、私は大丈夫だから! 心配しないでバンリ、本当に大丈夫だから!」
「本当に?」
じーっとバンリが疑いの眼差しを向けてくる。
「うん、ちゃんと自分で解決するよ。大丈夫大丈夫」
「それならいいけど……何かあったら、ちゃんと言うのよ?」
「ありがとう、バンリ」
それ以上、バンリは何も言わなかった。
だって、これは私の問題だから。
*
バンリにはああ言ったけど、大丈夫じゃない。
何度も大丈夫って繰り返して、自分に暗示をかけようと思ってもできなかった。
どうしたらいいかわからなくて、苦しい。
そして、お昼休み、バンリと一緒に食べた後、気付いたら足は三年生の教室に向かってた。
その人はすぐに見つかった。
「ネコちゃん先輩!」
ネコちゃん先輩こと白河寧々子先輩。
生徒会役員で会計。ううん、会計なのに、いつもなぜか風紀委員みたいな仕事ばっかりしてる。
不良さんとしょっちゅうやり合ってる。
ブラウスの胸元の猫のアップリケは私が付けた。ネコちゃん先輩は十枚もブラウスをストックしてる。
「あら、林檎ちゃん。何だか久しぶりな気がするわ」
「そうかな?」
そう言えば、前はしょっちゅう来てたかもしれない。
「ネコちゃん先輩、大好き!」
やっぱりネコちゃん先輩好き!
そう思ったら抱き付いてた。
「急にどうしたの?」
「やっぱりネコちゃん先輩大好きだなぁって実感して」
ネコちゃん先輩は嫌がったりしないで、頭を撫でてくれる。
そういうところが好き。
お姉ちゃんみたいに優しくて強い、憧れの人。
「彼ができたって噂になってるのに?」
ネコちゃん先輩が笑う。
うぅっ、ネコちゃん先輩の視視にまで入ってるなんて……!
流星君、有名人だったみたいだし……
「あの子、確か南城が目を付けてて断られちゃったのよね」
「流星君が南城会長に?」
南城稜己先輩は生徒会長。ちょっと変わり者って言われてる。
「そう、まあ、変な話なんだけどね」
「どんな話?」
「あの人、南城でしょ? それで、結城がいるでしょ?」
結城天真先輩は副会長。
二人はよく一緒にいるのを見かけるような……
「結城の幼馴染みで玉にお城の玉城さんって子がいて、南城は彼女に生徒会に入ってほしかったみたいなんだけどね」
玉城さん……?
「名前に城が付く人になぜか親近感を感じちゃうらしいのよね」
あー、確かに南城、結城、玉城で、天城だ!
お城だらけだよ……あれ、保健室の高城先生もお城だ。
「でも、彼、モデルさんなのよね? それで断られたのよ」
うん、流星君、生徒会なんてやってる暇なさそうだし……
私と付き合ってる暇もないんじゃないかって思うけど。
「彼のことで何か悩んでる?」
「ネコちゃん先輩、聞いてくれる?」
「もちろん。恋の相談相手として不足かもしれないけど」
ネコちゃん先輩が微笑んでくれて、私は甘えることにした。
やっぱりネコちゃん先輩大好きだよ!




