王子様と遊園地
そして、いざ遊園地。
現地に着けば、すっかりテンションも上がって、私とバンリはマップを広げてあれがいいこれがいいなんて盛り上がったりして……
「ちょっと待って、俺のデートなのに、何で篠原さんに林檎ちゃん取られてるの?」
流星君がマップを握り締めて泣きそうな顔してた。
「あたしは林檎と一緒に決まってるじゃない」
バンリが私の腕を掴む。
「篠原さんは駈とデートってことで」
流星君、怖いもの知らずだ……
「ありえない。相馬なんかと何を盛り上がれって言うのよ?」
「いいじゃねぇか。今日はまあ親睦を深めるくらいで」
相馬君は笑ってる。
そうだよ。流星君と並んで回ってって、ハードル高すぎるよ。
「ダーメ、林檎ちゃんは俺と一緒!」
グイッと引っ張られて、流星君の腕の中?
バンリが凄く怖い顔してるよ……!
「ま、まあ、俺ら、保護者組だしな……後ろから見守るしかねぇだろ」
「あんたと並んで誤解されるのが不快」
「そりゃあお互い様だろ。俺だって嫌だ」
この二人、仲良くするのは無理なのかなぁ?
*****
結局、流星君のあれに乗りたい、これに乗りたいに散々付き合って、食べたりして、買い物してたはずなんだけど……
そう、お揃いの何かを記念に買おうって言ってたのに、気付いたら流星君が囲まれてた。
そりゃあ、そうだよね。
ずっと声をかけられたりとかはあった。流星君、目立つし、って言うか、モデルだし。
一人は寂しくて、バンリのところに行こうと思った。
何だかんだでバンリもお土産選びに夢中で大きなぬいぐるみをじっと見てた気がする。
と思ったら、バンリは相馬君と一緒にいた。何か話してる。
「あんた、それでいいの?」
「何、俺を許してくれんの?」
深刻な話?
「えっと、何の話?」
声をかけたら二人は驚いたような顔をして……邪魔しちゃダメだったかな?
「天城は……って、あれか」
バンリが女の子達に囲まれる流星君を発見した。
ファンサービス中って言うのかな?
「邪魔しちゃった?」
「そんなことないよ」
バンリは言うけど、険しい顔で……
「ごめん、あたし、トイレ行ってくる」
一瞬、相馬君を見た後、バンリが私にだけ聞こえるように言ってきた。
「篠木? 大丈夫か?」
相馬君は心配してくれてるのかな?
「うん、大丈夫。私なんかが彼女じゃ流星君がかわいそうだなって思っただけ」
「何だよ、それ」
「私のせいで趣味が悪いとか言われるのってかわいそう」
今、流星君を取り囲む女の子達はまるで雑誌から抜け出してきたみたいに見える。
私は顔もスタイルもよくないし、センスの悪さも自覚はある。
「言われたのか?」
「うん、聞こえちゃった。彼女なわけないって。そうだよね」
バンリと相馬君は案外……ううん、バンリなら流星君とだって並び立てる。
「本当にそう思ってるのか?」
「だって、釣り合わないもん」
「思ってるんだな?」
相馬君は怒ってるみたいだったけど、頷くしかない。
だって、本当に私と流星君は別世界の人。
あのキスはきっと何かの間違い。
流星君は純粋な人だから、悪気はなかったと思う。ただ、少し間違えちゃっただけ。
「悪い人じゃないから、友達になれたらいいと思うけど」
でも、友達にしたって、流星君は選ぶべきなんだろうなって……
「わかった。だったら、遠慮はしねぇ」
「相馬君?」
遠慮って何? 相馬君は怒ってるの?
「駈って呼べよ。流星のことは名前で呼んでるんだろ?」
「だって、流星君が……」
天城君って呼ぶと頬を膨らませて不機嫌になったり、泣きそうになったりするんだもん。
「やっぱり、お前は困るんだな」
「えっ」
「俺じゃダメなんだな」
相馬君は何を言ってるんだろう?
「まあ、運命の王子様とか赤い糸とかマジであるんじゃねぇの?」
「ロマンティストなんだね、相馬君も」
私は自分の王子様を待ってて、流星君は赤い糸の相手を探してて……
「まあ、俺の赤い糸は繋がってなかったんだけどな」
そう笑う相馬君は寂しそうで……
「バンリと?」
「んなわけねぇだろ。キレるぞ」
相馬君は本当にキレそうで……良い雰囲気だと思ったのに。
「さて、お前の王子様のお戻りだ」
相馬君が言うと同時に腕が引っ張られて……
「ごめん、林檎ちゃん」
少し疲れたような顔をした流星君がいた。
「ううん、大丈夫だよ」
今になって、駅前で相馬君が言ったことがわかった気がした。
だって、流星君はモデルだもん。
こうなるって、相馬君はわかってたんだよね。
その後、バンリも戻ってきて、その日はお開きになった。




