王子様と初デート
流星君、彼のことは、そう呼ぶようになっていた。
天城君って呼ぶのを凄く嫌がる。付き合うんだからって。
流星君は悪い人ではないと思う。
お互いのことを色々話してそう思った。
自分を私の王子様だって言い張ったりして、強引なところもあるけど。
流星君が載ってる雑誌も買ってみた。本当にモデルなんだなって思った。
写真では大人びた表情も見せて、凄く遠い人に感じる。
けれど、本当は子供っぽい人。
何考えてるかよくわからないけど、でも、優しくて、おもしろい。だからって全てを許すわけじゃないけど。
「ねぇ、林檎ちゃん。週末にデートしようよ!」
お昼を食べながら急に流星君が言った。
「デート?」
「うん、デート」
「デート……」
私だってデートに憧れはある。ちょっと手を繋いだり、帰りに寄り道したり、そんな些細なことだっていいんだけど……
でも、本当に流星君は私の王子様なのかな?
流星君の赤い糸の相手って本当に私なのかな?
「ダメ?」
じーっと見られて困る。
ど、どうしよう……
「嫌なら嫌、ってはっきりきっぱり断る」
そう言うのは、バンリ。バンリならそうやって断れるんだろうな……
でも、バンリがいなかったら私、どうにもできないよ。
あと、相馬君。二人に悪いけど、いつも流星君といる時には一緒にいてくれて助かってる。
だって、流星君と二人っきりだったら、どうしていいかもわからない。この前のキスのことだってあるし……
「バンリ達も一緒?」
「じゃあ、ダブルデートにしようね」
「ダブルデート?」
「俺と林檎ちゃん、駈と篠原さん」
流星君が順に指さした。
「ふざけんじゃないわよ、天城流星。あたしと相馬をセットにするのはやめなさい」
「まあ、待て。デートって言葉は気にくわないが……どうせ、一緒じゃなきゃ、後つけるだろ。保護者だ、保護者」
バンリを相馬君が宥めて……
バンリが黙り込んだ。後つける?
「じゃあ、決定! いつにしよっか、どこに行こっか? あ、俺、遊園地がいい!」
そうして、あっという間に予定が決まっちゃったりして……
*****
デート当日、私は待ち合わせ場所にバンリと一緒に向かっていた。
今日の行き先は、遊園地。
流星君があまり行ったことないから行きたいんだって言ってた。
なんか嬉しそうだな、なんて思いながら私達は賛成したわけだけど。
待ち合わせの駅前に先にいたのは相馬君一人。
「天城はまだなの? ありえない!」
「ば、バンリ……」
流星君がいないことでバンリがいきなり怒り出した。
でも、待ち合わせの時間にはまだ早い。
私達が早くて、相馬君がもっと早かっただけ。
「まあまあ、いつものことだ」
「時間にルーズなやつってサイテー」
ば、バンリ……ルーズじゃない、ルーズじゃないと思う。まだ。
だって、待ち合わせ時間前だもん。バンリはどれだけ流星君に厳しいんだろう。
「あいつも色々大変なんだよ。付き合うんなら、慣れてやれ」
相馬君は言うけど、何が大変なんだろう? 慣れるって何のこと?
流星君のペースってよくわからなくて、まだ慣れられそうもないけど。
「俺もあいつと親友って言っても滅多に外出ないからな」
流星君は映画に水族館に動物園に、色々行きたいところがあるってはしゃいでたけど……
うん、あれは私より乙女かなとか思った。
でも、相馬君はバッティングセンターとか行きそうなイメージだし。
「面倒くさいことにならないわよね?」
「そりゃあどうかな?」
相馬君が肩を竦めて、バンリが睨む。
「おいおい、あの天城流星だぜ? 覚悟が必要に決まってんだろ」
覚悟って何だろう。相馬君に聞こうと思ったら、バンリにガシッと肩を捕まれた。
「林檎、今からキャンセルして、二人で遊ぼう? 遊園地なんて女二人でも遊べるわ!」
それはいくら何でもひどいんじゃあ……遅れてるわけでもないのに。
と思ったら、周囲がざわついて……
「みんな、待たせちゃってごめんね」
息を切らした流星君がやってきた。
「今日は早いな。時間ピッタリだ」
「うん、林檎ちゃん待たせちゃいけないと思って、かなり早く家出てきたからね」
私を見て、流星君はニッコリ笑う。ここに来るまで大変だったみたい。
モデルやってるんだから私服がお洒落なのは当然なのかな。やっぱり凄く人目を引き付けてる。純粋に格好いいなぁ、って。
でも、雑誌の流星君を見てるみたいな遠さを感じた。
「じゃあ、行こうか」
バンリは不満げだったけど、もう文句は言わなかった。




