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運命プリンス  作者:
3/11

王子様と赤い糸

 カフェについてからも、みんながアマギ君を見てる気がした。

 適当に頼んで、ケーキが目の前に並んでも妙な沈黙があった。


「篠木、すまなかった」

「え?」

「本当にすまなかった……!」


 沈黙を破ったのは相馬君だった。何か変な空気だけど。

 何で、相馬君が謝るのか。


「えっと、相馬君……?」

「この頭緩いボンボンがとんでもないことやらかして、親友兼保護者の俺の責任だ!」


 相馬君はどこまで聞いたんだろう。どこまでわかって言ってるんだろう。

 って言うか、頭の緩いボンボンって……


「あ、あのさ、相馬君のせいじゃないっていうか、ぶっちゃけ関係ないって言うか……そうだよね?」

「そう思ってくれるのか!?」


 バッと相馬君が下げた頭を上げる。


「うん、だって、相馬君いなかったし、この人の親友が相馬君だって知らなかったし」


 そもそも、この「え、何で、みんな食べないの?」って顔でパフェに夢中なアマギなんとか君も知らないんだけど。


「そういうことだ、篠原」


 相馬君は急にバンリを見た。なんでバンリ?

 私もバンリを見るけど、不機嫌オーラ全開。


「あら、あたしは林檎が何と言おうとさっきのあんたの台詞の通りだと思うけど? 全部、あんたのせいよ」


 バンリが相馬君に殺意を向けてる。私を通じて面識があるものの、この二人はあんまり仲が良くない。


「バンリ……相馬君は関係ないよ?」

「篠木、もっと言ってやってくれ」


 相馬君は俺を安全にしてくれと言わんばかり。


「本当に怖いんだね、シノの方って」


 アマギなんとかがケラケラ笑って、相馬君の顔がサッと青ざめた。


「て、てめぇっ、余計なことは言うなって!」


 隣からゴゴゴゴゴ……って聞こえるような。暗黒のオーラを感じるような。


「どうせ、またあんた、あたしたちのこと、《恐怖のササシノコンビ》とか言った上に、《恐怖の》は全部シノにかかるとか教えたんでしょうよ」

「事実だろ。恐怖のシノさん?」


 相馬君が受けて立った。

 私たちはなぜか《恐怖のササシノコンビ》とそう呼ばれているらしい。

 ササキとシノハラ、シノシノだと思っている人も多いらしいけど、私は篠木と書いてササキ。


「あたしのどこが恐怖なのよ?」

「自分のまな板みてぇな胸に手ぇ当てて聞いてみるんだな」


 相馬君が嬉々として地雷を踏んだ。

 この二人は会うとこうならずにはいられなくなるらしい。

 でも、それ、セクハラだよ。


「死ね。美女の車に撥ねられて恋を予感しながら死ね!」

「おーおー、相変わらず物騒なこって」


 バンリが怒っても怖がらないのは相馬君くらいだと思う。

 最初から平然としてたっけ。


「で、林檎、今こそあんたに聞こうか?」


 ぐるんとバンリの首がこっちを向いた!


「えーっとね……バンリ」

「うん?」

「この人、私の王子様なんだって」


 行儀が悪いと知りつつ、私はフォークでアマギなんとかを指す。


「は?」


 バンリが固まった。


「そうそう」


 アマギなんとかが満面の笑みで頷いた。


「林檎が待ってる王子様が天城流星……?」


 私が王子様を待ってることはバンリも知ってる。白馬とかそんなんじゃないって、きちんと理解してくれてる。


「流星、お前、ちょっと黙っとけよ? 頼むから黙っといてくれよ、な?」


 相馬君がじっとアマギなんとかを見た。念を押した。


「あのな、篠原、落ち着いて聞いてくれよ?」

「あたしはいつだって落ち着いてるわよ」


 確かにバンリはとっても落ち着いてると思うけど、怒るなってことなんだと思う。少なくとも俺に怒るなって言ってるんだと思う。


「流星曰く、常々探していた赤い糸が繋がった運命の相手を今日保健室で見付けたそうだ」


 はぁ、とバンリから溜息が聞こえた。


「こっちは赤い糸でこっちは王子様……それが出会ったと」


 バンリは頭が痛くなったのかもしれない。


「ったく、突き指したと思ったら、治療もしてもらわねぇで帰ってきやがって。大体、見学の意味ねぇじゃねぇかよ」

「あれはきっと糸が引っ張られたんだよ。もう治ったし」


 アマギなんとかが愛おしげに自分の指を撫でた。


「うっわー、ロマンティック」


 バンリがうんざりしてる。


「林檎ちゃんだって、寝言で王子様って言ってたよ」

「だって、王子様の夢みてたんだもん!」

「そうしたら、もうキスするしかないじゃん」


 あー、何でそれ言っちゃうかな!

 バンリがキレる。マジギレするから!

 恐る恐るバンリをみるけど……


「バンリ、魂抜けてる抜けてる!」


 バンリはぐったりと背もたれに体を預けて上を向いていた。開いた口から何か出そう。

 私がユサユサすると戻ったけど……


「天城流星。あんたは死ね。撮影で魂抜かれて死ね!」

「カメラで魂は抜けないよ」


 冷静なツッコミはいらないから!


「林檎のこと知りもしないで……!」


 え、ちょっと待って、何でバンリ泣きそうなの!?


「まあ、これも運命なんじゃねぇの? 見守ろうぜ、な?」


 相馬君が言うと、バンリがギロリと睨む。涙は引っ込んだみたい?


「試しに付き合ってみたって、罰は当たんねぇだろ。このバカの目だって覚めるかもしれねぇし、覚めねぇかもしれねぇし……」


 なんか、不安たっぷりだよ? 相馬君。


「林檎、あんたはどうする? どうしたい? 接近禁止命令出すんでもいいんだよ?」


 そう聞かれても……うん、どうしたいんだろ、私。

 彼は本当に私の王子様なのかな?


「林檎ちゃん。俺、ちゃんと君の王子様になるから。だから、俺とお付き合いしてください」


 アマギ君はじっと私を見つめてきた。その目は真剣そのもの。


「よ、よろしくお願いします?」


 思わずそう答えていた。その手をガシィッと掴んだのはバンリだった。


「林檎? あたし、あんたの親友だからね? ちゃんとサポートするからね?」

「俺だっているんだぜ?」


 相馬君はニッと笑った。やっぱり、頼もしいなぁ……



 後から聞いたこと、なんとアマギなんとかこと天城流星君はモデルだった。

 だから、バンリも知ってた。むしろ、「何で知らないの!?」って言われたくらい。

 でも、その後でバンリは納得して溜息を吐いてた。

 だって、私の頭の中はあの人のことでいっぱいだったんだから、仕方ないじゃない。


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