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運命プリンス  作者:
1/11

保健室のお姫様

 夢を見てた。 王子様が迎えに来てくれる夢。

 顔は見えない。それなのに、私は幸せで。


 でも、所詮は夢。

 薔薇の背景だったり、歯がキラって光ったり、かぼちゃパンツとかタイツとか現実にはありえない。

 むしろ、ノーサンキュー。


 私は私に見合う王子様に出会いたいだけ。

 ああ、私の王子様。あなたは一体、どこで何をしているの?

 もし、いるのなら、神様、どうか出会わせて。


 眠りの中、引き上げられる。

 ダメ、もう少しだけ、あと少しだけこのままでいさせて。

 ふわふわして、少し苦しい。

 何だろう、この感じ。


 ねぇ、本当に苦しいよ。



*****



 目を開けて見えたもの、よくわからない。

 理解不能。もしかして、まだ夢の中? 幸せな甘い夢は悪夢に変わった?


「あ、目が覚めた?」


 誰かいるの? 男子の声?


「どうも、初めまして、王子様です」


 見えた。にっこりと微笑むのは王子様?

 さらさらの茶髪、ぱっちりした目、すっごいイケメン。

 体を起こすけど、私、まだ夢を見てるの?


「まだ、眠い?」


 頬に手が当てられる。暖かい手、それが私を眠りの世界に押し戻そうとしてる気がした。


「もう一回、キスしよっか?」


 私の髪を撫でて、彼が笑う。

 夢の世界の心地よさ、その甘い空気に酔っていた。

 そのまま彼の顔が近付いてきて、唇に感触。 キスなんてしたことがないのに、夢の中でしてる。

 どうしたらいいかなんてわからない。 苦しくて、目の前の彼のシャツにしがみつく。

 滑り込んでくる生々しい舌の感触……生々しい? 白み始めた意識が一気に覚醒する。


 これは夢じゃない!

 私は慌てて、その体を突き放した。


「な、何すんのよ!?」


 はっきりした視界で見る。やっぱり王子様がいる。

 そして、私はこの男とキスをしていた。されていた。しかも、ディープなやつ。オーマイガッ!


「お目覚めのキス?」


 王子様が首を傾げて、困ったように笑って言った。


「って言うか、あんた、誰!?」


 それが重大な問題だった。このイケメンはどこから湧いて出たのか。

 うちの学校にいたの?


「だから、君の王子様だって言ったでしょ? 俺のキスで起きたから君は俺のお姫様」


 にっこりと笑うそいつに眩暈がした。

 ありえない、絶対にありえないこの状況。


「冗談じゃないわよ! ファーストキスだったのに!」


 ずっと十六年も大切にとっておいたのに、わけわかんない奴に奪われるなんて!

 返せと言いたいけど、返ってくるものじゃない。

 そうしたら、王子様(仮)はしれっと言い放った。


「ファーストキス? 当然でしょ? だって、俺が林檎ちゃんの王子様なんだもん」

「何で、私の名前……」


 私は知らないのに、何で知っているのか。実は前から……とかちょっと期待したけど、彼はカーテンの向こうを指さした。


「だって、書いてあったから」


 確かに書いた。書きました。利用記録に書かされましたとも。保健室のおっさ……お兄さんに。2ーC、篠木林檎(ささきりんご)、頭痛って。体温まで書いたっけ。

 ロマンティックの欠片もない。打ち砕かれた。


「あ、頭痛いの、治った?」

「あんたのせいで余計痛いわよ!」


 頭痛なんて大したものじゃなかったけど、ひどくなってきた。

 これ以上は付き合い切れない。ベッドから降りて、教室に戻ろう。バンリに思いっきり愚痴ってやるんだから!

 そう思ったのに、そいつはついてきた。ついてきやがった。


「待って、無理しちゃダメだって」

「ついてこないでよ!」


 思いっきり早歩きで逃げようと思ったのに、そのスピードについてくるっていうか、ぴったり隣に並ぶ。


「俺、林檎ちゃんの王子様だよ? ついていくに決まってんじゃん」


 その言葉にぴたりと足を止めて王子様野郎(仮)を見た。


「あんたなんか、私の王子様じゃない!」


 白々しい、白々しいにもほどがある。名前だって、さっき知ったくせに。私のことなんかきっと偶然見付けたおもちゃだと思ってるに違いない。

 だって、イケメンなんだから女の子には絶対困ってないんだから。

 そうしたら、そいつは物凄く悲しそうな顔をした。今にも、泣きそうな顔。最悪。


「じゃあ、これから認めてもらえるように、俺、頑張るから、だから、時間頂戴?」

「誰があんたなんかに」


 泣きたいのはこっちなのに、みんながじろじろと私を見ていく。見世物じゃないっての!

 丁度休み時間になったところだった。


「駅の方に凄くケーキが美味しいカフェがあるの知ってる?」

「し、知ってるけど……」


 耳なんか貸さない、貸すもんかと思ってたのにぴくりと動く。

 そのカフェは女子の間ではかなり話題になってる。でも、結構高くて、私もいつかは行こうと思いつつ、なかなか手を出せないでいた。

 ああ、自分のスイーツセンサーが恨めしい。


「じゃあ、何でも好きなの、奢ってあげるから、色々、話そ?」

「話すことなんかないわよ」


 心が動かなかったって言えば、嘘になる。大嘘です。でも、これ以上隙を与えたらいけない気がする。絶対、ダメ。

 でも、にっこり微笑まれて、私は完全に惑わされたんだと思う。


「二人っきりが嫌なら友達を連れてくればいいよ。俺も親友連れていくから、ね?」

「うっ……」

「放課後、迎えに行くから、教室で待ってて」


 そうして、私は名前も知らない自称王子様に強引に約束を取り付けられてしまったのだった。

 絶対、流されてる。

 これから、どうなっちゃうんだろ、私。

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