ゾンビニエンスストア
企画競作スレ
お題“ゾンビ”“童話”
「ここだここー」
「あー、これが最近話題のゾンビニかー」
『ちゃい』
「ここはそのゾンビニの本部らしいぜ」
「本部って言われてもよーわからんがなー」
『ちゃい』
「俺も初めてだからなー」
『ちゃいちゃい』
「つか、さっきから店員“ちゃい”しか言ってね―けどなんなの?」
「なんか店員“ちゃい”しか喋らないらしいぜー」
「は? それって接客業としてどうよ?」
『ちゃい』
「バカ殿みたいな髷してんのもいるしなー」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【桃から生まれた】
むかーしむかし。あるところにお爺さんとお婆さんがいました。
お爺さんは山へ柴刈りへ、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
お婆さんが川で洗濯をしていると、ドンブラコ、ドンブラコ、と大きな桃が流れてきます。
お婆さんは桃を拾い上げ、家へと頑張って持ち帰りました。
「お婆さんや、その大きな桃はどうしたのかのう?」
「川に流れてきたんですよ。美味しそうな桃なので食べてみましょ」
お婆さんが包丁を持って桃を切ろうとします。
「お婆さんや、この桃、少し硬くないかのう?」
「そうですね-。熟すまで小屋に置いておきましょう」
お婆さんは桃を切るのを止めて、家の隣の小屋に桃を運びました。
「熟すのが楽しみだね―お婆さんや」
「そうですねーお爺さん」
次の日もお爺さんは柴刈りへ。お婆さんは川へ洗濯にいきました。
しかしお爺さんは山で落石にあい、お婆さんは川に落ちてしまい、その日、お爺さんとお婆さんはお亡くなりになりました。
それから1ヶ月程経ちました。
小屋にある桃は色も茶色くくすみカビが生え、完全に腐り原型を留めていませんでした。
その腐った桃に変化が訪れます。
中から突き破る様に爛れた肌を持つ男の子が這いずる様に出てきました。
目は白く濁り、所々白い骨が見える身体からは悪臭が漂います。
男の子はゾンビでした。
『ちゃーい』
ゾンビはそう言いながら小屋を後にしました。
「わん。お腰に付けた吉備団子。一つ私に……え? 来るな! 来るなぁーーーーっ!」
『ちゃい』
イヌに出会ったゾンビはイヌに齧り付き、イヌもゾンビになりました。
「うきー。お腰? うきききききき!」
『ちゃい』
次はサルもゾンビに。
「けーん。けーーーーーーーーーーーーーん!」
『ちゃい』
キジもゾンビに変えたゾンビ一行は近隣の村々へと放たれます。
次第に増えていくゾンビは、鬼ヶ島をも飲み込み、世界は滅びました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「イヌとサルとキジ連れてるとかマジ意味わかんね。桃太郎ファン?」
「本人だったりしてなー。向こうに亀に乗ってるのもいるしー」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【竜宮城のお土産】
むかーしむかし。あるところに浦島太郎という男がおりました。
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竜宮城を出た浦島太郎は、助けた亀に送ってもらい、浜辺に到着しました。
亀と別れ、乙姫様からいただいた玉手箱を楽しみにしながら開けます。
すると中からモクモクと煙が出てきました。
それを浴びた浦島太郎は――。
一方その頃、竜宮城ではカレイのお面をした女官が大慌てで乙姫様の元へと来ました。
「大変です! 乙姫様!」
「どうしたの? そんなに慌てて」
「浦島太郎に渡した玉手箱。別の物でした」
「え? 玉手箱とは別な物?」
「はい! どうやらヒラメが間違えたみたいでして、魂出箱だったようなんですっ」
「っ! 魂出箱ですって! 大変!! 早く回収しないと!!」
「すでに帰ってきた亀に回収を命じております。ただ……間に合えば良いのですが……」
「龍神様に祈りましょう」
乙姫様とカレイは手を合わせ龍神へと祈りを捧げました。
カレイから命じられ大急ぎで浜辺へと来た亀は、息も切れ切れに浦島太郎を捜します。
しかし何か嫌な予感に襲われ、背後を振り返った亀の前には、紫色の顔をした浦島太郎の姿が。
『ちゃい』
カプっと噛まれた亀でしたが、何とか海の中へ逃げ延びます。
間に合わなかったと報告をしに竜宮城へと戻った亀でしたが、次第に具合が悪くなり――。
「ヒラメ? 亀が帰ってきたの? どうしたのよ。そんなにフラフラに……」
『ちゃい』
「カレイー? ヒラメー? タイー? みんなどうしたのかしら?」
女官の姿を見なくなり不審に思った乙姫様が通路を歩いていました。すると、通路の先に女官の後ろ姿を見つけました。
「良かった。誰もいないのかと……」
乙姫様が近づき声をかけながら肩に手をかけます。
振り向いた女官のお面はアジでした。
「カレイやヒラメ見なかったかし――」
『ちゃい』
竜宮城で絶えず流れていた音楽がその日から流れることは無くなり、そして地上ではゾンビとなった浦島太郎から着々とゾンビが増え続け、世界は滅びました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「浦島太郎ファンとかないわー」
「ありでしょ? ビバハーレム」
「それはありかも。他にはー、灰ばらまいてるジーさんいるしってかツーホーされねーの?」
「いや、あれも店員じゃね?」
『ちゃい』
「あーアレのファンかー」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【枯れ木に花を】
むかーしむかし。あるところに真面目なお爺さんとお婆さんがいました。
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「枯れ木に花を咲かせましょう」
お爺さんが桜の枯れ木に臼の灰を振りまくと、なんということでしょう、あれだけ枯れていた木には見事な桜の花が咲いたではありませんか。
それを偶々通りかかった殿様が感動し、お爺さんにどっさりと褒美を与えました。
この時に更に奇跡が起きました。
そう桜の木の下には犬のお墓があったのです。
枯れ木に降りかかった灰は桜の花を咲かせ、お墓に降りかかった灰は犬を生き返らせました。
喜ぶお爺さんとお婆さんは犬と一緒に幸せに暮らしました。
それを聞きつけた隣のお爺さんとお婆さんは、残った灰を盗んでしまいます。
その灰を持ってお殿様の元へと行きました。
「自分たちは桜を咲かせるだけじゃありません。死んだ者を生き返らせる事ができます」
そう言って隣のお爺さんはお墓に向かって灰をまきました。
すると、土をかき分け腕が出てきます。
次第に出てきたその姿は男でした。
しかし、その姿に生気はなく、目は白く濁り、肌は爛れています。
魂の無いゾンビとして生き返ったのです。
『ちゃい』
ゾンビはそう言いながら家来へと近づき、噛みつきにいきました。
家来はすぐに刀を抜き放ち斬りかかります。
ザシュッと首を斬り飛ばされるゾンビ。
その首が放物線を描きながら飛んで行きます。
飛んだ先には殿様がいました。
頭だけになったゾンビでしたが、最後のあがきとばかりに殿様の首筋に噛みつきました。
すぐに振りほどかれ、家来の刀によって頭を両断されます。
幸い、お殿様は軽傷で済みましたが、隣のお爺さんは、お殿様を傷つけた怪物を生み出したとして、打ち首になりました。
その夜のことです。
お殿様の寝所から聞いたことのない声が聞こえてきます。
『ちゃい』
その声はお城の中に増えていき、一晩で幾つもの声が生まれる様になりました。
次の日の朝にはお城から飛び出し、城下町を席巻し、世界は滅びました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「日本昔話ファン多くねー?」
「いや、よく見てみろよ。振りまかれた灰をわざわざかぶりに行ってる女いるじゃん。アレも店員っしょ」
「あー、綺麗なドレスだろうに、灰だらけだなー」
「あの透明なハイヒールからすると、アレだよな」
「灰かぶってるしなー」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【ガラスの靴】
むかーしむかし。あるところにエラという少女がいました。
エラは暖炉のそばで休息を取るしかなく、その暖炉から出た灰を浴びてることで、意地悪な継母から灰まみれのエラと言う意味でシンデレラと呼ばれていました。
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魔法によって夢の様な舞踏会を過ぎ元の生活に戻ったシンデレラ。
しかし舞踏会で王子と踊っていたのを見ていた義姉達によって、シンデレラは更に過酷な毎日を過ごしていました。
そして王子がガラスの靴の所有者を捜しているという情報を義姉達は知りました。
いつかシンデレラの元に王子様が来てしまうと危惧した義姉達は、事故を装ってシンデレラの足指を切り落とします。
これでシンデレラは靴のサイズに合わなくなったと安心した義姉達。
この時にシンデレラは破傷風にかかり、満足な治療も受けられないまま、死んでしまいました。
それを知った魔法使いは、シンデレラを生き返らせる魔法を使います。
その魔法は確かにシンデレラを生き返らせましたが、その身体に魂は宿ってませんでした。
魔法は失敗したのです。
魔法の失敗の反動で魔法使いも死んでしまいました。
「いつまで寝てるのかしら? 早く食事の用意をしなさいよ」
『ちゃい』
「全く、お姉様も何しているのかしら。あら? お姉様?」
『ちゃい』
「ほらっ、二人共! もうすぐ王子様が……」
『ちゃい』
「失礼、こちらに若い娘さんが……」
『ちゃい』
「セバスチャン、遅いぞ。いつまで待たせる気だ。ん? どう――」
『ちゃい』
「王様ー! 大変です―! 王子様がー!」
『ちゃい』
『ちゃい』
『ちゃい』
こうしてゾンビは広まっていき、世界は滅びました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「シンデレラのシンダーは死んだーエラみたいなー」
「いや、普通におもろくないからそれ」
「まー別にいーやー」
「んで、シンデレラの他には……アレか」
「あー、あの小っさいおっさん周りにはべらしてるのなー」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【世界で一番美しい女性は】
むかーしむかし。あるところに白雪姫という名の王女がいました。
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毒林檎を食べた白雪姫は息絶えてしまいました。
七人の小人達が意気揚々と戻ってくると、倒れ死んでしまった白雪姫を発見します。
嘆き悲しむ小人達でしたが、ガラスの棺へと白雪姫を移しました。
そこへ通りかかったのが隣国の王子様でした。
王子様は死体愛好家。美しい白雪姫を引き取ります。
王子様の家来達が白雪姫を運ぶ最中に、木に躓き棺を落としてしまいました。
その衝撃で毒林檎を吐き出した白雪姫は息を吹き返しました。
しかし王子様は死体愛好家。死体でないと愛せません。
王子様を愛してしまった白雪姫は、ナイフを胸に突き刺し死んでしまいました。
一方、七人の小人達は一つの魔法に行き着きました。
自分たちの命を捧げることで生き返らせる魔法です。
毒で死んだ白雪姫なら、身体は綺麗なままなので生き返るはずでした。
七人の小人達はナイフで死んだのを知らなかったのです。
そして魔法は行使され、白雪姫は生き返りました。ナイフを胸に刺したまま。
生き返った瞬間再び死に、しかし肉体だけは生き続けました。
そう、生きる屍ゾンビになったのです。
王子様は喜びました。
死んだまま生きているその姿は理想だったのです。
「おお、白雪姫よ。永遠の生きた死者よ。愛している」
『ちゃい』
「鏡よ鏡。世界で一番美しい女性は誰?」
白雪姫が死んだことを確信している王妃がそう言うと、映し出されたのは白雪姫。
「どうして? 死んだはず……」
狼狽する王妃でしたが、鏡に映されたその姿に戦慄します。
確かに白雪姫は美しい姿のままでしたが、その顔に生気はなくドレスもボロボロ。
「一体……何が……?」
何なのかと目をこらして鏡に映る白雪姫を眺めると、白雪姫の背後に見覚えのある姿が。
「これは……わらわ?」
自分の後ろ姿でした。
つまり白雪姫のいる場所はどこなのかと気付き、振り向く王妃。
「白雪姫!! なぜこ――」
『ちゃい』
こうして増え続けていくゾンビは国を飲み込み、世界は滅びました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「つか小っさいおっさんいねーと白雪姫かわからんとかどんだけ」
「確かにー……? 一人、二人、三人、四人、五人、六人、七人……八人? あれ? 一人多くね?」
「なんか一人だけ毛色違うのいるじゃん。あれじゃね?」
「あー、なんかネームプレートに“ザー”って書いてあるあれなー」
「そういえばおっさん以外の店員全員“ジー”って書いてあるネームプレートしてたけど、あれなんか意味あんのかな?」
「あんじゃねーの? よーわからんがなー」
『ちゃい』
「うおっ! なにすんじゃこのおっさん!」
「ばっかでー、腕噛まれてやんのー」
「マジ最悪だわ」
「あっ、お、お前! 胸のところっ! いつの間に?」
「は? 胸? なんだこれ?」
「“ジー”ってネームプレート付いてんじゃん。いつの間に店員になったんだよー」
「 あれ? 頭がぼーっと――」
「は?」
『ちゃい』
「はいはい。似てる似てる店員の真似なー」
『ちゃい』
「いてーな! 噛む真似までしなくていーっつーの!」
『ちゃい』
「もーそれはいーから……? おまっいつの間に俺にまでネームプレート付けやがって」
『ちゃい』
「おもしろくねーから、もーい――」
『ちゃい』
『ちゃい』
『ちゃい』
『ちゃい』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
こうして【腐乱チャイザー】という本部から【腐乱チャイジー】という加盟店が増え、【腐乱チャイズ】された【ゾンビニエンスストア】が増えていくのです。
そう、あなたの街にもきっともうすぐ。
後半のグダグダさが半端なく申し訳ないです。
そしてまたストーリーなくて申し訳ないです。
フランチャイズの本部がフランチャイザーで、加盟店がフランチャイジーというのはホントの話です。
初めて知った時は、コンビニ戦隊フランチャイザーしか頭の中に浮かばなかったな―っと思い出します。
ちなみにキジの鳴き声は、某リンを意識しましたが、イメージ出来た人は強者です。