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猛烈ダッシュしゃがみジャンプ!

ちっくしょぉぉぉぉ!


なんでまた起きれなかったんだよぉぉぉ!



マミィィイィイ!


はぁ・・・はぁ・・・


どうしてこうなった・・・



くそっ!




僕、荒井 亮 は今通学路を全力疾走している



おかしい、朝はまだ30分以上余裕があったのに・・・



ラストの坂だ!


よし、校門が見えた!



生徒指導教員Aが校門前に立ってやがる!



よし!


いける!


あと少しだ!


もうちょっ・・・



キーンコーンカーンコーン


「どちくしょぉぉぉぉぉ!」


澄み渡った空には一人の男子生徒の悲鳴と一人の生徒指導教員の怒号が響いた





「はぁ・・・」


ガラッと教室の中に入ると早速一人の男子生徒が話し掛けてきた



「よぅ!亮!おれの胸に飛び込んでおいで!!」


とりあえず僕の鋭い踏み込みがオプションで追加された右ストレートを叩き込んだ



胸のど真ん中にクリーンヒットしグフゥ、と倒れ込む



髪がさらさらで端正な顔つき

いわゆるイケメン系な奴だ

名前は 土家 雄大



「い・・・いきなり何しやがる・・・」



行きも絶え絶えに雄大がのっそり起き上がる



「朝から気持ち悪い事すんな変態イケメン野郎」



もう一発お見舞いしてやる

今度は「ひでぶっ!?」と言って起き上がっては来なかった



ようやく席に座り、とりあえず机に突っ伏す



暇だ


雄大は本当に後ろで悶えて起き上がってこれないようだ



唐突に夢の事を思い出した


暗い草原


朽ち果てた木


僕に何かを伝えようとした少女



昔・・・ある事がきっかけで時々この夢を見るようになった



最近はあまり見ていなかったのだが・・・




適当に考えているといきなり後頭部に強い衝撃が来た


「おっはよー!何してんの?またなんか考え事?

てか向こうで雄大が動かないんだけどなんかしたの?」


「ちょ・・・まーちゃん・・・いきなりそんなことしたら迷惑だよー」



まーちゃんと呼ばれた方の朝からマシンガントークをぶちかます彼女は阪本 真由美


同級生でクラスメートで幼なじみでもある



もう片方の大人しい印象を受ける彼女は 佐山 凛花

去年同じクラスになってからよく話すようになった

「いつもながらまた変態したからショック療法したまでだ」


軽く流す




・・・・・・・


ここは私立静凛大学附属高等学校


静高 と略される時もある


小高い丘の上にあり通学路はスクールバスも出ているが毎朝徒歩で上る生徒からは「地獄坂」なんて呼ばれる程凶悪な急勾配を誇る



お堅いお嬢様やお坊ちゃま、な性格なやつは少なく逆になぜかお祭騒ぎ大好きな騒がしい奴ばっか集まる


まあ校則はちょっと厳しいところもあるが・・・


・・・・・・・・・・


「おや?亮、おはようございます」


俺より後に教室にまたイケメンが入ってきた



雄大が爽やか系ならこいつは少し裏がありそうな感じの小悪魔的なイケメン野郎だろう



名前は 神内 翔

生徒会副会長だ


しかしその見た目とキャラに惑わされてはいけない



こいつも変態だからだ


マニアックな方の・・・

しかも俺以外の奴の前ではなかなか尻尾を出さず

出しても笑顔でごまかし通すからタチが悪い

「おや、真由美さん、凛花さんもおはようございます」



「あ、おはよ〜」

「おはようございます、翔君」



「で、亮?

そこの雄大はなんであんなところで寝てるんですか?」


「寝たいんじゃない?」



「そうですか・・・

ですが生徒会としては放置できないので起こしてきましょうか」



未だに床に眠っている雄大の元へ屈み何かをボソッと耳打ちをする



すると・・・


ガバッ!



「うぉぉぉぉ!

力士!?力士!?なにが!?えぇぇええ!?」


いきなり意味不明な事を言いながら廊下を駆けていった



「・・・何をしたんだ?」



「禁則事項です、と某天然巨乳キャラっぽく言っておきます」


「え?て・・・天然?

巨乳?」


凛花が聞き返す


「失敬、なんでもありません」


素晴らしいスマイルだ


「あ・・・そうなんだ・・・」



乗り切りやがった



ていうかこいつ、俺の後ってことはこいつも遅刻か?


「そういや、翔。

俺より遅い、て遅刻か?

なにして捕まったんだ?」


「人を犯罪者みたいに呼ばないで下さい

僕は遅刻じゃないですよ

ただ・・・生徒会の会議という名目で会長を探し回っていただけなので」



「また会長か・・・」



ここの生徒会会長 姫川由里さんは見た目はかなりの美人で見るからに生徒会長なのだが逃亡癖があり、仕事が詰まるとすぐにいなくなるのだ


しかもすごく手の込んだやり方で・・・


ちなみに会長は我が校のアイドルでもある

1時はファンクラブが乱立していたがそれはまた別のお話

後々語っていこう



今はそれよりも・・・


「今回は一体何をして逃げたんだ?」



「今日の早朝、


予定では会議があったので僕はいつもより早めにきたのですが、


少々早過ぎたのでたまった書類を片付けていたんです

しばらくすると会長が来たので他の委員を待つ間、


会長を見張りながら会長と書類を片付けていたのですが・・・


いきなり『よし、逃げよう』と言い出した瞬間、


いつの間にか部屋のあちこちに置いてあったペットボトルが爆発して中の液体が霧のように生徒会室に撒き散らされたのです


そして僕はその液体を吸い込んでしまったようでいきなり凄まじい眠気が襲い、眠ってしまったのです

そして、目が覚めたら会長がいなくなっていました」


「そんなことして会長は寝なかったのか?」



「眠ってしまう寸前に会長を見たのですが鼻と口あたりにピンクのハンカチをあてていましたから・・・」



「徹底してるな・・・

で、会長はどこにいたんだ?」



「今回はかなり苦労しましたが校長室にいました

校長と『近年における学生の質の低下と学力の関係』について熱弁されてました」


そう言いながら頭を押さえる



こいつも大変そうだな



すると教室の扉をズッブァアアンとド派手に開けて丁寧にぴしゃりと閉めながら担任が入ってきた


「おらぁ!、てめぇら!


とっとこ席につきやがれ!

10秒以内に席につかねぇと

物理的にバルスすんぞコラ!

それか小倉百人一首全部覚えるまで補習がいいか!?」



全員凄まじい団結力で

すちゃ、と席に着く



「ふん、9秒05か」



危なかった



「まあいいだろ

悦べ男子諸君!

転校生が来たぞぉぉぉ!」

ざわっと教室がざわめく


-おい・・・聞いたか?-


-ああ、あの口ぶりじゃ女子、それも当たりだ-


-まじかよ・・・-


-担に・・・いや、皇帝殿

!バンザーイ!-


-ていうか漢字違くね?-


-皇帝殿!バンザーイ!-



一瞬で意味不明なテンションに包まれる教室


-まて!まだ・・・まだ皇帝殿は女子だと明言されてないだろ!

それにまだお話が残ってるようだ・・・

皆・・・聞こう・・・-


その一言で意味不明なテンションのまま、しん、と静まり返る教室



不意に担任が教卓を両手でバァアアン!と叩く


「男子諸君

よく聞きたまえ

転校生は・・・










女子だ」



その瞬間教室が大歓声に包まれた


男子達の魂の咆哮ともいうべき聞くものの魂を揺さぶる喜び、感激の雄叫びであった



どこからだしたか

何人かはクラッカーを用意し、いつでも発射可能な体勢をとり


ある者はSPの如く扉から教卓までの道のりを確認し



またある者は教卓までの道のりに赤絨毯を敷いていた


そしてまたある者は全員で拍手する拍手パターン、音量、タイミングを合わせ、「ようこそ静凛高校へ!」の台詞のタイミングと声量を合わせていた




「なんか爆発しそうだが・・・

まあいい、入ってこい」


その声を聞くや


「おい!絨毯スタンバイできてるかっ!?」


「「「完璧です!」」」


「おぅ!拍手部隊!歓迎音声部隊!タイミングわかってんだろうな!コンマ1秒でもズレてみろ!

お前ら全員叩き折ってやる!」


「サー!イエス!サー!」


「SP班!他大多数の男子の突撃から転校生を守れ!

スタンバイ!」



「「「了解!!」」」



「クラッカー部隊!

用意できてるか!

火薬の確認はしたか!

万が一不発なんざあってみろ!

許さねぇぞ!」



「「「「ラジャー!」」」


ここはどこかの軍隊か?



ガラッと控え目に扉が開く


赤絨毯が一瞬にして転校生の目の前を彩り


間髪いれず恐ろしく統率のとれた拍手部隊の大音量拍手が鳴り響き「ようこそ静凛高校へ!」と野太い大音量ボイス



SP班が駆け寄りダイヤモンドフォーメーションを組む


そしてクラッカー部隊の「撃てぇぇええ!」の命令でクラッカーの大量爆発



恐る恐る教室に足を踏み入れる転校生


大音量の拍手とSPに迎えられ転校生が教室へ入ってくる



だんだんと男子の歓声が大きくなってくる



教卓に辿り着いた瞬間クラッカー第二波が教卓の両側から計算されつくした角度とタイミングで放たれる



転校生の見た目は髪の長い、端正な顔の、大人しい印象を受ける子だった



だが僕は一人、その女の子を見て固まっていた




その女の子は・・・・





















毎回あの僕の夢に出てきた子だったのだから

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