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婚約破棄されたので、猫になりました。  作者: 本見りん


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5/15

やる時はやる猫

シャーロット猫はやる気です。


「ミャアォ……(やってやろうじゃあないの……」



 シャーロットは敢えて大きく鳴いて盛り上がる彼らを振り向かせた。



「……ひ! 何?」

「! 何だ? なぜ部屋に猫が!」



 男は部屋を見回し、シャーロット猫を見付けるとその後窓が空いているのに気付き舌打ちする。そして怒りの表情でこちらに向かって来た。



「……窓から入って来たのか! とっ捕まえて放り出してやる!」



 シャーロットは男が捕まえようとする手前でするりと逃げる。



「……コイツ! すばしっこい奴だ! ……うわっ!」



 暫く追いかけっこをしていたが、捕まりそうになり慌てて逃げる時に男の手を引っ掻いてしまった。男の顔が醜く歪む。



「このクソ猫が……!!」


「ダメよ、もしもその猫が高貴な方の飼い猫だったらどうするの……!!」



「ニャアーオ!(そうよ!)」



 この国では猫好きが多い。貴族で飼う人も多く、現王妃も飼っている。だから、特に王宮で猫が彷徨く事は不審がられない。先程シャーロットが猫になり衛兵の前に出ても特に関心を持たれなかったのはそのためだ。


 そして王宮では下手に猫に怪我などさせると、後で高貴な方の飼い猫だったと分かって揉める事もあるのだ。だから王宮にいる猫には手を出さないのが不文律としてある。



「……く! しかし私は怪我をさせられたのだぞ!」


「貴方が猫を追いかけ回すからでしょう!」


「ニャア!(そうそう!)」



 部屋の中が混沌とし出した時、扉がノックされた。



「騒がしいようですが、何かありましたか!?」



 部屋の騒ぎを聞き付けた侍従か衛兵がやって来たようだ。

 友人の婚約者と未亡人は顔を青くさせた。



「な、何でもない! 放っておいてくれ!」



 男は扉の向こうへそう叫び、未亡人はサッと鏡台の影に隠れようとする。


 シャーロットは焦った。

 ……このまま衛兵が行ってしまったら、彼らは逃げおおせてしまう!



「ニャアオウ!!(逃がさないわよー!)」


「!? ッ失礼いたします!」



 シャーロット猫の大きな鳴き声に、何事かを感じた衛兵は扉を開けた。



 そこには衣服のはだけた男女。

 ……そして一匹の毛並みの良い白猫。



「ニャアニャアニャアォー!(この人たち、いかがわしい事をしようとしてた上に、猫をいじめようとしたのー!)」



 シャーロット猫は必死で衛兵に訴えた。衛兵は猫語は分からないだろうが、この状況がどういう事かは理解したようだ。しかし貴族相手にどう対応するべきかと悩んでいる。

 その時近くを通りかかった貴族が中を覗き込んだ。



「何事かね……ん? 君はアダムス君じゃないか! その横にいる女性は誰だ? 君の婚約者ではないね?」



 その貴族は正確にアマリアの婚約者の名前を言い当てた。


 ……あれは、アマリアの叔父様だわ。きっとアマリアの家に頼まれて愚かな婚約者を見張っていたのね!



「な……違うのです! 私はただ先ほどの騒ぎで怯える女性を親切心で控え室に案内しただけで……」


「そ、そうですわ。私、とても恐ろしくて……」


「───ほう。そしてその控え室で2人きりで服を脱がし合い慰め合っていたと?」



 アマリアの叔父は目を眇めて彼らを見た。

 確かに彼らの服は胸元がかなり緩まっていて、髪も乱れている。アダムスの方は先程シャーロット猫との追いかけっこで余計にそうなったのかもしれないけれど。


 まあ2人ともそう言われても仕方ない格好だった(実際そうだったし)ので、衛兵達も呆れたように目を見合わせていた。



「……いや、違うのです! 彼女を案内した所で部屋に居たこの猫が暴れてこのような格好になっただけで!」



「言うに事欠いて猫のせいにするとは。可哀想に猫も目の前で不埒な行いが始まったので驚いたのではないですかな。

───とにかく、この件は兄であるベッツ侯爵家に報告させてもらう。ここに居る方々が証人ですからな」



 いつの間にか騒ぎを聞き付けた貴族達が部屋の周りに集まっていた。そして2人の男女を白い目で見ている。



「───あ、ああ……! 違う、コレは何かの間違いで……! 

そうだ、この未亡人が私をここに……私はこの女に連れ込まれただけなのだ!」


「何ですって!? アンタが私に誘いをかけて来たんでしょう? 

……私は気分が悪かっただけなのに、この男に襲われたんです!」


「お前のような年増を私が襲う訳がないだろう!」


「はあっ!? 何ですって、このクソガキが!」



 アダムスと未亡人が唾を飛ばさんばかりの言い合いを始めた。



「おやめください! 見苦しいですぞ!」


 アマリアの叔父は彼らに呆れて報告の為に去り、衛兵達は尚も言い争う彼らを止めに入る。



「二、ニャア……(こ、こわっ……)」


 ……これが、いわゆる痴情のもつれってやつなのかしら? 


 思わず声を出してビビるシャーロット猫の、その声を聞いたアダムスと未亡人はバッとこちらを見た。



「……そうだ、そもそもこのクソ猫が騒ぐから……!!」

「どうしてくれるのよ! これじゃあ親戚たちに私は家を追い出されてしまうわ! お前のせいで!」


 2人はシャーロット猫に責任転嫁をして襲いかかって来た。

 2人は目の色を変えて一斉に襲い掛かりシャーロットは驚き逃げたが部屋の隅に追い詰められた。



「コイツッ! こうしてやるッ!!」


 アダムスはシャーロットを捕まえ、放り投げようとした。



「ニャアッ!!(助けて!!)」





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