猫も歩けば陰謀に当たる
誤字報告ありがとうございます!
「ニャアニャニャアー(今日はお父様の所や王妃殿下の所に近付ける所まで行ってみようと思ってるのよねー)」
ダニエルと共に執務室を出たシャーロット猫はご機嫌に歩き出す。
普段から王宮内に猫は居るのでおかしな事さえしなければ衛兵や貴族も関わってくる事はない。
そしてまず向かったのは父オルコット公爵の執務室。
……が、部屋は固く閉ざされている。
「ニャーニャアニャアオ……(誰かと一緒じゃないと流石に中には入れないわね……)」
筆頭公爵の部屋が開けっぱなしのはずはなかった。一応扉をガリガリと鳴らしてみるが、傷が付いてもいけないし反応もないから潔く諦める。
「ウニャーオ(それなら猫を飼っている王妃殿下か妃殿下の部屋へ)」
気を取り直して張り切って王妃殿下の部屋へ向かう。王妃はあれからずっと部屋に篭り切りだと聞く。
そういえば猫になってから他の猫を見た事がなかった。一度王妃の猫モリー視線での夢を視た事はあったけれど。猫同士なら話は出来るかしら? と楽しみにして向かったのだが。
「こら。どこの猫だ! しっしっ!」
……王族のスペースに見覚えのない猫が入れるはずもなかった。
「ニャオー(どこも入れないー)」
シャーロット猫は途方に暮れた。……が、挫けない。
「ニャオーン(じゃあ入れそうな所を探しながら探検してみよう)」
そしてあちこち歩いたが、隙間の空いた部屋なんてそうは無い。
諦めかけた所で、前に見覚えのある人物が歩いているのに気が付いた。
「ニャオー……(あれは、従兄弟のマイクとネイサンとデニスの三兄弟……)」
父の弟の息子三兄弟とは幼い頃からの付き合いだ。とりあえずは彼らの後を付いて行ってみようと追跡を開始した。
彼らはある部屋に入っていった。そして偶然にもその扉は閉まり切っておらずシャーロット猫が少し扉を引っ掻くとするりと入る事が出来た。
……やったわ。これで猫らしい探検が出来るってものよ。
その部屋は扉の近くに棚があり、シャーロット猫が入ったことに誰も気付かなかったようだ。
中の様子を窺うと本棚に囲まれた書斎のような部屋でその奥にはソファセットがあり、そこに彼らの父でシャーロットの父の弟である叔父と共に座って会話をしていた。
とりあえず、見つからないように棚の横に体を潜める。
……なんだか猫らしくなって来たわとシャーロットはご機嫌だった。
「───まだシャーロットは手がかりすら見つからないらしい」
「あれから5日だ。もし誘拐されていたのだとしたらもう連絡などがあるはず」
「もしやシャーロット自らがどこかに隠れているという事なのか?」
「それならばエドワルド殿下との婚約が破棄されその罪も決まったのに未だ姿を現さないのはおかしいだろう」
4人は心穏やかでは無い様子でそのような事を話し合っていた。
……みんな、私の事をこんなに心配してくれてるのね。
シャーロットは叔父や従兄弟たちがこんなに気遣ってくれているのに自分が無事だという事を伝えらず、申し訳ないような彼らの思いが有難いような……そんな気持ちになる。
───その時、マイクがポソリと呟いた。
「───そもそも私はシャーロットはレイモンド殿下と結婚するものだと思っていた」
それを聞いた他の3人は途端に呆れたような顔をした。
「……またその話か。マイク兄上、いつまでもしつこいですよ。……まああの時点で公爵家の後継になれなかった悔しさは分かりますが」
「……そうは言っても! 伯母上が2人目の子を望めないと分かった時、既に王家よりその縁談は来ていたというのに! レイモンド殿下と年は少し離れているとはいえその位の年の差は貴族の夫婦にはザラにあるのだ。2人が結婚さえしていれば私は今頃……!」
従兄弟の長兄マイクと次兄ネイサンの言い合いにシャーロットはただ驚く。
……私と、レイモンド殿下の結婚? そんな話があった事は知っている。けれどずっと父はそれを断っていたし、レイモンド殿下も君は妹みたいな存在だと笑っていた。
だけど2人は……。それによってマイク兄様がオルコット公爵家の後継者となれなかった事をずっと悔しがっていたという事なの?
シャーロット猫は急に手足が冷えていくようだった。
「お二人共、おやめください! 今はそんな事を言い合っている時ではないでしょう!」
「そうだぞ。2人とも何を言っている!」
三男デニスと叔父が2人の兄を諌めた。シャーロット猫は、少しホッとした気持ちでデニスと叔父の方を見た。
……そうよね、デニスは私をずっと姉のように慕ってくれていたもの。叔父様も自分には男子しか居ないから私を本当の娘のようだと言って随分と可愛がってくださったわ。……2人はそんな事を考えてはいないわよね。
「……今がその後継の座を掴む絶好の機会だというのに。天は我らを見捨ててはいなかった……!
それなのに過去の事を持ち出し蒸し返していてどうするのだ!」
「そうですよ。……このままシャーロットが見つからなければ自動的にオルコット公爵家はマイク兄上のもの。そして我がグレゴリー伯爵家はネイサン兄上。そして僕は公爵家で余っている爵位を得て兄上達の補佐をいたしますよ」
…………ッ!!
シャーロット猫は、ヘタリ、としゃがみ込んだ。




