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婚約破棄されたので、猫になりました。  作者: 本見りん


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愚か者の末路 1


 国王一家を始め、国の重鎮達が集まる会議の冒頭。法務大臣が前に進み出て今回起こった事のあらましを話し出した。


 

「───エドワルド殿下は建国記念パーティーが始まる直前、婚約者シャーロット オルコット公爵令嬢に『婚約破棄』を宣言。その際令嬢に無実の罪を着せ、不貞相手である義理の妹ミシェル嬢を公爵家後継として乗っ取りを謀られた」


「───私は! ミシェルに騙されたのだ! 彼女が嘘の証言で私を騙しシャーロットに……」


「黙られよ!!」



 法務大臣が罪を読み上げる途中で耐え切れず叫んだエドワルドの言葉は他の大臣達によって遮られた。



「───エドワルド殿下。貴方には後で発言の機会を与えます。今は静かに聴かれよ」


「……エドワルド。黙って話を聞くのだ……!」



 大臣達に睨まれ兄レイモンド王太子にも冷たく諌められた。青くなったエドワルドは俯き押し黙った。



「……よろしいか。……そしてその際公爵令嬢は驚きの余りベランダから落下されそのまま行方不明に……」



 その後も状況の説明が続き、エドワルドは『違う』『騙されたのだ』と小さく呟き続け周りを呆れさせた。


 そして法務大臣は一旦言葉を区切り、国王を見た。



「───以上でございます。

さて、陛下。此度のこのように大臣級の貴族が集まった訳でございますが、我々といたしましては目の前で起こった出来事でございましたからこの件の全容は理解いたしておるつもりでございます」



 大臣はそう言って真っ直ぐに国王を見た。



「───その上で、陛下のお考えをお聞かせいただきたく存じます。陛下は今回の件、どのように感じられどう始末をつけようとお考えなのかを」



 その真っ直ぐな視線に国王はたじろぐ。そして他の貴族達も、真剣に自分の答えを待っている事に気が付いた。



 ───これは、絶対に答えを間違えてはならない───。



 国王にはそれが分かった。

 ……しかし国王は愚かにもまたエドワルドへの救いがある道を選んでしまう。



「……私は、其方達を信頼しておる。であるからして、今回其方達貴族達の意見を聞こうと思う」    

 


 国王はそう言って鷹揚に笑って見せた。



───しかし、その次の瞬間。その広間の空気は凍り付いたのである。



「───それは、我が国の王でありエドワルド殿下の父である陛下が、我々にその罪を裁けと……そう仰られるのですか?」



 大臣はそう言って訝しげに国王を見た。



「……うむ。私は信頼するお前達や法に、この罪が裁かれる事を望む」



 また、この場の空気が暗く沈んだ。彼らは、王に失望したのだ。

 法務大臣は重々しく口を開く。



「───勿論、法で裁くことに意味はございます。

しかし今回はその罪は明らかで、しかもそれは陛下の御子であるエドワルド王子殿下の為された事。

……我々はこの国の太陽であらせられる陛下が如何に此度の罪を真剣に捉え厳しく罰されるおつもりかと、その心持ちを見させていただくつもりでございました」



 法務大臣の言葉に周りの重鎮達も頷きながら国王を見る。



 国王はそれを自らの断罪の言葉として聞いた。……また、間違えたのだと、そう遅ればせながら気が付いた。


 

 ───そう、今回の件は王自らが厳しく処罰しなければならなかった。

 エドワルド王子の考えは国王の考えと同じと捉えられても仕方がない。……だからこそ。今回王は特に厳しくエドワルドを断じなければならなかったのだ。


 それが我が子エドワルド可愛さに、親の情が勝って出来なかった。貴族達にその処断を任せれば忖度してそれ程厳しい処罰にならないのではないかと、そう考えて丸投げした気持ちがあった。

 ───一国の王として失格だ。


 そして大臣の言葉は、そんな国王の甘い心を見事に見抜かれていたという事だった。



 そこでオルコット公爵が手を挙げ、宰相にどうぞと促される。



「我が国の太陽であらせられる国王陛下。貴方様は先日、我が娘に対してのエドワルド殿下への処罰を決して甘くはしないと、そう約束された。

……それが、本日のこの会議の知らせを聞いた私のこの気持ちがお分かりか? そしてそれは先程の陛下のお言葉で更に失望させられた……。

それはエドワルド殿下の罪を軽くする為でございますか? 栄光ある陛下の座すこの王宮から消えた我が娘をこのまま闇に葬り、殿下を守り我が公爵家を奪おうと……?」



 オルコット公爵の言葉の後の広間の空気は更に変わった。貴族達が怒りに燃えているのだ。


 王子が公爵家の乗っ取りを謀り、それを容認した事になる国王。その構図が出来上がってしまった。



「いや、違う! これはまだ未熟なエドワルドが公爵の義理の娘の言葉に騙され暴走してしまった出来事だ。私は乗っ取りなど……公爵家を害そうなどと考えた事はない!」



 この王家に敵対するような雰囲気を感じ取った国王は必死で弁明した。……しかしその弁明も火に油だった。


 貴族達の発言が続いた。



「『騙された』だけで王家は悪くないと? そもそも小娘に騙され踊らされるような愚かな事、少し確認すれば分かる事ではありませんか!」


「騙されたとしても国中の貴族、隣国の大使が集まるパーティーであのような発言をしたのは殿下ご自身だ! あれは正気の沙汰ではない! 王家の人間としてあるまじき行いだ!」


「今の陛下は殿下の愚かな行動全てを容認されたと同じ事ですぞ!」



 次々と反論され国王は二の句を紡ぐ事が出来なかった。


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