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婚約破棄されたので、猫になりました。  作者: 本見りん


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13/17

悔やむ国王



「……どういう事だ? ミシェル……! お前は公爵の実の娘で後継になるのだろう!? そして私は次期公爵に……」



「ッええ……! お義父様さえ説得出来れば、そうなりますわ……! だってお義姉様は罪を犯したのですから!」


 エドワルドの問いかけに何を言われてもそう突き通すと決めそれ以外は答えるものかとミシェルはスカートをギュッと握り締めた。

 ……エドワルドは父王の言う事とミシェルのどちらが事実なのかと揺れ動いていた。



「───ミシェル。……それは本当なのだな?」


「シャーロット嬢に虐げられていたミシェル嬢が殿下を騙すなどするはずがない……!」


「ミシェル嬢! 私達は貴方を信じる!」



 エドワルドと側近達はそう縋るように言い合った。その愚かな者達を頭の痛い思いで国王は見ていた。



「───陛下。公爵閣下がお見えです」



 その時侍従から声がかかり、エドワルド達はびくりと震える。



「……な、どうして公爵が……」


「私が呼んだのだ」



 国王はため息を吐きたい気持ちをなんとか抑えながらエドワルドを見た。

 ……そもそもは第二王子であるエドワルドの為にそして王家がオルコット公爵家の『力』を手に入れる為に、前公爵夫人亡き後これを好機と間を置かず王命を出してまで組んだ縁談。


 それを何の相談もせずいとも簡単にぶち壊した愚かな息子が腹立たしくて仕方がない。そしていまだその意味を分かっていない愚かさも忌々しい。


 しかも肝心の公爵令嬢は行方不明。もしもこのまま見つからなければミシェルが無関係な以上は公爵家は縁戚から養子を迎える事になってしまうだろう。……これは王家にとってエドワルドの婿養子の話が無くなるだけで済む話ではない。

 今回の件、下手をすれば長年王国を影から支えて来た公爵家の持つ『影の力』が失われてしまうかもしれない。

 もしもそのような事になれば、王国にとって国としてとてつもなく大きな損失となる。




 この国の筆頭であるオルコット公爵家はこの国の建国時から存在する由緒正しい家だ。そして建国時からその『不思議な力』はあった。

 その『力』は不利な戦いも勝利に導きこの王国を創り上げ、また天候をも操りこの王国の豊かな実りを約束してきた。


 代々オルコット公爵家にはそれを叶える『力』があったのだ。


 それ故に筆頭公爵家として巨大かつ不思議な力を持つオルコット公爵家を、代々の王家は大事にしながらもいつか自分達のものにしたいと考えて来た。……しかし公爵家出身の令嬢を王妃としてもその力は王家のものとはならなかった。


 そして何代か前に王家から公爵家に降嫁した王女からもたらされたただ一つの情報は。どうやら公爵夫人がその力の権限を持つらしい、との事。しかしその王女はその力を持てず、一代飛ばしてその息子の妻がそれを得てしまった。結局王家が今わかっているのは『オルコット公爵夫人がその力を扱う事が出来る』という事だけ。


 だからこそ、前公爵夫人が若くして突然亡くなった時、その混乱に乗じてエドワルド王子と公爵家の一人娘シャーロットとの婚約を王命で捩じ込んだ。その後すぐに愛妻家と評判だったオルコット公爵が再婚をしたので、やはりオルコット公爵家の力の秘密は『公爵夫人』なのだと王家は確信したのだ。


 しかし、それから新たな公爵夫人は力を得た様子は無く、王子とシャーロットの婚約は継続された。


 王家は付け焼き刃のような仮初の夫人では『力』は得られないようだと判断した。しかしおそらく正当な血筋であるシャーロット嬢ならばその『力』は発揮される。


 そしてその『力』は、エドワルドと結婚する以上は王家のものとなったも同然。


 ───そうなるはずだった。


 エドワルド王子さえ愚かな行いをしなければ。いや、息子の身勝手さ愚かさは親である自分は分かっていたはずだ。もっと強く戒めておくべきだった。


 2人の婚約がなくなるだけなら、非常に悔しいがまだいい。もしもこの事で『オルコット公爵家の力』が失われでもしたら、この王国が公爵家を立てる事で持ち続けて来た『力』自体を失ってしまう。

 そうなったなら今まで他国よりも際立って豊かで侵略もされない我が王国の盤石だった基盤が崩れてしまうかもしれない───



 ……公爵家の力を是が非にでも王家のものとしたいと、欲をかいてしまったが為にとんでもないことになってしまう。



 国王はなんとも歯痒い思いでギュッと拳を握り締めた。





「トラヴィス オルコット、お呼びと伺い参上いたしました」



 そこに入って来たのはシャーロットの父である筆頭公爵トラヴィス オルコット。

 彼は無表情で入室し、表面上臣下としての正しい礼をとった後その鋭く問いかけるような視線を国王に向けた。

 国王は背筋に冷たいものが流れるような思いをしながらも声をかけた。



「……うむ。よく参った。

 ───此度の件であるが、私の知らぬ所で起こった事とはいえ、其方の家には多大なる苦労をかけた」



 どこをどう言い繕っても王家側に非があることは明白だったが、王として威厳を損なう訳にいかず非常に曖昧な謝罪をした。相手からすれば謝罪にもなっていないし、『自分の知らない所で』と主張するのだからただの言い訳にしかなっていなかった。



「───さて、それは我が娘が婚約者である殿下から国中の貴族や他国の大使も集う公衆の面前で婚約破棄を言い渡された件でしょうか。それともこの国王陛下の座す王宮で行方知れずとなった件でしょうか」



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