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第七章 追放の地で出会った彼


 追放の地は『砂塵の国ザルカス』。


 かつてはライゼン王国の属国だったが、魔物の暴走が相次ぎ、ライゼンからの支援が途絶えたため自立を宣言した。

 砂漠と枯れ果てた峡谷が広がり、空はいつも赤みを帯びている土地だ。

 ザルカスでは魔物は『害獣』ではなく、『共生者』として民の生活に溶け込んでいた。

 砂漠のオオカミは夜の見張りをし、岩山のグリフィンは乾いた井戸から水を運ぶ。

 その為ザルカスでは『魔物と話す者』は、聖職者と同等の扱いだった。

 馬車を降ろされると、私はまず人里を探した。

 砂漠地帯を歩き、魔物や動物の声を頼りに進んでいく。

 魔物達は私の声に応えてくれて、『近くに泉がある』と教えてくれたり、『この方角に行けば村がある』と声を掛けてくれた。

 魔物や動物たちは、異国から来た私のことを温かく迎えてくれたのだ。

 声を頼りに辿り着いたのは、砂丘の向こうにある小さな砂漠の村があった。

 夕暮れのなか村の入り口に立つと、老婆が私に話しかけてくる。


「アンタ、旅の方かえ? 魔物の匂いがするが」


 その目は警戒の色を宿していた。


「私はケルダ・ミキ──いえ、ケルダと申します。魔物は私の友です」


 老婆は私の言葉を聞いて、目を細める。


「砂漠の民は嘘を嫌う。だか、お主が魔物と共にあるのなら、しばらくはここに留まるがよい」

「ありがとうございます」


 老婆は村に唯一ある宿に案内してくれた。

 古びたベッドに敷かれたシーツは、王宮の大理石よりも硬く感じられたが、焚火の熱と、星々の輝きが心を和ませてくれる。

 翌朝。

 目が覚めると、私は村の質屋で身につけていた宝飾品やドレスを売って資金を集めることにした。

 亡き母の形見であるウェディングドレスは売れたくなかったけれど、背に腹は替えられない。

 お金か、もしくは物々交換で衣服や必要最低限な薬、数日分の干し肉と水を手に入れ、宿泊費を払うと村を出た。

 とにかく、ザルカス王国の城下町へ向かってみようと、私は再び砂漠を歩き始める。

 復讐の手伝いをしてくれる人を探さなくては。


 そうして砂漠で三日ほど過ごした頃──私は彼と出会った。


 その人は砂嵐の中、黒いユニコーンに身を預ける形で倒れていた。

 身に纏っている黒い鎧は錆びついていたが、その隙間から除く肌は玉のように艷やかで美しく、健康的な肌色をしていて。

 髪は風に舞う黒銀の糸のように輝き、黒曜石の瞳は深い湖のように深く静かで、でもどこか悲しみを湛えている。

 私は、この瞳をどこかで見た事がある気がした。

 何よりも驚いたのが、人に懐かないとされるユニコーンが、逃げることもせず彼に寄り添いつづけている事だ。


 彼は一体……何者なのだろう。


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