第六章 愛憎
私は白薔薇の絨毯の上を裸足で歩く。
履いていた白い靴はもともと結納でフジャーロ殿下から贈られたものだったが、ミサーラに『お姉様からの最後の贈り物』と称して脱がされてしまった。
靴を脱がすときの、私を見下げるミサーラの目には、勝利の光が満ち満ちていた。
──これでフジャーロ殿下は私のモノ。
そう言っていたような気がした。
そして、フジャーロ殿下は最後に。
自分とミサーラにした仕打ちの報いだといって。
自分の傍で今まで騙していた罰だといって。
婚約者だった私のことを。
『悪女』として。
いらない、と。
そう言って追放した。
マスラ殿下を追放した時のように。
私は泣かなかった。
代わりに唇を噛み、喉を締め、心の奥に復讐の炎を燃やす。
私の唇はルージュではなく、自分流した鮮血によって赤く染まった。
国境の門を出るとき、振り返って城を見る。
悪女にされて国を追い出されるけれど、それでも私はフジャーロ殿下もミサーラのことも愛している──。
なんて、そんなこと言うわけないでしょう?
おとぎ話のお人好しなお姫様でもあるまえし。
私だって人並みに愛を求め、傷つく女よ。
捨てられたことへの悲しみと、裏切られたことへの怒り。
そして、愛した男と腹違いの妹に対する憎しみが心の中で渦巻く。
復讐してやる。
ミサーラと。
フジャーロ殿下に。
絶対に。
私の愛情は、愛憎に代わっていた。
まさか、永遠の愛を誓う日が。
復讐を誓い日に変わるなんて。
皮肉なものね。




