第四章 追放
婚礼の日、私はミサーラを虐げた罪と、『魔導書の複製』の容疑という冤罪によって断罪される事となった。
花びらの絨毯に膝をつかされると、白銀のドレスの裾が石畳の冷たさを透す。
私は顔を上げ、必死で反論した。
「私は妹を陥れようと思った事は一度としてありません」
「あの書は偽物です。ちゃんと調べてください。私の筆跡を模写したものです」
「全てミサーラが──」
弁解の言葉はそこで途絶る。
ミサーラが私の前に跪いて涙を流し始め、人々の視線を集めていたからだ。
「お姉様……どうして!? 私をお嫌いになるだけならまだ良いですわ……! どうして『魔導書の複製』なんて大罪を犯してしまったのですか……!? 私はお姉様が王妃になるのことを心より願っておりましたのに……!」
──その演技は完璧だった。
──まさに迫真の演技だった。
私が言葉を失ってしまう程に──。
フジャーロ殿下はミサーラの肩を優しく抱き寄せると、私のことを虫けらを見るような目で見下ろす。
「ケルダ・ミキ・クリムゾンレッド。お前との婚約は今日この場を持ってして破棄させてもらう」
婚約者だったフジャーロ殿下からの直々の婚約破棄宣言。
胸が潰れてしまいそうなほど痛かった。
「そして! 今ここで! 私、フジャーロ・ド・ライゼンとミサーラ・ギ・クリムゾンレッド公爵令嬢との婚約を宣言する!」
フジャーロ殿下は民衆に向かって、ミサーラとの婚約を堂々と発表する。
ミサーラは嬉しそうに涙を浮かべ、フジャーロ殿下の胸に飛び込んだ。
「嬉しいですわ……殿下」
ミサーラはフジャーロ殿下の腕に隠れながらも、勝ち誇った笑みで私の方を見る。
傍聴席で貴族たちに混じって私の断罪を見ていた継母も、満足げに微笑んでいた。
もともとミサーラを第一王子の婚約者に据え置きたかった継母にとって、それは願ってもないことだったのだろう。
仲睦まじそうに寄り添い合うフジャーロ殿下とミサーラを見て、私は思った。
出来損ないの私なんかよりも、ミサーラの方がフジャーロ殿下に相応しい、と。
「公爵家の名を汚す悪女──ケルダ。お前を国外追放とする。もう二度と王都の門をくぐれると思うな」
私の顔を一瞥もせず、フジャーロ殿下は断罪の印を書類に押した。
私は絶望の眼差しで、元婚約者の右顔を見詰め続ける。
追放されることになったのも全て、私が招いた結果なのだろう。




