プロローグ
白薔薇の花びらが舞踊る、王宮のローズガーデン。
それは、私が齢十歳の頃のことだった。
このとき、二輪の恋が花開く。
一輪目は、ライゼン王国の第一王子であるフジャーロ・ド・ライゼン殿下。
彼は、クリムゾンレッド公爵家の長女である私、ケルダ・ミキ・クリムゾンレッドに一目惚れをした。
ガーデンの地面に跪いたフジャーロ殿下は、私に手を差し伸べてくる。
「おっきくなったら、ぼくと結婚してくれ」
それはまさに、貴族令嬢たちが憧れる『ローズガーデンの誓い』のそものだった。
生まれて初めてのプロポーズに私は嬉しくなり、舞い上がる。
「はい。よろこんで」
文字通り喜んで、フジャーロ殿下の手を取った。
フジャーロ殿下が立ち上がると、ふと悪戯な風が私の髪を揺らす。
濃紺色の髪が翻って、一筋の紅い髪が揺れた。
それを見たフジャーロ殿下が驚いた顔をする。
「その髪はどうした?」
「え? ……あ、えと、こ、これは……け、ケガのようなものですっ……」
「ケガ……!? 大丈夫なのか!?」
「い、……痛みがあるわけではないので、大丈夫です……!」
「そうか……。ケガか……ぼくも幼いころ頭にケガをして、傷はもうないんだけど、ケガをしたところの髪が茶色くなってしまったんだ」
言いながら、フジャーロ殿下は自分の髪をかき上げ長頭部の左側を見せてくれた。
言っていた通り、黒髪の中に茶色くなった髪が混じっている。
「まぁ、ホントですね……髪が茶色くなってます……不思議……」
「だろ?」
フジャーロ殿下は、私に無邪気に微笑みかけてきた。
そんな私たちのことを、ガゼボの柱に隠れながら見詰める少女がいる。
私によく似た腹違いの妹、ミサーラだ。
二輪目は、クリムゾンレッド公爵家の次女、ミサーラ・ギ・クリムゾンレッド。
彼女もまたフジャーロ殿下に一目惚れしていた。
これが全ての始まりである。




