OB戦でホームランを
あるプロ野球球団がOB戦を開催することにした。かつての選手たちが野球をしている姿を、再び見ることができる。
当日になり、球場は満員御礼だ。お客さんたちは試合が始まるのを、今か今かと待っている。
ベンチに続く通路では、OB選手たちが久しぶりの再会を楽しんでいた。敵も味方も、かつて同じ球団に所属していた仲間たち。
しかし、そんなにこやかな顔の中になぜか、険しい顔をしている者たちがいた。
彼ら五人には共通点がある。
現役時代にホームランを量産していた選手たちだ。豪快なホームランはお客さんたちを興奮させた。また、そのあとベンチに戻ってきてからの「パフォーマンス」も人気だった。
なので、今日のお客さんたちはきっと期待しているだろう。
昔のように、ホームランを打つ姿を見たい。そして、パフォーマンスをしている姿を見たい。
その気持ちは痛いほどわかる。
とはいえ、さすがに年齢が年齢だ。現役を引退してからの年月は長い。
はたして、ホームランを打つことはできるのか?
バッティングセンターで自主練習をしてきたものの、はっきり言って自信がない。
そんなわけで、同じ悩みの者たちで集まって、ため息をついていた。
「間もなく試合です」
球団スタッフから、ベンチの方へ来るように言われる。
辺りを見回すと、すでに他の選手たちがいない。
五人はそれぞれの顔を見る。
「とにかく当たって砕けろだ」
円陣になると、その中央で手を重ねた。
最年長の選手が言う。
「一人はみんなのために!」
他の選手たちも続く。
「一人はみんなのために!」
さあ、試合開始だ。プレイボール!
そして、三回の表だ。
ついに一人の選手が快音を響かせる。
その打球は外野スタンドに飛び込んでいった。
ホームランだ。
打った選手がダイヤモンドを一周して、ベンチに戻ってきた。他の選手たちに祝福される。
そのあとカメラに向かって、ホームランを打ったあとの「パフォーマンス」をした。現役時代と同じものだ。この映像はバックスクリーンの画面に流れている。
で、そのパフォーマンスが終わると、さっと横に移動した。
すかさず別の選手が、カメラの前に飛び出してくる。
そして、自分の「パフォーマンス」を披露した。
さらに、三人目、四人目、五人目と続く。
(一人はみんなのために!)
今日の試合で自分はホームランを打てないかもしれないので、この機会に便乗する。
同じチームの誰かがホームランを打ったら、こうしよう。そう試合前に決めていたのだ。
お客さんたちがどんな反応をするのか、それを心配していたが、
「わー♪」
かつてのホームランバッターたちによる、ホームランを打ったあとの「パフォーマンス」メドレーである。
こんな展開は予想していなかった。豪華な共演に、お客さんたちは大興奮だ。「選手のパフォーマンス」と同じ動きをする人も多い。懐かしい光景が、観客席でも次々と復活する。
マウンドの上では、ホームランを打たれた投手が、笑顔で拍手をしていた。
このあと、四回の裏にもホームランが飛び出す。
すると、後攻側のベンチも動いた。かつてのホームランバッターたちによる、ホームランを打ったあとの「パフォーマンス」メドレーだ。
これには、打たれた投手だけでなく、もう片方のベンチからも拍手が起こる。
もちろん球場全体が歓喜の渦だ。
自分でホームランを打つことはできないかもしれないけれど、そのあとの「パフォーマンス」を何とか見せたい。そんな選手たちの思いが、お客さんたちの心を揺さぶっている。
この楽しい時間もやがて、終わりを迎えた。
試合終了だ。
球場に来ていたお客さんたちは、
「今日は良いものを見たぞ♪」
満足した顔で家路につくのだった。
ご愛読ありがとうございました。




