試作品
極秘の会議なので声を抑えて、というのは最初だけだった。
すぐに破られる。企画会議は白熱した。
机の上には今、さまざまな商品が並んでいる。
すべて試作品だ。その数は三〇を上回る。
このプロ野球球団では今年から、グッズ販売を大幅に強化することにしたのだ。球団のファンが喜ぶようなグッズを、いろいろと開発しよう。
で、その企画会議をしているところだ。
――すべての商品が、すべてのファンに受け入れられる必要はない。一部のファンに刺されば十分。
そんな企画部部長の方針によって、机の上の試作品には、かなり攻めた発想のものや、奇抜なデザインのものも混ざっている。
しかし、こんなに多くの試作品をつくっちゃって、大丈夫なのか? 今の段階では、色違いなどまでつくる必要はないような・・・・・・。
そう思う一人が部長に尋ねると、
「それについては考えがある。だから、失敗を気にせずに、新しいグッズのアイデアをじゃんじゃん出してね」
そうして月日は過ぎていき、年末になった。
この一年でたくさんの試作品をつくったが、そのあと販売までこぎ着けることができたのは、ほんの一部だ。
だめだった試作品のほとんどが現在、球団の倉庫に放置されている。
それらの処分方法について、企画部部長には考えがあった。
福袋だ。球団が正月に販売している福袋、その中に入れてしまうのである。
これらの試作品は、言うなれば、「数量限定の非売品」ばかりだ。たった一個つくられただけ、というものばかりなので、希少性はものすごく高い。
とはいえ、本当にファンが喜んでくれるかはわからない。かなり尖った商品もあるのだ。「こんな物いらない」と思われるかも。
なので、保険をかけることにした。
ある新商品を、すべての福袋の底にしのばせる。地元の市役所と打ち合わせをしてつくった、期待の新商品だ。
それを、この福袋に先行投入する。これらの福袋を買った人たちだけが、他のファンよりも先に手にできるのだ。
そして、正月になった。
球団のオフィシャルショップでは、福袋が飛ぶように売れていく。
店の外に出ると、ファンはさっそく中身を確認した。
すると、福袋の底に見つける。『ごみ袋』だ。
それには、球団のロゴマークがプリントされていた。
次回は『考える人』というお話です。




