打倒、除夜の鐘(その九)
除夜の鐘とバッティングセンター。
どちらが先に、「百八」にたどり着くのか。
双方とも、着実に数を積み重ねていく。
そのペースは、過去四年間よりも速い。
十一時五〇分時点での数字だ。
除夜の鐘、十七回。
バッティングセンターのホームラン、二十一本。
お寺の境内では現在、『おしるこ』がふるまわれている。
それを食べているのは、巷でよく当たると評判の占い師だ。
恋愛成就の祈願と、無料の『おしるこ』目当てに、このお寺に来ていたのだが、自分の勘が告げている。
「今年は接戦になる。僅差での決着になりそう」
実際、お寺側に焦りはない。
これは毎年のことだ。序盤はバッティングセンターが先行する。
しかし、最後は決まって、お寺側が勝ってきた。この四年間、除夜の鐘の方が速かった。
なぜなら、バッティングセンターは終盤、ホームランのペースが落ちる。そんな「魔の時間帯」があるのだ。
一方で、お寺側のペースはほとんど一定。バッティングセンターを必ず抜き去ることができる。
だからこそ、お寺の和尚さんは手紙を送った。「今度こそ、バッティングセンターに勝って欲しい」と期待して。
日付が変わる。
年が明けた。一月一日になる。
あけましておめでとう。
それから数分後だ。バッティングセンター側に暗雲がただよう。
高校野球の全国大会、その球場には魔物が潜むと言うが、この時のバッティングセンターも同じ。
ついに、魔物が目覚めようとしていた。「魔の時間帯」に突入する。




