打倒、除夜の鐘(その六)
辺りが完全に暗くなり、お寺の境内にある照明が、すべて点灯した。
まだ大みそかだが、参拝客の姿が多い。このお寺で、『芋煮』と『山菜おこわ』がふるまわれているのを知って、駆けつけた近所の人たちだ。
バッティングセンターでも、『潮汁』と『鶏飯おにぎり』をふるまっているそうだから、そっちにも寄ろうかと考えていた。
で、せっかくお寺に来たので、お参りしていく。
そんな中に、小さな女の子がいた。
まずはお礼だ。
(ありがとうございました)
前にお参りした時の願いが叶ったのだ。先日、自分に「弟」ができた。
だから、今回の願いごとは・・・・・・。
(神さまもたまには、神さま自身の願いごとを叶えてください)
そんな優しい願いごとである。
女の子が家族と一緒に境内から出ていくと、入れ替わりで近所のご隠居さんがやって来た。
「これ、知ってるかい?」
お寺関係者たちに、スマホで動画を見せてくる。
そこに映っているのは、
「やった! やった! やったぞー!」
全身ではしゃぐ、動画配信者の姿だ。
あるバッティングセンターでの練習、「百七本のホームランを打つ」という挑戦が終わったらしい。
そのタイムは、『二十九分』ジャスト!
昨年のお寺のタイム、『二十九分五十八秒』を縮めてきた。
本番では、百七本ではなく百八本だが、これなら期待できそうだ。
動画の向こう側からは、その興奮が伝わってくる。
お寺の和尚さんは急に険しい顔になると、
「この場は任せましたよ」
そう言って、お寺の奥に引っ込んでしまった。
しばらくして、袴姿のバイト女子大生を一人呼ぶと、
「あのバッティングセンターに、これを届けてください」
一通の手紙を渡した。
その内容は・・・・・・。




