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エアコンのリモコン

　この野球（やきゅう）場（じょう）には、ちょっとした「裏技（うらわざ）」がある。

　その「裏技（うらわざ）」に必要（ひつよう）なのは、「エアコンのリモコン」だ。メーカーは「○○○○」。

　それを家（いえ）から持（も）ってくる。

　で、選手（せんしゅ）たちがいるベンチに向（む）けて、「ピッ！」。

　すると、ベンチ内（ない）の温度（おんど）を変更（へんこう）できてしまうのだ。

　この「裏技（うらわざ）」、試合（しあい）中（ちゅう）に使（つか）う。相手（あいて）チームのベンチに向（む）けて、「ピッ！」だ。

　不快（ふかい）な温度（おんど）にしてやる。暑（あつ）い季節（きせつ）はより暑（あつ）く、寒（さむ）い季節（きせつ）はより寒（さむ）く。相手（あいて）チームに「地（ち）の利（り）」を与（あた）えない。

　しかし、この「裏技（うらわざ）」、今（いま）では有名（ゆうめい）になりすぎた。

　相手（あいて）チームのファンも知（し）っているし、もちろん黙（だま）っていない。

　あっちもリモコンを取（と）り出（だ）した。メーカーは「○○○○」だ。こっちと同（おな）じ。

　さあ、戦闘（せんとう）開始（かいし）だ。

　味方（みかた）チームのベンチは「快適（かいてき）」に、相手（あいて）チームのベンチは「不快（ふかい）」にする。

　　「ピッ！」

　野球（やきゅう）場（じょう）に乱（みだ）れ飛（と）ぶ、リモコンの音（おと）。

　ここで負（ま）ければ、自分（じぶん）の応援（おうえん）しているチームが不利（ふり）になる。

　だから、指（ゆび）の力（ちから）を抜（ぬ）くわけにはいかない。

　相手（あいて）チームのベンチ、その温度（おんど）を一番（いちばん）高（たか）くしてやる！

　と見（み）せかけて、温度（おんど）を一番（いちばん）低（ひく）くしてやる！

　そんな駆（か）け引（ひ）きをしながら、試合（しあい）の方（ほう）も楽（たの）しむのだ。

　そして、本日（ほんじつ）の試合（しあい）が終（お）わり、帰宅（きたく）してから気（き）がついた。

「あ、リモコンが壊（こわ）れてる」

　家（いえ）のエアコンがウンともスンとも言（い）わない。

　修理（しゅうり）を頼（たの）もうにも、今（いま）の時間（じかん）だと店（みせ）は閉（し）まっちゃっているし・・・・・・。

　今夜（こんや）は猛暑（もうしょ）になりそうだ。

次は「プロ野球選手の妻（つま）」が出てきます。