表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野球はスリーアウトから  ラムネシーズン  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/48

打倒、除夜の鐘(その四)

 バッティングセンターからバスが出発していく。


 その頃、お寺の境内けいだいでは、おぼうさんの一人がストップウォッチを見ながらさけんでいた。


「タイム計測開始!」


 海外のテレビクルーが椅子いすすわり、数人の小坊主こぼうずさんたちから、かたうでのマッサージを受け始めた。足湯あしゆも用意されている。


 そして、予定の作業さぎょうを終えると、小坊主こぼうずさんたちは次々と、テレビクルーからはなれていった。


 全員がはなれたところで、先ほどのおぼうさんがさけぶ。


「五十八秒!」


 本日三回目の一分切りである。


 小坊主こぼうずさんたちだけでなく、他のお寺関係者、また、海外のテレビクルーからも歓声かんせいが上がった。


 毎年お寺側が勝っているとはいえ、バッティングセンター側は確実に成長している。こちらが去年と同じままでは、勝つことはむずかしいだろう。相手はそんなにあまくはない。


 だから、今年から『マッサージ部隊ぶたい』を用意した。


 お寺側のかねつき要員は「三人」で、ここから人数をやすことはできない。


 だったら、この「三人」が最大級のパフォーマンスを発揮はっきできるよう、除夜じょやかねをつく間、順番に「マッサージ」するのだ。これは「ルール違反いはん」ではないはず。


「もう一回いくぞ」


 別のテレビクルーに協力きょうりょくしてもらう。


 またもや、小坊主こぼうずさんたちがテレビクルーにむらがった。そして、高速マッサージを開始。まるでF1のピット作業さぎょうだ。


「五十六秒!」


 さらにタイムをちぢめてくる。


 お寺側としては、この勝負に「何が何でも勝ちたい」というわけではない。


 ただ、「相手バッティングセンターが本気な以上、こちらも本気を出さなければ失礼しつれい」とは考えている。


 本心を言えば、こちらが全力をくした上で、バッティングセンター側に勝ってしいのだ。みなで勝ち取るよろこびを、ぜひとも体験してしい。


 そのようにお寺関係者の多くが考えていた。かべが高ければ高いほど、それを乗りえた時のよろこびは大きくなる。


 だから、『マッサージ部隊ぶたい』の他にも、『秘密ひみつ兵器へいき』を用意していた。


 この時ちょうど、お寺に一人の男性がやって来る。


「ぎりぎりになって、すみません」


 スポーツ用具メーカーの社員だ。


「『改良かいりょうばん』が完成しました」


 持ってきたのは、特殊とくしゅ繊維せんいぶくろだ。お寺のかねをつくおぼうさんたちが、このぶくろをはめる。


 一つ前のモデルには、まだあまさがあった。「かねを千回ついても大丈夫だいじょうぶ」という耐久たいきゅうせいだったが、大みそかだけで、そんなにかねをつくことはない。「過剰かじょう性能せいのう」である。


 だから、「二百回つければ十分」という耐久たいきゅうせいに変えてもらった。その分、軽量けいりょうはかられている。


 これこそ『秘密ひみつ兵器へいき』だ。王者チャンピオンに死角なし。


 おぼうさんの一人が大声で言う。


「もうすぐ『いも』と『山菜さんさいおこわ』ができますから、食べていってください」


 お寺の境内けいだいに、おいしそうなかおりが流れ始めた。


 この時、人気ひとけのない場所に向かって、そそくさと動く影が一つ。


 ウインドブレーカーを着た男性で、どこかに電話をかけ始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ