打倒、除夜の鐘(その二)
そういうわけで、バッティングセンターは企画した。
――最寄りのお寺が鐘を「百八回」つき終わる前に、「百八本」のホームランを打とう。
さすがに前回で学習した。
一人ずつ打席に入っていては、どうがんばっても勝てない。除夜の鐘の方が早すぎる。
なので、ルールを変更することにした。
ここはバッティングセンターだ。ピッチングマシーンは複数ある。
だから、今回は一度に「四人ずつ」だ。前回のことを考えれば、これでいい勝負ができるだろう。
そして、本番当日だ。十二月三十一日の午後十一時四十五分。
このバッティングセンターに一番近いお寺が、今年も除夜の鐘をつき始めた。
それと同時に、こっちもスタートする。打つぞ、百八本のホームラン!
こうして始まった挑戦は、およそ四〇分後に決着した。
除夜の鐘が先に、百八回を達成したのだ。
しかし、バッティングセンターに集まった者たちに、あきらめの感情はない。
今回の挑戦、慣れていないことでの「時間消費」が結構あったのだ。
たとえば、「誰がどの打席に入るのか」で迷った。これに関しては、「案内するスタッフ」がいれば解決できるだろう。
また、打席から出入りする時に、挑戦者同士がぶつかりそうになった。これは、「出る人優先」を徹底すればいい。
そうやって、こっちのタイムを短縮すれば、
「次は勝てるぞ!」
敗れたそばから、挑戦者たちの士気は高い。
ところが、次の大みそかでは、まさかの事態が起こった。
これまでの年とは違って、お寺側が除夜の鐘をつくペース、それが終盤になっても落ちないのだ。
というのも、この百八本のホームランの挑戦、当然ながらお寺関係者の耳にも入っていた。
なので、対策をしてきた。
これまでは一人でついていたのを、三人に増やしたのだ。交代しながら鐘をつけば、終盤になってもペースは落ちない。
そんな事実を知り、バッティングセンター側の挑戦者たちは絶句した。
とはいえ、このバッティングセンターにある打撃レーンの数は「五つ」。
今回と前回は、その内の「四つ」しか使っていない。
つまり、こちらはあと一つ、打撃レーンを増やすことができる。「四つ」から「五つ」へ。
しかし、それが上限だ。
片や、お寺側はまだ人数を増やすことができる。他のお寺に声をかければ、十人でも二十人でも。
しかも、左右から鐘を「交互づき」や、大人数で鐘を囲んでの「高速つるべ打ち」なども可能だ。
そんなことをされたら、バッティングセンター側に勝ち目はなくなる。




