オールスターで珍事
ある年の七月だ。プロ野球の『オールスターゲーム』、その試合開始時刻が迫っていた。
ところが、片方のリーグの選手たちを乗せたバスが、渋滞に巻き込まれたらしい。試合開始までに球場入りするのは、かなり絶望的だとか。
首脳陣の三人――昨年リーグ一位球団の監督と、二位球団の監督と、三位球団の監督――は別行動だったので、この難を逃れていた。
監督たちはひそひそ声で話し合う。
問題のバスには乗らずに、先に球場に来ていた選手は四人。『投手』と『捕手』と『一塁手』と『遊撃手』だ。
したがって、あと五人足りない。
「相手のリーグから、選手を何人か貸してもらおうか?」
「いや、それはまずいだろ。『オールスター』はリーグ対抗戦なんだし」
試合開始を遅らせて欲しいが、たぶん難しいだろう。今日の試合は、全国に生中継だ。
普段はプロ野球を見ない人たちが、試合を見てくれるかもしれない。なのに、試合がなかなか始まらなければ、「チャンネルを変えよう」となるかも・・・・・・。
「じゃあ、俺が『監督』以外に、『コーチ』も兼任するから、二人は試合に出てくれ」
一位球団の監督が言う。
「そうするしかないよな」
「仕方がない」
他の二人の監督はため息をついた。
これで『二塁手』と『三塁手』を確保できたものの、まだ人数が足りない。あとは『外野手』が三人だ。
監督たちはさらに話し合って、仮の「スターティングメンバー」を決めた。
さて、試合前の練習時間だ。
ベンチから飛び出していく選手、監督、そして、球団のマスコットキャラクター。
こうなった以上、マスコットキャラクターにもがんばってもらうしかない。
頼む、外野を守ってくれ。他の選手たちが駆けつけるまで。
はたして、何点取られることになるやら・・・・・・。
そして、試合開始の五分前だ。スターティングメンバーの紹介が始まる。
その時だ。
五人の選手たちがいきなり、ベンチに駆け込んでくる。
ぽかんとする監督たちに向かって、
「俺たちだけ走ってきました!」
渋滞の中で、彼らは考えたという。
このままだと、試合開始に間に合わない。
だったら、足に自信のある者は、今すぐバスを降りよう。走って球場を目指そう。
五人の選手が到着したので、スターティングメンバーを変更だ。これを相手チームも受け入れる。
そんなハプニングがあったものの、『オールスターゲーム』の開始だ。
新しいスターティングメンバーの紹介に、球場のお客さんたちから盛大な拍手が起こった。
次回は「大みそか」のお話です。いつもよりも長いので、分割しています。




