ここまで一緒に歩んできた
プロ野球の歴史は長い。
この二つの球団同士による「対戦(公式戦)」は、まもなく「二千」に達する。
プロ野球が誕生した頃から、この二つの球団は一緒に歩んできた。長い間ずっと、あとから加わった球団の「良い手本」になるよう、一緒にプロ野球を盛り上げてきた。
二つの球団は考える。せっかくなので、その節目の試合に、合同で何かやりましょうか。たとえば、球場での各種イベントとか。
また、その試合を見に来てくれたお客さんたち全員に、記念グッズを配りましょう。
両球団で会議を重ねた結果、記念グッズについては、「色紙」を配ることに決まった。
それぞれの球団で活躍したOBや現役選手による、「サイン色紙」だ。各球団八人ずつなので、これ一枚で十六人分のサインになる。
特に、母国に戻った外国人選手のサインなど、現在では入手困難なものもある。こういう記念グッズなら、きっとファンは喜んでくれるに違いない。
ところが、サイン色紙を量産する直前で、ある問題に気づいた。
それぞれのチームにいる、『超・熱狂的ファン』の存在だ。彼らは相手チームに対して、非常に強いライバル意識を持っている。
そんな『超・熱狂的ファン』が、このサイン色紙を喜ぶだろうか。「憎き相手球団の選手によるサインなんて!」と思うかも。これを手にしたあとで、どんな行動に出るか・・・・・・。
「たぶん、この色紙を半分に切るでしょうね」
球団スタッフの一人が言った。電動糸ノコギリを使うジェスチャーをしながらだ。
他の球団スタッフも想像する。『超・熱狂的ファン』のごく一部が、そういうことをやりかねない。
両球団による緊急会議の結果、「サイン色紙のデザイン」を変更することにした。
リバーシブルにしたのだ。片方の面がこっちの球団で、もう片方の面があっちの球団。
こうしておけば、ファンが自室の壁に飾る時、好きな方を表側にすればいい。そうすれば、裏側は隠れてしまうので、そっちが目に入ることはない。
リバーシブルにしたことで、それぞれのサインを大きく印刷できる、という利点もあった。
このあと、記念試合の準備が順調に進んでいく。
そして、当日を迎えた。
両球団による「二千回めの対戦」は、逆転に次ぐ逆転という展開になる。試合以外でも、各種イベントの評判は良く、お客さんたちは大いに楽しんだ。
そのニュースが、超満員の野球場の映像とともに、日本中で流れる。こんなイベントをやったのか、と他球団のファンはうらやましく思った。
で、この話はもう少し続く。
やはりと言うべきか、大手ネットオークションに、「二千試合記念のサイン色紙」がいくつも出品された。
日本代表で活躍した往年の名選手たち、彼らのサインがあるので、結構な値段になっている。どうやら、両球団のファンだけでなく、他球団のファンも欲しいようだ。
色紙の値段が止まらない。さらに上昇していく。
そんな時だ。一人の男が電動糸ノコギリを準備していた。
「すごいアイデアを思いついたぞ!」
このサイン色紙を二枚に分けるのだ。「表面」と「裏面」とに。
「俺って天才! 二枚に分けて別々に売れば、そのまま売るよりも儲かるぞ!」
男の手によって、電動糸ノコギリが動き出した。
とはいえ、この色紙の厚みは二ミリ。
無謀なチャレンジである。
翌日、血のついたサイン色紙が二枚、ネットオークションに・・・・・・。
その一方で、こんなファンもいた。
例の試合をカップルで観戦していたので、手元にある色紙は二枚。
「くっつけちゃおう♪」
「そうだね♪」
こうして、「両面とも同じサイン色紙」が誕生した。
次回は「オールスター」のお話です。




