ホットドッグ・チャレンジ
全米が熱くなる、そんな二週間の始まりだ。
年に一度の特別なイベント、『ホットドッグ・チャレンジ』。メジャーリーグに所属する各チームの本拠地球場で、「どこが『一日あたりのホットドッグ売上数』で一番になるか」というイベントである。
何十年も続いているので、ベースボールファンだけでなく、地元民の関心も高い。『ホットドッグ・チャレンジ』で勝つのは、非常に名誉なこととされている。
かつては『ビール・チャレンジ』というイベントも、同時に開催されていた。『一日あたりのビール売上量』を競うものだ。
しかし、「急性アルコール中毒による死者が何年も連続して出た」などの理由により、現在では行われていない。
さて、この『ホットドッグ・チャレンジ』、商品のサイズや値段は、一定以上であることが求められている。そのため、小さなホットドッグを格安で売れば勝てる、というものでもない。
勝つために重要なのは、やはり動員数だ。どのくらい大勢の人たちを集めることができるのか、それが勝負の大きな鍵になってくる。
なので、計測するのは必ず、その球場で試合が行われる日だ。試合がない日では、それだけで不利になってしまう。
この二週間に全米各地で次々と計測が行われ、売上数の最も多かった本拠地球場が、チャンピオンになるのだ。
ただし、各球場には収容人数の差がある。それだけで勝敗が決まらないよう、「球場を中心に一平方キロメートル」が計測範囲だ。このエリアで販売したホットドッグの数を競うことになる。
球場周辺には、臨時の屋台がいくつも立ち並ぶ他、エリア内にある飲食店でもホットドッグを販売して、地元の勝利を後押しする。目指せ、全米ナンバーワン!
とはいえ、この『ホットドッグ・チャレンジ』、基本的には大都市が有利だ。やはり人の数が違う。
だが、そうでない本拠地が勝ったことも、過去に数回ある。地元が一丸となれば、上位に食い込むことは、決して不可能ではない。たとえば、大食い自慢たちをたくさん集めれば、多少の人数差はひっくり返せる。
こうして今年も、全米中の本拠地球場で次々と、『一日あたりのホットドッグ売上数』が計測されていく。
例年だと、雨のために記録が伸びず、涙をのむ本拠地が一つか二つは出るのに、今年は順調だ。どの本拠地も好成績を収めている。史上まれに見る激戦となっていた。
そして、最終日を迎える。
この時点で、未計測の本拠地球場は一つだけだ。
しかし、すでに勝負は決まっている。
最後に残ったのは、大都市ではない。過去に優勝したこともない。毎年のように下位に沈んでいて、最下位になることも珍しくない。そんな全米で最も小さな本拠地だ。
さすがに、ここが一番になることはないだろう。
そのように思われていたのだが、ふたを開けてみると意外や意外、ホットドッグの売上数がものすごい勢いで伸びていく。
この快進撃には理由があった。
とっておきの秘策を使ったのだ。ソフトドリンク全品を、無料で提供したのである。ホットドッグの値段に規定は存在するが、ソフトドリンクにはない。
とはいえ、大食い勝負において、まさかの飲み放題だ。
ドリンクの分、ホットドッグの消費量が落ちるのでは?
そう思われるかもしれないが、これがものすごい効果を発揮していた。
みなさんにお尋ねしたい。あなたはドリンクなしで、いくつのホットドッグを食べることができるだろうか。
これまでは、ほとんどの人がホットドッグと一緒に、ドリンクを買っていた。それを無料にしたのである。何杯でもご自由にどうぞ。おかわりのおかわり、大歓迎です。
飲み物のある状態が常に維持されるので、これに牽引されて、ホットドッグの消費量も増えていく。
他の本拠地の記録をあっさり抜き去ると、そのまま歴代最高記録も更新した。
こうして、全米で最も小さな本拠地球場が、今年のナンバーワンを勝ち取ったのである。
デリシャス!
次回、宝くじ売り場で異変が・・・。




