野球場の算数
俺は難しいことを考えるのが苦手だ。
だから、学校の勉強はだいたい苦手で、あまり成績は良くなかった。
でも、体を動かすのは好きだった。特に野球をするのが好きで、プロ野球選手になりたいと思っていた。
その夢がかない、現在の俺はプロ野球選手になっている。
で、今は試合中だ。九回裏、ツーアウト満塁。
あとアウト一つで、試合が終わってしまう。俺たちの負けという結末で。
そこで俺に打順がまわってきた。
スコアボードを見る。相手チームが「七点」、俺たちのチームは「四点」だ。
直後に見つける。
外野スタンドで小さな女の子が、スケッチブックをかかげていた。小学一年生か二年生くらいの子だ。
そのスケッチブックには、
7-4=
算数の問題が書いてある。
俺は難しいことを考えるのが苦手だ。
でも、あれの答えはさすがにわかる。「3」だ。
そこでふと、ある考えがうかんでくる。
その女の子に向かって、俺はニヤリとした。
そして、打席に入る。
相手ピッチャーがボールを投げてきた。
俺はバットを全力でふる。
7-4=
学校のテストなら、「3」が答えだろう。
でも、ここは野球場だ。で、今は試合中。
だから、こんな答えがあってもいいじゃないか。
俺はバットをふり抜く。快音がした。
打球が一直線に飛んでいく。そのまま外野スタンドにすいこまれていった。
満塁ホームランだ。これで一気に「4」点入る。
俺はダイヤモンドを一周してきた。
ホームベースをふむ。
三点差をひっくり返しての、逆転勝利だ。
スコアボードの九回裏に、「4」と「×」が表示される。
俺はさっきの女の子を見た。
女の子が大よろこびしている。
両手でスケッチブックをかかげていて、今度は算数の問題じゃなかった。
スケッチブックには今、「大きな花丸」が書いてある。
野球場の算数では、答えが一つとは限らない。
次回は「乱闘」のお話です。




