知識の宝物庫
こんばんは。
寝る時間が遅くなっても、やることが増えても、
やっぱり書いている私。
これまで生きてきたから思う。
この趣味、小学生からだもの。好きなんだなぁ。
お付き合いいただいているかた、感謝申し上げます。
※
勉強の場所が良いか悪いかは別として、スナックという場所は非常に多くの経営者が来店する場所だった。
橙子は日中、大学の講義を取れる範囲のマックスまで履修して、夜になるとスナックに通う忙しい毎日だった。
だいたいの大学生は、卒業できるだけの単位を履修するものだけれど、彼女のスケジュールは過密だった。
『興味のあるのだけ、参加すれば良いのに……』
サナレスは彼女の忙しさを考えて提案する。しかし簡単に一蹴された。
「それは富裕層の考え方ね。経営者200人とか、このバイトでは軽いでしょ? 知識はいずれ金に変わるのよ。大学の学費も高いんだって。教授ってホステス以上に学生から学費を貢がせてる。同じ金額を払うなら、絶対に履修科目は取れるだけ取っておいた方がいいでしょう」
厚手の本を手の中に抱えながら、橙子は大学とバイト先で大半を過ごしていた。
こんなだから、契約した賃貸アパートは、寝るだけの場所だと言い切ったのだ。
「サナレス、あなたの発言はところどころ、御曹司くさいわ。あなたって、そうなのかしら?」
御曹司というか、王族だ。
だが経済観念はある王族なので、橙子の合理性は嫌いではない。肩で風を切って歩き、不必要なことを全て削ぎ落としてしまう彼女を、それも個性だと思えるほどの器でもあった。
なぜなら今、サナレスの実年齢は100歳を超えている。
この世であればとうに後期高齢者、いやギネスブックに載ってもおかしくない年月を生きていた。この時代の人も長生きで、人生100年時代は目前といわれたが、人というのは老けて行くようだった。
サナレスは見た目、老けることはなく生きてきた。
でも魂って、まぁまぁ消耗するんだ。
だって100年って、87万6千時間も身体も心身も、つまりーー脳を働かせてきたってことだから。
橙子のような若い、まっすぐなエネルギーは眩しいくらいだ。
こんな生き方してたら、人生半分でもう疲れそうだなぁ、と思いながらも、彼女が大学の講義に出るおかげで、サナレスも現代社会の知に触れることができて、居心地は良かった。
100年生きて疲れるのは、感情の方であり、サナレスの知的好奇心だけは異様にピンピンしている。アルス大陸にはなかった文化や叡智が、日本という国には存在していた。また科学に対する研究もずっと進化しているので、学ぶことは多かった。
大学というのは、どの世界も実に素晴らしい。
サナレスは思った。
だが、その代わりと言っては何だが、橙子の中で、昼間意識が活性化するサナレスではあったが、夜になると眠ることが多かった。
だから橙子、君は無防備だ。
スナックは危ない。
そう警告したけれど、橙子は実直に経営者200人に会おうとしているようだったし、何よりも金銭を稼ごうとしていた。
シリーズものですが、一話一話読んでいただいてもわかるようにしています。
全部読むと、つながります。