似合わないホステス
続きを書いています。
※
サナレスは若い頃、妓楼で遊び尽くしたことを思い出していた。
経験し尽くしたからこそ思うことがある。
女というのはお金と、地位と、見た目になびく。
ラーディア一族の皇子であるサナレスに、どれだけの女が群がってきたことだろうかを考えると、今自分が橙子として命を受け、群がる方になると考えるだけで、不条理に頭の中が混乱してしまう。
『橙子、君はさ……』
いったい何をしたいのかわからなかった。
「うるさいな。お金儲けだってば」と橙子がそっけなく答えてきた。
「うわぁ、綺麗だよ。あきちゃん」
橙子の源氏名(つまりホステス名)はあきだった。
緋色のドレスを着て、彼女らしくはないキツめの化粧をした橙子は別人で、サナレスですら一瞬鏡に映った自分を見て、吐息をついたくらいだ。
『女は化ける……』
普段の橙子と全然違う。
「化かされる方が悪いのよ。それに昨今では男も化かしてくるらしいわ」
ふとアセスのことを思い出したが、あいつは化かすというより、化かすもののラスボスとして君臨していそうで、サナレスは別格視した。
あいつがホステス、いやこの世界のホストになったら、いい経済効果を産み出しそうで、金儲けだけを考えれば『惜しい』と思っていた。
緋色のドレスを着た橙子は、如才なく客をさばいていた。
客として座っている男達の程度は、かなり低い。
でもとんでもないくらいの愚痴を聞かされ、なんの取り柄もない男を褒め、ピンク色の視線に耐えなければならなかった。
過去に妓楼で抱きたい女を抱かせていただいた自分に、説教する筋合いはない。これはもしかするとこの社会で健全なのかもしれないと、サナレスはぐっと黙った。
『そうよ。これはまだまだ時給が低い』
橙子は笑っていた。
サナレスも苦笑する。
『体なんて単なる肉塊だから、どうしようとかまわないけど、精神まで蝕むのはやめといたら?』
「やらないわよ。私の処女は、サナレスあなたに捧げるんだから」
おい。
お前は生まれ変わった私だろ?
そんなお前に処女捧げるとか言われても、そもそも身体が一つなんだ。
『はいはい……』
ボケたことを言わないでくれと、サナレスは本気にしなかった。
だが。
腹の出張った気持ちの悪い貴族くずれしたサラリーマン? の油ギッシュな男たちに、触れられるのはゾッとする。
『お前、自分を安売りするな』
「じゃあ、あなたの頭で高く売れる方法を考えてよ」
橙子はこれが今自分ができる最高の時給を稼ぐ方法なのだと主張してきた。
めちゃくちゃだな。
自暴自棄に夢というものを混ぜれば、彼女みたいにハイになるのかもしれない。
彼女を高く売るだって……。
できないわけではない。
サナレスは仕方なく頭を使うことにした。
さっさと死んで、転生という形でリンフィーナの元に戻りたい人生でしかなかったけれど、そんな自分のやる気のなさを橙子から見透かされたようだ。
『あんた、稼ぎたいの?』
「そうよ」
サナレスは仕方なくため息をついて意見する。
『だったらとりあえず、この社会の群衆のトップ、つまり会社っての? 経営者二百人と話してみろよ』
「わかった」
橙子は素直だった。
今、書きたいから書いているのですが、色々書いています、