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見た目だけでバイトをしよう

こんばんは。

旅行記を書き終え、書くこともなくなり、こっちに戻りました。


         ※


 まじか……。

 ホステスのバイトの面接は、完全に橙子の容姿、つまり頭の先から足の先までの凹凸を審査していた。

 橙子は日本人特有の、あっさりした顔をしているが、体の発育が悪いわけではない。面接官である男達は、橙子の体を評価していた、


「うん、女子大生っていう肩書きもあるしね」

「ホステス、いいと思うよ」

 はっきり言って下世話だ。


「じゃぁ、今日からお願いできませんか?」

 橙子は端的に交渉していた。

「え? 今日から?」

「それはいいけど、とってもお金に困ってるんだね」

 面接した男達の顔は、さらに悪いことを考えているようだった。


『やめておいた方がいい。こんな界隈に身を置くなど、場末の女がすることではないか……』

 サナレスは見ていられなくて苦言を述べたが、橙子のやつはあっさり無視してきた。


「私、手っ取り早くお金が欲しいんですよ。ですから、今日から働くのはダメですか?」

「ーーいいよ」

 面接官の男達の喉元が、なぜだかごくんと緩む音が聞こえてきた。

「いいねぇ、君。この店でしっかり稼げると思うよぉ」

 猫撫で声の声がうざい。


「今日からならさぁ、ドレス合わせないとね。スリーサイズ、はかろっか?」

「ご心配なく。バスト87、ウエスト60、ひっぷ85センチです。尻がちょっと小さいんですけど、それでいいですか?」

 橙子はあっけらかんと対応している。


「ちなみに身長は165センチで少しデカくて、こんなでも接客できますか?」

「うんうん。すごくスタイルいいねぇ」

 男達は橙子に優しかった。


 それもそうだろう。

 サナレスはしかめっ面をしたまま、ため息をついた。


 いつの間に用意したのもか、橙子は肩と胸、そして足を露出した黒のドレスを身にまとっており、官能的に四肢をくねらせているのだ。


 淡白な顔に化粧までして、眉尻にアイラインを引き、赤いシャドーを落とした橙子は、サナレスが今まで知る彼女ではなかった。


『どんな豹変ぶりだよ……』

「うるさいわね。お金を稼ぐのに手っ取り早い方法の最適解なの」

 小声で橙子はサナレスに言った。


「何色のドレスがいい?」

「うん。できれば一番目立つ、緋色のドレスがいいなぁ」

「いいよ、いいよ。でもうちのナンバーワンに睨まれたら怖くない?」

「大丈夫」

 そこで橙子の声色はワントーン下がった。

「いじめられるの、慣れているし」


シリーズものです。

次回はシリーズの紹介をします。

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