3つの条件
こんばんは。
そろそろオタクシリーズも再始動。書きたいことを整理しているところです。
書くってことを、私は好きだからやってられるのですけれど、好きでもないのに仕事として続けられる人、本当に偉いと思う。(副業で)
そんな人の継続力を称える気持ちで、この章です。
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橙子は最終章らしいルカが生涯をつづった書物を手に取って、サナレスに差し出した。
『こいつを全て読みたい』
「時間がないよ」
『そんなにも時間はかからない。一瞬だ』
サナレスが床に散乱した書物に手を伸ばそうとするけれど、橙子は胸の前に最後のノートを突き出してきた。
「時間がないって言ってるの。全部読みたいなら、最後から読んだらいい。それを迷って1分1秒を無駄にするのなら、その時間を私が奪いたいぐらいよ。ーー私がそこまで言うんだから、このノートは先に読むべきでしょ」
サナレスは橙子の勢いに押されて、手に取ったノートを開くことにした。
昔から橙子は、食事をするときに好物を最後まで取っていく口だった。サナレスはその逆だ。先の一瞬一秒に何が起こるかもしれないのだ。極力好きなものから食べるサナレスに、橙子は彼女らしからぬ提案をしてきた。
『わかった』とサナレスは言った。
その1枚目には、「友へ」と書かれていて、サナレスは心臓をギュッと掴まれたような感覚を覚えた。
ごくりと息を呑んで、呼吸を整える。
『友へ。
サナレスーー。
私は君に別れを言えず、君も私に別れを言えず、私たちは別れた』
そんな書き出しから日記のようなノートが始まる。
『サナレス、私とお前は、同じ名家の姉妹をめぐって微妙な関係になってしまったけれど、私はそこに縛られ続けるだろうが、サナレス、お前はきっと全てから解き放たれる』
ノートは、几帳面すぎる美しい文字で、サナレスへのメッセージが綴られている。
『でーー。私が残したこのノートに辿りつくようなことになること、私は望まないのだけれど、もしそうなったらを過程する』
なぜ橙子が、橙子が知りもしないはずの私の親友ルカが書いた、支離滅裂なノートを一番に読めと言ってきたのか、気がかりでしかない。
橙子は、書かれた書物の最後から読めと念を押す。
「書いてる」
『何を?』
サナレスは橙子が何を見つけたのかわからなかった。
親友が書き残した書物の全てを、サナレスは順を追って確認したかった。最終章のような書き物を先に読めと言われ、さらにページの最後を見ろと言われ、サナレスは戸惑った。
強く指差した橙子の示したページには、ダ・ビンチがサインした横に日付が記されていた。
1974年9月13日ーー。
サナレスは目を見張った。
なんだこの日にちは……。
今日か?
「この人、私達が今日ここに来ることを予測していた。ーーたぶん確信があったから、この日付を残している。それに」
同じページに、転生者は生まれることと死ぬことによって行き来することはできる、と書き綴られていて、サナレスは眉を寄せた。
大抵の者は以前いた世界で、生命の記憶を消失する。けれど稀に記憶を失わずに、異世界を行き来する者達が存在するが、条件があるようだ。
ダ・ビンチとして几帳面に記された文字には、ルカの魂が宿っていた。
1つ目の条件は、時間と場所。
代わりになる絆がある人物の誕生と死が引き換えになる。これはおそらく、世界が運命を翻弄するという悪質な習性があるからだ。
2つ目の条件は、関わる人間の人格の消失だ。
執着や執念というものを排除する世界は、ある種あきらめを知る人にのみ、味方する。
バカみたいなことが書かれていたが、全てを達観して自らの思い、つまり感情を切り捨ててきたものには理解できた。
3つ目の条件は、全てを切り捨てたのにどういうわけか相手への思慕を断ちきれなかったものに、奇跡が起こる。それはーー気まぐれのように存在する。
私の体験がそうだったように、私が立てたこの3つのリサーチクエッションを裏付ける事例を、私の生涯において書き記す。
そういえば、シリーズに入れるのを忘れていると、本日気がついた。
シリーズに含める設定とか、あったような気がしてきました。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




