表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/50

残されたメッセージ

こんばんは。

今週は夏休みということもあり、書きたいものの書いております。


この話、長編の断片になっています。

わからない人物名が出てきた時は、すみません。


各賞だけで完結する話、なかなかできなくて。

         ※


 サナレスの横で橙子はあきらかに落胆していた。

「サナレス、あなた紛らわしいわよ。そんな王子様みたいな格好で現れたら、私だってお宝とか想像してしまうわ」

 和歌山弁になっているところからして、橙子が言ったのは本心だ。


 すまないな。

 サナレスは歯噛みして、橙子に対してはそのうちこっちの近代文明において、財を残してやると、心の奥底で考えていた。


 ーーでも今は、サナレスとしての人格消失の危機が迫っていて、その危機を加味しても親友であったルカが残した、この世からのメッセージを受け取りたかった。好奇心は先に立つが、サナレスの好奇心を湧き立たせているのは、他ならぬかつての親友だった。


 ダ・ビンチの顔を描いた絵で見た時は、老けすぎていて、友だとわからなかったのに、どうしてだか彼の偏屈な顔を思い出した。それに自分が研究して途中だったことを、この世界で全て前に立って説明しようとした研究内容に、惹かれてしまった。


 小部屋に入り、几帳面に整理されているノートを手にとる。

 懐かしかった。


 かつてのサンレスは、彼が書いたノートを借りて、なんとか試験で及第点を取ったものだ。几帳面な文字を確認しながら、サナレスはこの世とあっちの世界の関係を知ることになる。


 らしくもなくみるみるうちに血相を変えるサナレスの横で、橙子が同じ文面を読んでいた。読めるはずもない暗号文字なのに、長年サナレスと2心動体だった橙子は、今にも崩れそうな古い書物を、サナレスが目を通す速度で理解しているようだった。


 そして彼女は側でサナレスの衣服の袖を握っていた。もう消えかけている、ーーいやこっちの社会では消えているサナレスの衣服の袖、つまり魂の断片を掴んで離さず、彼女はいった。


「これ……、まじ?」


『ーーまじ、だと思うよ。こいつ、真面目なやつだから』


「ダビンチを知ってるの?」

『ダビンチっての名のルカって男を知ってる。橙子っていう名の私があるように』

 一番分かりやすく、ダビンチとルカの関係を説明した。


「そっか。じゃあ間違いないね」

 橙子は彼女と自分の信頼関係を絶対のものとして、答えた。

「じゃあ、まじだね」


 そうして彼女はサナレスがルカからの伝言を受け取ることになっているノートを、彼女はおもむろに奪い取った。

 それを返してほしくて、サナレスは橙子の行為を非難しょうと手を伸ばすが、橙子はさらに勢いよく暴れ、彼女の腕が保管していた数冊のノートを全て床下に散らせてしまった。


『橙子ーー!』

 吐息と共にそれらのノートを拾うおうと、サナレスは身をかがめたが、あろうことか橙子はサナレスが手を伸ばしたノートを足で蹴って部屋の端に追いやってしまう。


 流石にサナレスも、橙子のこの態度には怒りを覚え、橙子を批判しようとしたのだけれど、その数倍の形相で橙子がサナレスをにらんでいた。


『いい加減に……』

 大切なノートだというのにと手を伸ばして拓い上げようとする、身をかがめたサナれすに、橙子は飛びついた。


「サナレスは、これ読まなくていい!!」

『どうして!? これは私に残したメッセージだ』

 これほど橙子と睨み合ったことはないという、意見の違い。下手すれば、こっちの世界で二人三脚で生きてきた橙子を、敵だと認識しそうだった。


 橙子の視線も、口調も、サナレスが未だ見るどんな彼女より激しい。

「いいのよ。こんなたくさんの残された思い、貴方は見ないでいい」

『そんなのは、納得いかないーー!』


 橙子とサナレスは睨みあっt。

『サナレス! 見なさいよ!! 貴方が最初に見るのは、彼の研究ノートなんかじゃない』

 橙子は入り口左手の壁を指差した。


『こっちの世界じゃ、太陽は西に沈むんだよね。この部屋の西側の壁、そこに彼が書いた黒い影って、サナレス、貴方とルカって人じゃない!?』

 橙子に言われて、初めて小さな、絵とも言えない黒い影だけを書いたものを、サナレスは見ることになった。


 小さな二つの影、それが部屋の隅にまで伸びている。赤い壁紙は、多分夕焼けで、二人の影が長く、部屋の隅まで伸びているように見えた。


「この壁に描かれたもの。ーーそれってさ、ここに来る前に、街並みに伸びた影みたいじゃない?」


 サナレスは橙子の言葉でその壁を絵として認識した時、言葉を無くした。

 橙子は描かれた書物の、一番新そうな一冊だけを手に取って、サナレスに微笑んだ。


『人ってさ、七転八倒しながら生きるよね。ーーだから死ぬ直後に本心を書くものじゃない? だから私たちは、この最後の一冊を見ればいいって、私は思うのよ』

 そうして橙子は、何十冊もあった書き物の中で、一番新しいものを手にしている。


 ルカ。

 お前は本当に几帳面だ。


 サナレスは部屋の奥で、書いた順にノートをまとめたルカの姿が、目に浮かぶようで、彼が残した最後のノートを、そんな理由ゆえに橙子が手に取ったことに苦笑した。


「一緒に、この一冊を読むだけで、この小部屋の謎は解けるよ」

 それに、貴方にはそう時間もないから、と橙子は言った。

そういえば、シリーズに入れるのを忘れていると、本日気がついた。


シリーズに含める設定とか、あったような気がしてきました。


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ