彼女の人生に与えた影響
こんばんは。
フランスから戻り、東京出張から戻り、やっと日常を取り戻せる。
書きます。
書きたいから書いているので、読みたい人よろしくお願いします。
※
両親、それに故郷との別れであれば、もう少し情緒があってもいいものだと私は思ったけれど、母親は通帳(この世界ではお金を保管している書簡)と印鑑、それから(それを引き出すのに必要なもの)安っぽいプラスチックのカードを渡してきた。
この世界って安っぽいものほど価値が高いようで、興味深い。
どこでも金を下ろせるプラスチックカードが最強。それから物品と交換できる、これもプラスチック(クレジットカードという)は更にすごい。色々とプラスチックのカードという存在の、計り知らない効力を知った。
あとトレードする紙のカードもかなりやばい。ポケットに入るモンスターが描かれたカードは絵柄によって高額で取引されたりもする。
紙なんだけどな……。
よほど素晴らしい画家が描き、箔押しという技術なども取り入れることで、市場では高値で取引されるようで、かなり相場が読みにくい。
また最近では、どこにいても伝書鳩のように伝言が瞬時にして伝わる、スマホというものも当たり前に流通していて、スマホの中にもプラスチック機能的な役割を備えていることが当たり前になっていた。
『それであんた、なんでいきなり東京なんだ?』
この時代、日本という国はかなり多くの領土を統一していたが、燈子が選んだのは日本の首都、つまり一番賑やかな場所だった。地元から近くて、二番目に賑やかな大阪という都を選ばなかった燈子は、そうとう今までの自分を生まれ育った過去と切り離したいようだ。
「大学が決まった」
『でもその大学に寮なんてないだろ? まだ住むところも決まっていないのに、学生寮に住むなんて大嘘ついて、この国の首都ってさ、女子1人にとって危険はないのか?』
サナレスは退屈そうに薄目を開けて、燈子の旅を見送っていた。
「1人じゃない……よ」
『ん?』
「私1人じゃないでしょう!? サナレス、貴方がいるじゃない」
あんぐりと燈子の主張を耳にして驚く私に対して、燈子は胸を張っていた。
「私は、物心ついた時から、ずっと1人じゃないと思っているわよ」
突然の告白、そして今更頼られたってな、と私は狼狽えた。
『今の私には何ができるか、わからないよ』
「知ってるわよ。ただ声だけの存在だもの。毎年儀礼的に行く初詣ほどのご利益もないんでしょ?」
『初詣のご利益についてどれほどのものかは知らないが、まぁ今確実にできることは、お前と会話することだけだな』
「知っているってば。でも、私は1人ではない」
そう言いって燈子は口笛を吹きながら、見知らぬ街をすいすい歩いていた。その足取りに不安げな様子はない。
『おかしな女だ』
「そう? そうでもない」
と、彼女は言った。
「あなたを初めて感じたのは、小学校高学年の時よ」
『ほう。今まで、8年以上も私の存在を無視してきたのか……?」
「ええ。この世界で自分の頭の中に自分以外の人格の声が聞こえるなんて認めたら、なんて言われるか知ってるでしょ?」
『奇人変人』
「それくらいならマシよね。きっと今頃私は人格障害で病院送りになっていたでしょ。つまりあなたも、私と一緒に病院から入退院くり返す不自由な人になっていたのよ』
燈子は頭がいい女だとは知っていたが、私ははこの時確信する。
『あんたさ、まさか私が8年前に考えていたことを忘れてなかった!?』
「忘れてないわよ。あの時の感動」
『そうかーー』
燈子からの返答を耳にして、私の方が恐縮した。
燈子の家族は、8年前、橙子が小学4年生になるタイミングで家族旅行で飛行機に乗ったのだ。
私とて、その時の興奮を今でも鮮やかに覚えている。
『なんて科学だ!!?』
叫んでしまった。
科学の進化した到達地点を突然のぞいてしまったようだった。気球だとか、それを発展させた乗り物を作り出そうとしていた私にとっては、天と地がひっくり返るほど、目をまんまるにして驚いていた。
『すごい!!! すごい! すごい!! 人ってとてつもないスピードで移動できる。それにとてつもない人数で空を道にできるんだ!!!』
「正直、あの日私は自分の頭の中にいるサナレス、あなたにうるさいなと怒鳴りたかった」
『すまない』
「うん。でも、一緒に感動したのよ。私が生きた時代じゃ、それなりに当たり前のことだったんだけどね。ーーあなたが感動していたから……」
燈子はだから自分は飛行機に携わる仕事をするのだと言って、私を驚かせた。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝組になる取説」
シリーズの9作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー