入れ替われば、国際ライセンスとって運転も可能
こんばんは。
更新頻度は減っていますが、これ至高の楽しみの活動なので。死ぬまで続けます。
もう更新なくなったら、死んだと思ってください。
これ、こんな感じで書いている人、死んだときの連絡やっぱりしたいと思いますが、このあたりの制度ってどうなんだろ??
(あ、まだそこまで死ぬ確率高い年齢ではないです。サナレスの世界を確認したいから100歳くらいまで、頑張りたい)
お付き合いよろしくお願いします。
※
パリの安全な地区で個室を取ったら、確かに高額だったので、橙子が眉根を寄せる意味がわかった。
『じゃあ、これ使えばいい』
サナレスは橙子のスーツケースの中から、日本円の札束を取り出した。
橙子が驚愕したのは言うまでもない。
「サナレス!! あなたーー!」
『君が受け取らなかった手切れ金、ガネーシャに回収してもらった』
「それにしても多いでしょ!?」
『君に見つかるといけないと思って、ガネーシャに投資させて3倍にしておいた』
「はぁ!?」
橙子は面食らっていた。
『ちょっと使ったけどね。金なんてあって困らないだろ?』
「そんなーー!」
『これで完全に君は、あの男と手切れたんだ』
サナレスは自分が下した決断を、橙子に対して発言した。その声がかなり低く重くなってしまったとしても、橙子には知らせたかった。生まれてくる子供の将来を考えたとしても、2人の関係は良くないと判断していた。
非難されるとは思ったけれど、橙子は予想外の反応をしてきた。
「よかった!! 私も手切れ金受け取らなかったこと、ちょっと後悔してた」
橙子の素直な笑顔を見てサナレスも破顔した。
『ガネーシャ使って学力だけのくそ男からは取れるだけ取ったし、それを今まで運用しておいたよ』
「運用ってーー。時間短い……」
『日本では安く仕入れられて、ミャンマーでは高く売れる商品があるから、それ輸入したら小遣い稼げるよって、ガネーシャ商会に教えておいた。神様が投資先なんて渡航費浮くし、神様も儲かるし、一石二鳥だろ?』
パリの宿屋の小さな一室、6畳もないスペースで、サナレスはお飾りとばかりに置かれている椅子に腰を下ろした。
この頃はすぐに橙子の身体から抜け出してしまう。そして橙子自身をつかの間操ることも容易になっている。
ガネーシャは「わいと出会ったことで神化が進んだ」とかふざけたことを言っていた。
「サナレスーーあなたって……、ほんと今日みた彫刻みたい。ううん、それよりも黄金比率よね。イスや机が小さく見える……。よく私の中に入ってたもんよ」
橙子は大の字でシングルベットに横になりながら、感心したようにこっちをみてくる。
サナレスがこっそり増やした資金もベットの上に載せたのだが、橙子はサナレスを凝視していた。
『私が居た国は軍があって、私は王族に使える軍隊長だったからな。そりゃ身体も鍛えてきたよ』
まともに応えてみたものの、橙子は違う角度で自分をみている。
そして一言彼女が口にしたのは、サナレスの首の角度を地面に急降下させた。
「なんか、同じ人間じゃないよね」
橙子の率直さは、サナレスを悩ませる。
「三次元キャラだは、ううん。三次元とか俳優レベルじゃないから、アニメの二次元キャラみたい。早くにサナレスをホストにしたら、私がホステスするより、もっと儲かったでしょ? 早く姿見せなさいよ」
ーー。
なんの八つ当たりか分からないが、枕を投げつけられた。
『ーーそもそも。君にしか見えないから商売にならないよ』
「そうなの!? 勿体無い」
橙子にかかったら、自分は動物園のパンダみたいなものなのだろうと苦笑する。
『パンダより稼いだからいいだろ?』
「もっと前から稼げたよね?」
橙子の守銭奴ぶりを忘れていた。恨みがましい視線は、彼女が一人暮らしを始めて、どれだけお金に執着してきたかを知っていたので、背筋がゾッとした。
橙子はブツブツ何か金勘定を口にしていたのだけれど、サナレスがベット脇に乗せた現金に納得して、これ以上何も言わなかった。
心底、橙子の性格を予測して、彼女の資産を増やしておいてよかったと、サナレスは自分の過去の行動を賞賛した。
『あとさ、ガネーシャに国際ライセンスも用意させたんで、明日はレンタカーで地方に行けるよ。橙子が鉄道ってのならそれでもいいけど、レンタカーするってのも楽でいいよね?』
電車と車、どっちがお腹の子によくないのか、サナレスには分からなかったので、橙子に選択肢を委ねてみた。
橙子はポンと手を打った。
「じゃあ国鉄じゃなく車がいいかな。正直アンボワーズについてから、タクシーとか拾えない可能性あるし、歩いて10キロから30キロ歩く計画だったから」
サナレスは彼女の計画の甘さに、彼女らしいと項垂れた。
『ではレンタカー予約できる、ここから一番近いところも調べてある』
「なんかサナレスって執事みたい」
『なんとでも……』
本心でサナレスは応えていた。
便利に使われようが何だろうが、橙子の人生にサナレスは関わってしまった。例え1秒先に橙子と別れたとしても、橙子が生命を終えるまで、サナレスは彼女に幸せでいてほしいと思ってしまったのだ。
それは彼女が背を向けた親兄弟、親族についても、100年以上を生きたサナレスには、尊いものに思えてしまった。彼女を取り巻く、彼女を心配する生き霊というのか、それはサナレスの行動を左右している。そして橙子自身の、頼りなくも大人になろうとして無理を重ね、ーーそれでいて幼子のように頼りない魂を見放せない。
『リン……』
同じような幼い魂、妹として育てた彼女の名前を呼んでしまいそうになった。
そうすると橙子は微笑んだ。
悲しそうだった。泣きそうなへの字口の口角を無理やり上げて、こちらを見ていた。
別れが近づいていた。
それはサナレスも橙子も自覚していた。
「せっかくだから、最新の車借りよう!」
『ああ』
「車に名前つけてさ、モンサンミッシェルまで行く?」
『いいね』
サナレスは応えた。
もう時間はない。
橙子が落ち着いた地で出産するまで、サナレスはこの世に滞在したかった。けれどサナレスが本来いるべき世界は、もう悠長な時間がない。
夜毎現れる、リンフィーナとアセスの胸像は、単にサナレスの安否だけを案ずるものでない様子だった。
この世で橙子のことが気になるのと、自分が生きるべき世界が気になるのと、魂が二分割されそうになり、このところサナレスは眠れずにいた。常に何かを考えている、日中もその状態だったので、簡単に橙子と入れ替わることができていた。
橙子が運転し始めれば、私が意識を入れ替わろう。
サナレスは次の日一日の予定を頭に入れた。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




