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橙子TOUKO

 人はどの時期かに覚醒するのかなと思う。

 自我が目覚める時期は、人それぞれで、橙子という人の人生を追っている小説です。


 異世界転生、逆転生。

 長く書きすぎて、もう何とも。

 お付き合いいただいている方、ありがとうございます。

         ※


 橙子は強い。

 感心するぐらい強い。

 サナレスは真面目にそう思っても、なぜか笑えてきて仕方がなかった。


「ちょっと! 何笑ってるのよ! サナレスってさぁ、あなたこっちの世界にいる期限てのがあるからって、ちょっと無責任すぎるんだからね。当面お金はあるわよ。でも治安のこととか、出産のこととか私だって不安なんだからさ」

『すまない』

 微笑ましさの延長で笑いながら答えたつもりだったが、橙子は不満を口にした。


「サナレス、あなたってね。だいたい私の中に中途半端に転生してきたとかで、ほんっと中途半端に人生に干渉してきて、それで高みの見物とか、悪いけどさ! 人としてはあり得ないんだからね」

 異世界では人じゃないと言われていたので、人としてあり得ないという言葉は適している。サナレスは神なので、至極まともにそういう認識だと納得した。

 橙子にかける言葉はない。


「それにさ、あなたね。どうして実体化した時に、まるでどっかの国の皇子みたいなのよ!   金髪碧眼ってのもさ、こっちにしたらドン引きなのに、何なのその煌びやかな容姿!!??」

 碧眼ではないです。正しくはエメラルドグリーンだと自分の属性を伝えたかったけれど、橙子の評価は一瞬見たものを感覚的にまとめたものらしい。


『君に問われたことには答えるよ。もう、さほど時間がないから、合理的に関わりたい』

 鼻白んだ橙子に、サナレスは真向かった。


『質問一つ目、私は高みの見物をするためにここに来たわけではないし、以前いた世界で死ぬような案件があって、こっちに来た。質問二つ目、どっかの国の皇子っていうのは事実で、私は神と位置付けられる国の皇子だ。血筋だと第三王位後継者という立場になる』

 橙子はしばらく言葉をなくしていた。


「ーーどうして? ずっとそんな重要なことを、サナレスは黙ってた!? それに……今まで私に、姿だって見せてくれなかった」

『ああ。騙すつもりなんてないよ。私の身分や出生が大事たと思ってはいなかっただけ。ーー異世界の情報なんて、君がいる世界には梅雨ほども必要ないと思った。アニメや小説、つまりファンタジーや異世界もののメディアで、さも現実世界とは違うことが物語になってはいた。私が真実を口にしても物語にしかならないし、私が君の中にいること自体、こっちの世界では迷惑だと思ったからだ』

「わかるよ!」

 橙子は感情のまま伝えてきた。


「でもサナレス、あなたのその思慮深い慎重な態度がさ、寄生された私には不愉快だった」

 寄生ってね……。

 人を微生物みたいに言わないでほしい。


「そう、寄生とか言って悪いし、微生物扱いして悪いんだけどね!!!」

 サナレスは愕然とした。

『えっ!!?』

「聞こえているけど。あなたと会話し始めたことから、あなたが言葉に出さないことも、ずっと、前から私には聞こえているんだよ」


 ーー。

 聞こえていないと思っていた。頭の中で考えた言葉が橙子に伝わっているなんて、サナレスは思いもしなかった。


「どうしてこんなクズ男を選ぶのかとか思ったよね? どうしてクズを脱した後でもさ、不倫って選択肢、つまり相手がいる男を選んだのかって、思ったよね?」

『それはーー間違いない』

「だよね」

 橙子はなぜか毅然としていた。


「全部、サナレスから言われることは予測してたよ。予知って言った方がピッタリする」

 意思の強い吊り目がちな漆黒の瞳、どれだけ彼女を取り巻く環境が悪化しても変わらない漆黒の髪は、ホスト界隈では質素に見えた。


「サナレス。私の中にあなたがいると知ってから、私は日本の狭い地方を出て世界を知りたいと思った。世界に出る機会を経て、この世界以外の世界、貴方の生きてきた異世界にも興味持ったよ」

 でも、と橙子は清々しい顔をしている。


「私は子供がいる。果てなく繋がる世界より、それよりさ、この世界で生活する力が必要なのよ。ーー王族だっけ? 御曹司のサナレスには生活に必要なお金のことなんて、所詮わからないでしょ?」


 橙子の意見を聞いた瞬間、サナレスは脱力した。

 ああ、そうだな。

 王族として生きた自分に庶民の生活や、金のやりくりの日常なんて、理解できないと思われても仕方なかった。


『なるほど』

 サナレスはそう言った。


 橙子は常に金に執着した。

 まず時間を犠牲にした。そして心や体すら犠牲にして、金というものを大事にした。


『なるほど、橙子』

 サナレスは決意する。


『すまないが私はただの皇子という王族血縁に甘んじてきたわけではない。金勘定なら、君が住まうこの世界の誰にも、負けない自信がある』

「はぁ?」

 橙子からは、にわかには信じられないと揶揄される。


『そうだな。経済学と社会学で、このへん、こっちの世界の事情は把握している』

「はぁ??」

 疑り深い橙子に、サナレスは一から説明した。


『私と君が一緒にいられる時間は少ない。でも君が今後産みたいと言った子供と、その先の未来を保証するぐらい、ーーそれくらいの知識を君に伝承する時間は、断言するけどね

あるよ』


「皇子様が?」

『悪いけど、出生はこの世でいうところのガチャだろ? そこを議論にするのは馬鹿げている』


 事実は橙子が不倫した挙句に、男の口車に乗って日本を出国し、滞在しているホテルも明日、明後日中に出ていかなければならないという現実だった。


「がちゃってね!!」

『あ、私にとっての事実だけを見た場合、それはすまない。私にとって、君が選ぶ男はガチャだ』


 日本ではないどこかに行くという、世界に目を向けた橙子ではあったが、経験した苦い過去に多少は引きずられている。


『さて。私は君の世界に来た時、言葉も風習も知らなかった。今、君がその状態じゃない?』

「うん」

 殊勝にも橙子は受け入れていた。


「でも、決して今の状況はガチャじゃない。サナレス、貴方と会えたのも。それにこの子を私が授かったのも、なんか全部意味があるって確信してる」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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