未来って過去
こんばんは。
久しぶりになっていますか?
最近週一回投稿するのがやっとかもしれませんが、あいかわらず書きたい時に書いています。
皆さんの反応で、少しだけ活性化しますので、よろしくお願いします。
※
見方が変わってしまう。
橙子を見るサナレスの視線が、どこか他人行儀でしかなかったものから、もう少し親身に変容していた。
でも橙子は大人だ。今更彼女の人生に口を出したくてもうまくはいかない。
それはわかっていた。親のようにうるさくしても、効果はないだろう。
「ねぇ、サナレス! なんかこっちにきて最近、無口じゃない?」
『……』
「いるんでしょ?」
『……』
「もう! いるのわかるし』
勝手に居なくならないでよね、と彼女に釘を刺された。
橙子は若い。
将来に夢見ることもあれば、長崎という男と刹那的な恋愛を楽しむような幼さなのだ。
サナレスはふと苦笑いを浮かべた。
そうだった。
ずいぶん前に忘れてしまった感覚だが、恋愛というのはずいぶん刹那的な感情だ。
橙子と色々話たい。
それなのにもうサナレスには、時間がないようだった。
この世に滞在できるリミットを感じている。
ーーずっと呼ばれているのだ。
それは小さな声だけれど、一本の細い糸を繋ぐように、鮮明に自分を呼ぶ声が聞こえる。
『兄様、サナレス兄様!!』
リンフィーナの声だった。
彼女はちゃんと、生きている。
生きている人の声は、どうやら異世界を越えるらしい。
呼吸すら伝わってきそうな距離に、リンフィーナが悲痛な声をあげているのだ。
おおかた自分は死んだとーー、いや死にそうだと思われている。
「サナレス!」
ぼうっとしていると、橙子に名前を呼ばれた。
「あなたね、なんか3Dになってから、ちょっとおかしいんだけど」
……いや。3Dになったわけじゃない。単に君の前で実体化したんだけど……。それもガネーシャに煽られて、数時間だけ姿を晒したに過ぎない。
「もう! 相変わらず根暗! なんかあるなら、言いなさいよね」
え?
根暗?
橙子にとってそんなふうに受け止められていたことに、サナレスは驚愕を隠せない。
黙ったまま反応した。小首をかしげる。
『ーーまず、根暗という言葉の定義が違うようだ』
思わず橙子に話しかけてしまったではないか。
サナレスは頭を抱えた。
「やっぱいるんじゃないよ、根暗男!」
言われ方がひどいと、頭を抱えた。
だが異世界からこちらに来た経緯を、橙子にどう伝えていいのかわからなかった。元々伝える必要すら感じていなかった、というのが本心だ。
でもサナレスは橙子を見る目を変えてしまっている。
身内?
少なくとも自分の辿ってきた延長線上に、彼女の存在がある。
これまでとは違い、どう接していいものか?
ガネーシャとかいう神が言うことが真実なのであれば、異世界同士の因果関係も思慮に入れて考えなければならないらしい。単純ではないパズルだった。
「えっとさ。整理しよう、根暗男!」
『私をーー、その根暗男って呼ばないなら、整理整頓に付き合ってやる』
「サナレスのために整理してやろうって言っているのに、ほんと上からなのね」
そもそも橙子は必要最低限の‘もの‘すら持たない性格だったので、物量としてモノを整理する必要はなかった。
彼女が整理するなら、人だ。
ガネーシャが現れて、橙子も考えるところがあるらしい。
「サナレス、あなたが一番、大事な人って誰?」
『何を聞いている?』
橙子が知る必要もないことだと、サナレスは失笑した。
だが橙子は、珍しく食らいついてくる。
「必要でしょ? 私が生まれたことに、つまり私の存在意義に、サナレスとその世界の人達の関係性が関与するなら、必要なことじゃない?」
橙子は彼女の中に戻ったサナレスを、じいっと見つめてきた。
「私は何をする必要がある? サナレス、あなた大切にしていた人達とあなたは、一体何を望んでいたの?」
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




