触れられない関係にできること
こんばんは。
少し勉強が忙しくなりそうですが、G Wは自由に過ごしたいです。
最近ストーンワールドを面白いと思っています。
現代、Society5.0とかいうでしょ?
認識するには昭和時代もまぁまぁ大事かなと思います。
※
橙子はわりと実家の教えに忠実で、週に一度はベットの寝具を洗濯していた。
その洗われたシーツの上で踊るのは、前はホストで、今回は妻子ある男だった。
ホストという河野とかいう男に貢がなくなっただけマシだと言えばいいのだろうか……。
河野義彦という男は、単に橙子と金で繋がっていただけのホストだった。
その状態を脱したというなら、マシなのか?
「サナレス、私本当に好きな人ができた」
けれど橙子は、こんなことを口走っていた。
ふうん。
こっちの方が、精神的に重症だ。
サナレスは頭を抱えた。
『どこが好きなの?』
「パイロット養成コースにいるの。将来は世界中にはばたく人で、すごく優しい」
『へぇ』
サナレスは感情をどこかに落としてしまって、鼻でせせら笑った。
優しくてもさ、この世界って法律で一夫一妻制って定められていた。
彼には妻子あるでしょ?
この世は一夫一妻制。だから法律で最初の女を娶れば、次の女との関係を禁じている。この法律自体、生命体に対しては無理があると思うけれど、そういうことらしい。
男は一度結婚し、気に入った女に優しくしたいと望めば、貢いで妾にするのが普通らしい。法律で禁じられていれも女の生活を保証すれば、内密に大目に見られるという、バカみたいな法律の抜け穴があるのだった。
だが現状で、橙子は貢がれてすらいない。
安上がりになるとばかりに、男はこの破格値のアパートに押し入ってきて。割と豊満な橙子の身体を制欲の捌け口にしているようにしか見えないので、サナレスの心は氷点零下まで冷え切っていた。
「彼、こんな仕事でしょ? 世界中あちこち行っていて、夜も昼もないような仕事だから、奥様とうまくいってないって。ほとんど家族と一緒にいられないって。だからそれが理由で、もう離婚するかもって言ってるんだ」
へぇ。
「離婚したら、私と一緒になりたいって言うんだけど……」
橙子は相手に離婚して欲しいらしい。
へぇ。
言葉に、簡単に騙されるんだ。
「サナレス、聞いている?」
『聞いているよ。そうだね、橙子が彼を好きで、きみ好きな男と一緒になれるのなら、それは橙子の幸せかもしれないね』
「うん。彼には息子がいるけど、でも子供の両親がさ、仲の悪い環境で育てられるより、早くに離婚しちゃって、ちゃんと養育する方がさ、息子さんの精神的にもいいと思うんだよね」
『そうなんだ』
サナレスは橙子が嫌がらない方向に、言葉を紡いでいた。自分の存在自体が居候なのだ。彼女の人生に口を出すことは許されないだろうと決心していた。
長崎大輔。
橙子が不倫した男だった。
不倫男なのに、なぜか男気を感じる潔さがあった。ホストに飽き、無駄な時間を過ごしたとこりていた橙子を夢中にするには、十分な魅力がある男だった。
長崎は「愛している」という言葉を頻繁に橙子に使っていた。
妻子がいて、その生活も息子のためには簡単に壊せない、だから大事だとご大層な理屈を豪語しながら、橙子のことも愛しているらしい。それは嘘とは思えず、橙子が夢中になるのもわからなくもない。彼の中の真実が橙子に伝わっているらしい。
けれどな。
サナレスは思うことがある。
愛は、誓いであり責任、そして自らを縛る覚悟だった。
長崎という男は、サナレスからすればずいぶん軽かった。
橙子に愛しているという尊大な言葉を吐きながら、彼の家族に責任を持つと誓い、その言葉に縛られており、縛られている限り安全だと思っているような小心者で、ある意味で言えば無責任だった。
恋愛って、走り始めは楽しい。
橙子は大学にもきっちりと出席し、ホストではない一般の男と恋愛できたことに満足だったようだが、サナレスは苦虫を噛み潰す。
長崎大輔が、大学の準教授だったからだ。
「長崎先生は、とても面白い講義をされるの」
橙子は知力にも弱かったらしい。
サナレスは肝心なところで、彼女は間違っていると思っていた。でも単刀直入に否定できない。それに橙子が彼を信じるなら、それが彼女の真実なのだ。そう思った。
『そうか。橙子の好きにすればいいと思う』
君が幸せなのであれば、な。
この頃橙子は、浴びるように酒を飲むようになった。クラブで働いていた時よりも、ずっとたくさんの酒を日常的にあおっていた。
サナレスは橙子と一つの身体を共有している。だからこそ、わかった。橙子は叫び声を上げていた。
助けて。
神様がいるなら、ねぇ助けてよ。
偽りの神と言われたサナレスではあったが、せめて自分が転生して仮住まいにしている橙子1人だけは助けたいと思っていた。神ではないけれど、橙子の嘆きがサナレスに届いている。
『橙子、君は幸せになる子だよ。私が加護を与えているんだから』
「でも、長崎先生はまだ別れてくれない。あんまりしつこくして嫌われたくないし……。連絡して先生が困ったらと思うと、連絡もできないよ……」
『そうか。でも君には私がついていて、郷にいる君の両親も、君を大切に思っているんだ』
ーーだから、と説得しようとしたけれど、たぶん無駄だ。
サナレスは橙子が言おうとする言葉を予測していた。
「サナレス? あなたは私を抱きしめてくれない。それに家族だって、もう大人になった私に接触しない。接触されない魂って、とても孤独なんだよ」
知っていた。
この世界に来て、知っていたことに科学的な根拠も得た。
触覚にも、つまり撫でられるという行為だけで、人にはオキシトシンというホルモンが出る。これが幸福ホルモンを出し、人に満足感を与えるのだ。
最近では、皮膚に触れられる時の感覚についての研究が盛んになってきている。
一般的に知られていない研究とはいえ、触れられない孤独感は、数値上明らかになってきているのだ。
自分で自分を撫でても、いいのだけれどな。
お腹が痛い時、自分の腹に手を当てるように、自分の身体を自分で触ることも、孤独を紛らす方法の一つなのだが、ーー人は知らない。
『ごめん橙子、私はこの世界で実体化できないようだ』
中途半端にサナレスは転生した。実体化しなかった理由は、おそらく自分が実体化したい世界が別にあったからだ。
サナレスの魂は、ずっとリンフィーナとアセスがいる世界に居残っていて、うまく転生することもできなかったらしい。
「サナレスが実体化してたら、私は男だったてこと? それってさ、紙一重なんだけど」
『かもしれないな。でも人の性って、紙一重なんじゃない? 男でも女でも、それはどうでもいいし。ーーただ人は人を好きになるし、人以外だって好きになるよね。単に好きになる相手は自分で選ぶってことだ。それでいいと思う』
だから、橙子が好きなようにしたらいい。
サナレスは彼の血のつながらないリンフィーナに対して、寛容になれなかったことを悔いていた。
それは単に自分のエゴだと思った。
結局育て親の兄として、ーーいや男として、彼女を自由にしたくはなかった。だから水月の宮の中にずっと彼女を閉じ込めてしまっていたのかもしれない。
彼女の婚約者まで、自分が目を通さないといけないと思い込んだ。
リンフィーナの気持ちなんて、理解しているようで無視してきた。自分の気持ちを優先した。女だから、つまり弱者だから護らなければいけないと、どこかで思っていたのかもしれない。
サナレスは、冷静に発言する。
『橙子、君は強いし、合理的だ。前回の恋愛にも、自分でどうするかの決着をつけた。私は君が決めたことをいつも応援する。その気持ちだけを伝えておこう』
こんばんは。
特に、書くこともないのですが。
シリーズの紹介をしておきます。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「異世界で勝ち組になる取説」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




