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何もできない自分だから

こんばんは。

今日も書いています。

描きたいものをただ書いているので、需要がなくても続きます。

なろう系って、作者がある日突然死んだら、どんな感じになるんでしょう……。


シリーズものです。

ですが今はまだシリーズに位置付けていません。面倒で(心の声)


        ※

 

 あの日、散歩する1日を過ごしても、橙子の生活に変化はなかった。

 それどころかサナレスから見て、彼女の生活はどんどん悪化しているように感じてしまう。


 ただ週に一度図書館に行く習慣、それから朝食にオートミールを食べる日課、それに追加された行動習慣で、彼女は1ヶ月に一度サナレスと一緒に午前中公演を散歩した。


 平和な習慣。

 けれどそういった平和な習慣は、彼女の意識の高さがなくなれば、あっさりと無くなる。

 サナレスは知っていた。


「私、好きな人ができたかも」

 橙子は、夜の店で出会った客の1人を気に入ったようだった。サナレスが知らないうちに、初めて橙子が、どうやら体を重ね合わせた男らしい。

「私はサナレス、貴方が一緒にいる限り、悲惨な未来を想像しないもの。この新天地で、私は他の誰とも会話しなくてもいい。それでも不安は、何もないのよ」と言ってくれた橙子は、もうサナレスが知る幼い橙子ではなくなっていた。


 人は接触に弱いのだ。

 橙子が好きだと言った男は、悪いことにホストだった。

 甘い言葉をつむぐ、顔と容量ばかりがいい男で、橙子は鉄壁だと思っていたのだが、あっさりと陥落されてしまっていた。


 くどく手口が巧妙で、サナレスはこのような罠に橙子が引っかかってしまったことに頭を抱えたが、その頃になると橙子はサナレスにすら、あまり話しかけなくなってしまった。


 習慣だけが残った。

 彼女が話しかけてこない限り、サナレスは彼女と意思疎通ができないでいた。


『橙子、君は騙されているよ』

 この頃の橙子は、大学にもほとんど行かずに、稼いだ金銭を好きだと言ったホスト男に貢ぐようになっていた。


 かといってサナレスも、どんどん橙子と繋がれる時間は短くなっていた。

 このところ夕方になると、サナレスは橙子がいる世界から抜け出していた。


『兄様!』

『サナレス! 全くあなたと言う人は!!』

 リンフィーナとアセス、2人が声を揃えてサナレスを呼んでいた。

 サナレスの魂は帰りたい場所に一刻も早く戻りたくて、橙子との関係を断とうとしていた。


 アセスも冥府を出る時、転生したはずだった。

 それなのに今リンフィーナとアセスは、2人一緒にいるのだろうか?

 2人の元に戻りたかった。


 だから、この転生した不自由な世界で出会った関係など、捨て置いてかまわない。 

 けれど橙子を自分の分身のように思うようになっていたサナレスは、身体の関係が初めてだと言うだけで結ばれた男と、橙子が別れることを願っていた。


『橙子、君は何のためにお金を稼ぎたいと言った? 何のために節約したいと言ったんだ?』

 人は身体の関係に流されるものが多い。それは人だからで、理解しないわけではない。

 でも橙子、君には夢があったはずだ。


 肉体がない。それはサナレスにとって最も不利な状態だった。


 大切だと思ったのに、有象無象の男に彼女を奪われ、声をかけたり慰めたりすることもできない。手を引いて、彼女が望んでいる夢に連れ出すことすらできないんだ。

 サナレスは歯噛みする。

 生まれ変わった自分自身だったと言うのに、救えない魂が目の前にある。


 橙子は月に数十万、ホストに貢ぐ女になっていた。

 そのために何を犠牲にしているのか、サナレスは想像することしかできなかった。


 この世で考えられる現実的な知識をパズルのようにつなげば、ホストの男に貢ぐために、女が行う行為は売春だった。単に飲み相手をするわけではない。女は身体と時間を売る。売り物になるうちに、身体を売って、男から金を得るのだ。


 やはりこの世界の妓楼だ。

 この世にも妓楼があるのだと、サナレスは認識した。


 一見すると華やかで幸せそうな一瞬に、多額の金が動く色恋の世界なんて、すでに通ってきた道でしかないサナレスにとっては、色褪せた世界だったのだけれど、橙子にはそうではない。


 恋愛経験が皆無と言ってもいい女子は、すぐに色恋の世界に落ちていく。


『橙子、今日は散歩する予定の日だよ』

「めんどくさい。眠いわ……」

 ホスト男が気まぐれに橙子の寝所に泊まり込み、そそくさと帰って行った明け方、橙子はベットから起き上がらなくなった。


『そうか。眠いならゆっくりすればいい』

 サナレスは裸体で眠そうにする彼女に声をかけた。

 かける声ほどの優しさで、せめて彼女の額を撫でられればいいのにと、サナレスは思った。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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