建築の著作物
あまりに蒼い、べた塗りの空。
紅葉から冬に移り変わる寸前の山々。
朝の柔らかな日差しに、完璧な冬空。
寒い。
どこかの山の中にある研究所。
完全な秘匿エリア。
と言っても、普通にバス路線がある。
隣は大学。若い子達も多い。
ここにたどり着くまでは、鄙びた片田舎の景色である。普通にビニールハウスやら、軒先のある一軒家など、時間が止まった景色。
今見ている景色を茂木と入れ替えても、空気感以外は変わらないぐらいに片田舎である。
海が近い分、空気の肌感覚は違うが。
研究所の中は、急に近代的だ。
建築の著作物。綺麗だ。
修士論文が建築物に関する論文だったぐらいに、造形美というものに、心惹かれる。
廃墟も好きだが、今、生きている建築物も美しい。
生と死。建築物にも建築家の意志が込められている。
生きている建築物は、さらに今いる人たちとのシンフォニックにより輝きが増すように感じられる。
長い渡り廊下。
涼やかな空気。
深呼吸をすれば、木々の匂いに、人の声に自然音。
どこか知覚が溶け出すような意識を持ちながら、歩いていく。
夜になれば、押し潰されるような、闇。
空気感、闇自体に力を感じる。
人は自然に勝てないと思わされる。
だが、建物と共にある安心感。
もう、週末か。時間が早い。
人が自然に還るその時までは、この人が作り出した人工物と少しでも響き合い生きていきたい。
何もない自分でも、建築物を彩る景色の一部にはなれるのだから。




