川のほとり
ぼんやり、夢を見ていた。
確か、Frankfurtにいた頃。市民学校の屋上で友人達と卒業祝いをしていた。
ドイツ市民権を得るためにはドイツ語レベルB2までの修了とテスト合格が最低限、必要。
B2クラスの卒業祝い。各人の出身国のメニューを持ち寄って、屋上で食べた。
イラン人は甘い砂糖水に浸かったピスタチオのお菓子。ママさんが作ってくれたそうだ。歯が溶けそうな甘さ。発音できない言葉だった。
ジョージア人はワイン。ジョージアって最古のワイン産地らしい。酒はまず嗜まないから知らなかった。お祖父さんがワイン農家で秘蔵のワインを持ってきた、らしく結構無理矢理飲まされた。
いつも澄ました俺と酒を飲みたかったと完全に飲んだくれた彼女が不思議な言語で俺に話しかけていたのを、マスコミ関係志望のルーマニア人がドイツ語に翻訳してくれた。彼女は「忘れていた」と言って、売店からスナックを買ってきていた。
タクシー運転手のチュニジア人は不思議なパンらしきなにか。中の具は薄荷味。しかも辛い。いとも不思議な食べ物を食べながら、日本とチュニジアは兄弟みたいなものと言われて、疑問しかなかった。
酔っ払い曰く、チュニジアには日本からの援助によって建てられたものが多いらしい。そんなに援助してくれるなんて、きっと何か縁がある、らしい。イスラエルの失われた10支族などの話はかなり眉唾物である。見かねたのか途中からイタリア人とアフガニスタン人が割り込んできた。持ち寄ったのはミートボールと焼きなす。スパイシーな味付け。
何故か大量のチョコを持ってきたエストニア人は相変わらず、俺が作ったちらし寿司を黙々と食べている。1番最初のクラスからずっと一緒だったが、彼女は物静かだ。何故かちらし寿司が気に入ったのか、クラスが上がる度にやる卒業パーティーでは1番食べてくれる。というより、余ったら持ち帰っている。いや、まあ、いいけど。レシピは渡したんだが。
1番仲が良かったチェコ人はビールと煮物。何故かハンガリアングヤーシュと言っていた。チェコの名物なのにハンガリー?聞くと一帯の名物がグヤーシュという煮物らしきなにからしい。食べやすい味だった。
このレベルになると、移住前提の人しかいない。学費もそうだが、6回の試験をパスする必要がある。
みんなで、最期のパーティー。
年齢も国籍も母国語も職業も違うが、友達だった。
そんな、みんなとの夢をぼんやり見ていた。
まあ、なんだかんだで、俺は対人関係運とやらは悪くないんだろう。
冷え切った窓に、手を触れた。




