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クロワッサン

ごめんなさい。

今なら素直にそう思えた。


目の前にあるクロワッサン。


調べた。グラムもレシピも、オーブンに工業用製造機械に関する特許、意匠。歴史。原材料の産地に現在の流行。売り上げに占める割合など。複数種類、匂い嗅いで、食べた。


だが、全く美味しそうに書けない。


・・・学生上がりや中途、設計者になったばかりの人に知的財産権の取っ掛かりを教えていた頃、目の前のものを書くだけなのに「書けません!」という子が結構いた。


当時は、彼らが何を言っているのかわからなかった。

文章にするだけだろ。早く書いてくれ、話が進まない。


と、思っていた。が、しかし。

クロワッサンを文字化するだけでも、非常に困難だと理解した。今なら、心から謝れる。ごめんなさい。書けないものは、書けない。


気分転換に、以前の会社の先輩に久しぶりに会いに行ったら、子どもがいた。写真ではまだ乳飲み子だったのに、普通に立って歩いていて、びびった。


一緒に食事したが、手伝ってもらわないとまだ食べれない子から思い出したのは、祖父の最期。


墓参りしたからか、感傷的になっていたんだろう。

全く美味しそうじゃない食事風景である。

完全に痛々しい文章になってしまった。


どうやっても美味しそうじゃない。


この子の3年後には、どっかの共産主義者に論争吹っ掛けるバカだった俺は、いまだにクロワッサンひとつ、まともに描けないのに、随分と偉そうに特許明細書を書いていたんだな。


ため息しかない。反省しよう。

今年も最期か。いろいろあった。


自分の足りなさを感じる一年だった。

頑張るって難しいことを学んだ。


最終日ぐらい、真面目に過ごすか。

英語でも勉強しよう。来年に備えて。


クロワッサンを食べようと、お湯を沸かし始めた。

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