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第一王子殿下の恋人の盾にされました。  作者: 燈華


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65.婚約を取り持ってくれた方が来てくれました

「たかだか第一王子が先代国王陛下がまとめてくださった縁談を解消させようというのですか? どのような権限があってそのようなことをおっしゃっているのですか? 弁えたほうがよろしいかと」


不敬罪に取られかねない言い方なのは分かっている。

だがこれくらい言わないと第一王子には伝わらないだろうと判断して敢えてそのような言い方をした。

ここには強力な味方がいる。

不敬罪には取られないだろう。

よく言ったとばかりに頷かれ、かの方が口を開かれる。


「その通りだ」


背後から聞こえた声に第一王子は驚いたように振り向いた。


「お祖父様!」


アンリエッタと兄は素早く立ち上がり、礼を執った。


「ああ、よい。楽にするといい」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます」


アンリエッタと兄は礼を解く。


「アンリエッタは怪我をしているのだろう? 二人とも座るといい」


許可を出されたとはいえ王族を差し置いて座るわけにはいかない。

それに気づいたのか先代国王陛下が苦笑する。


「生真面目だな」

「当然のことにございます」


兄の言葉に微かに頷いて同意見だと示す。


「そうか」


それ以上は特に言われることはなく、先代国王陛下が一人掛けのソファに座る。

それを見届けてから第一王子が元の位置に座る。

アンリエッタと兄も静かに腰を下ろした。


「お祖父様、どういうことでしょう? いえ、その前にいつの間にいらしたのでしょうか?」


第一王子は先代国王陛下を前に動揺しているようだ。


「お前が今日、アンリエッタを呼び出していたと知らせをもらっていたからな、その時間に合わせて隠し通路のほうに控えていた」


第一王子からの手紙をもらってすぐに家のほうから先代国王陛下へとその旨を記した手紙を送らせてもらっていた。

まさかこのような形で現れるとは思ってはいなかった。


隠し通路が王族の部屋にはあるのだろう、ということははっきりさせていないだけで公然の秘密だ。

むしろ何かあった時のためにあって当然だ。


どこにあるのか当然アンリエッタも兄も知らない。

出てきたところも見ていない。

王家の秘密など知らない。

兄も見ていないはずだ。

余計なものを知って逃げられないように絡め取られては(たま)らない。


「そう、でしたか。そもそもお祖父様とアンリエッタはどのような関係なのですか?」


不思議に思うのは無理もない。

一伯爵令嬢と先代の国王陛下の接点など普通はあるはずがない。

家としてほんのささいな接点があるのだが、本来なら気にかけてもらえるほどのものではない。


「隣国のエーヴィヒ王国に私の妹が嫁いだことは知っているな?」

「はい。勿論です」

「その時に傍付きとして共に行ってくれたのが、前ラシーヌ伯爵の妹のフィデリテ嬢、まあ今は夫人だが、なんだ」


一つ頷いた第一王子は、それだけの繋がりで目をかけているのか? と不思議そうだ。


「その縁でアンリエッタの婚約を取り持ったのが私と妹だ」

「妹、というと、隣国の先代王妃陛下でしょうか?」


今の話の流れからの推測だろう。

先代国王陛下には隣国に嫁いだ妹君の他に二人妹がいる。


「ああ、そうだ」

「何故お二人が?」


心底不思議そうだ。


「ん? ああ、知らないか」


目線だけで許可を求められたので兄共々頷く。


「アンリエッタの婚約者は妹の嫁いだ隣国の侯爵家の嫡男だ」


第一王子が大きく目を見開く。

本当に知らなかったのだろう。

調べようともしなかった。


アンリエッタの婚約は隣国では隠していないのだから調べればわかったはずだ。

少し調べればラシーヌ家が隣国と縁があることも、アンリエッタが長期休みの時には隣国に行っていることもわかるのだ。

そこから辿れば簡単に辿り着くだろう。


アンリエッタの婚約者が隣国の者だからこそ、第一王子と恋愛を楽しんでいる、という噂を信じた者もいたのだろうと思う。

婚約者やその家の目が届かないからこそ羽目を外していると見られたのだ。


親切にも(・・・・)わざわざシュタイン家へとアンリエッタのことを告げた家もあったということだから知っている家は一定数いることは間違いない。


その家のリストは我が家へともたらされている。

当然その家は信用できるリストから外れている。


せっかくだからとモーガン侯爵家とボワ辺境伯家にも渡したということだった。

きっと役立ててくれることだろう。


先代国王陛下が一瞬呆れた顔になった。

調べていないことに呆れたのだろう。


協力させるならその周辺を探るというのは当然だ。

どこでどんなふうに繋がっているのかわかったものではない。

それによって足を掬われることだって普通に有り得るのだ。

第一王子はそこまで考えていなかったようだ。


本当にどこが優秀な王子なのだろう?

ただ持ち上げてそのようなことを言われているのだろうか?

そういえば書類を作るのはうまかったからその辺りの評価なのだろうか?


まあアンリエッタには関係ない。


「そう、でしたか」


絞り出したような声だ。

だが先代国王陛下は追及の手を緩めない。


「そこに王子が横槍を入れれば下手したら国際問題だ」


厳しい声だ。

知らなかった、では済まされないことだ。

それほど慎重に期さなければならないのが王族の婚姻であり、他国との婚約だ。


「そうですね。確かにその通りです」


それくらいはさすがに理解ができたようだ。

第一王子の顔は青ざめている。


それでも先代国王陛下は追及の手を緩めない。

孫可愛さで許せる範囲は超えたのだ。

……先代国王陛下が第一王子のことをどれだけ可愛がっているかは知らないが。

ついでにそれほど甘い方ではない。


「それに我々の顔を潰すことにもなった」


正当な理由もなく婚約にケチをつければ当然そういうことになる。

それはまとめてくれたのが先代の国王陛下ではなくとも同じこと。


正当な理由もなく他人の婚約に口出しすることは重大なマナー違反だ。

婚約を交わした両家にも取り持った方にもすべての顔を潰すことになる。


それは王族といえども許されることではない。

暗黒時代に数多繰り返されたことなのでこの国では尚更忌避感が強い。


「はい……。申し訳ありません……」


第一王子が深く頭を下げる。

それを一瞥して先代国王陛下は頭を上げさせる。

その際許しの言葉は与えなかった。


「そもそもお前に自分の伴侶を決める権利はない」


そう、それが一番の問題点だ。

王族の婚姻関係は全てが国家戦略だ。

王子個人が勝手に決めていいことではないのだ。


「……わかっています」


わかっていて言うとは本当に何を考えているのだろう?

先代国王陛下も一層視線を厳しくする。


「わかっていて何故そのようなことを言い出した?」

「……それくらいしか責任の取り方が思いつかなかったのです」


先代国王陛下が嘆息する。

アンリエッタも心の中で溜め息をついた。


「短慮すぎる」

「申し訳ありません」


第一王子が頭を下げる。


「今回のことは聞かなかったことにしてやる」

「ありがとうございます」

「エドワールとアンリエッタもそれでいいか?」

「はい。構いません」

「陛下の御心のままに」


この件に関してはそれが最善手だ。

これ以上余計なことはされたくない。


それに大事にしてしまえばアンリエッタも瑕疵をつけられる可能性がある。

それなら聞かなかったことにするのがいい。

顔を潰されかけた先代国王陛下が聞かなかったことにするならアンリエッタたちは従うだけだ。


あとは本当に余計なことをせずにアンリエッタたちを速やかに帰してほしい。

そう思ったのだが。


ぽつりと第一王子が呟く。


「お祖父様は全て知っていたのですね」

「無論だ。アンリエッタからも手紙が届いたからな」


第一王子が驚いたようにアンリエッタを見る。

何を驚いているのだろうか。

当然だろう。

それにアンリエッタはきちんと告げておいたはずだ。


「わたくしは初めに告げましたよ、婚約を取りまとめてくださった方にもお知らせして説明します、と」

「確かに、言っていたな」


それが誰かを確認しなかったのも第一王子だ。

訊かれても答えていたかどうかはわからないが。

それはアンリエッタ個人の判断で伝えられることではないのだ。


それでも確認することはできる。

それを怠ったのだ。

迂闊としか言いようがない。

庇えるものではない。

庇うつもりは最初からないが。


話せば話すほど第一王子はどんどん立場を悪くしている。

そろそろ黙ったほうがいいのではないだろうか。

余計なお世話かもしれないがついそんなことを考えてしまう。

さすがに先代国王陛下の前でそのようなことは言えないが。


先代国王陛下が真剣な顔で第一王子を見た。


「さて、クロード、お前に伝えることがある」


すいません、続きます。


読んでいただき、ありがとうございました。


誤字報告をありがとうございました。訂正してあります。

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