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第一王子殿下の恋人の盾にされました。  作者: 燈華


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33.祖母とお茶をします。

今回、少し短めです。

夕方近くにはラシーヌ家の屋敷に着いた。

使用人たちと共に祖父母が出迎えてくれた。


「四人ともお帰り。ロジェよく来たね。道中の護衛もありがとう」

「お帰りなさい、アレクシア、エド、アン、ルイ。ロジェも久しぶりね。今日は泊まっていくといいわ」


ロジェは幼い頃からよく遊びに来ていたので祖父母にとっても最早(もはや)身内だ。


「お久しぶりです。お元気そうでよかった。お言葉に甘えさせていただきます」


祖父母はロジェに一言ずつ言葉を添えたのでまずロジェが言葉を返した。

穏やかに祖父母が頷く。

そして彼らの視線がアンリエッタたちのほうに向けられる。


「お義父様、お義母様、只今戻りました」

「お祖父様、お祖母様、只今戻りました。お元気そうでよかった」


母と兄が口々に言い、アンリエッタは続いて口を開いた。


「おじい様、おばあ様、お久しぶりです」


ルイが続く。


恙無(つつがな)く帰ってこられました」

「ああ。さあ、中にお入り」

「はい」


祖父母に続いてアンリエッタたちも屋敷の中に入った。








疲れただろうからと一先(ひとま)ず解散となったところで祖母がアンリエッタに声をかけた。


「アン、一緒にお茶はどうかしら?」


何か話したいことがあるのだろうか?


「はい、是非」

「ルイたちは遠慮してちょうだい」


ルイが何か言う前に祖母に機先を制される。

ルイは不満そうな顔だったが渋々頷いた。


「では行きましょう、アン」

「はい」

「姉上、また後で」

「ええ」


アンリエッタは祖母の後についていった。








祖母の部屋でアンリエッタは祖母と向かい合って座る。

「疲れているところごめんなさい。でもアンは明日には()ってしまうでしょう? ゆっくり話すなら今しかないと思って」

「いえ、大丈夫ですわ」


なるべく長く行っていられるように明日には屋敷を発つのだ。

国境を越えるため、明日は辺境伯家に泊まることになっていた。

辺境伯家に帰るロジェとはそこでお別れだ。


祖母付きの侍女が祖母とアンリエッタの前にお茶とお茶菓子を出してくれる。このあと夕食が控えているのでお茶菓子は控えめだ。

マリーは今、アンリエッタの部屋を調えてくれるために席を外している。

祖母が一口お茶を飲む。


「ふふ、あと何回アンとこうしてお茶会ができるかしら」


嫁いでしまえば、そう滅多なことで祖母とお茶などできなくなる。

アンリエッタは曖昧に微笑んでお茶を飲む。


「困らせたわね。ごめんなさい」

「いえ。数えてしまうと寂しくなってしまいますので」

「そうね……」


部屋にしんみりとした空気が流れる。

何か空気を変える話題はないかとアンリエッタは思考を巡らせる。

ふと祖母の視線がアンリエッタのリボンに向いた。


「そのリボンがエドゥアルト様から贈られたものかしら?」

「ええ、そうです」


祖母にまでアンリエッタがエドゥアルトから贈られたリボンを身につけていると情報が届いているようだ。


「ふふ、独占欲丸出しね?」


アンリエッタは頬を赤らめる。

そんな孫娘の様子を祖母は楽しそうに眺めている。


「でもよく似合っているわ」

「ありがとうございます」

「エドゥアルト様は本当にアンのことをよく見ているのね」


祖母は嬉しそうでどことなく安堵しているようにも見える。

やはり遠くに嫁ぐ孫娘のことは心配なのだろう。


「そうですね。大切にしてもらっています」

「ふふ、よかったわ」


安堵に緩む微笑みを祖母は浮かべた。

そうそうエドゥアルト様と言えばと祖母がアンリエッタに伝える。


「エドゥアルト様は帰りがけに我が家に寄ってくださって挨拶されていかれたわ」


本当にエドゥアルトはそういうところはきちっとしている。


「そうですか」

「身内から反対者を出したくないのね」

「……わたくしたちの婚約は誰かが反対したからと言って反古(ほご)にできるものではありませんわ」

「そうね。でも、そういうことではないわ。わかっているでしょう?」

「はい」


エドゥアルトはアンリエッタの身内に祝福されたいのだ。

自分のためではなく、アンリエッタのために。


本当にエドゥアルトはアンリエッタのことを大切にしてくれる。

きちんと行動で示してくれるからアンリエッタはエドゥアルトの気持ちを疑うことはない。

離れていたって信じられる。


「いい婚約者を持ったわね」

「ええ、わたくしもそう思いますわ」


エドゥアルトは愛情を惜しまない。

だからアンリエッタもきちんと愛情を返したいと思うのだ。


「大切になさいね」

「はい」


しっかりと頷く。

本当に大切にするつもりだ。


そのままゆったりとお茶とお菓子を楽しむ。

アンリエッタはふと思い出して告げた。


「おばあ様、先日ミネット様からお茶をいただきましたの。おばあ様と飲みたくて持参しました。よろしければいかがですか?」


明日には領地を経つので一緒に飲めるとしたら今日しかない。


「いただくわ」


アンリエッタは壁際に控えた侍女を見る。


「マリーに言ってきてもらえるかしら?」

「承知しました」


侍女の一人がそっと部屋を出ていく。


「楽しみね。どんなお茶かしら?」

「飲んでからのお楽しみです」

「そう言われると期待してしまうわね」


祖母が楽しそうに微笑(わら)う。


「はい。期待してください」


アンリエッタも微笑み返した。








しばらくしてマリーがワゴンを押して部屋に入ってきた。

てきぱきとお茶を淹れてアンリエッタと祖母の前に出してくれる。

祖母がティーカップを持ち上げ香りを()いだ。


「あらいい香りね」


それから一口口に含む。


「爽やかなちょっと変わった味がするけれど美味しいわね」

「お口に合ったようでよかったですわ。花を茶葉に混ぜたお茶なのだそうですわ。」

「そう。これは花の香りなのね」

「はい」


二口、三口飲んだ祖母がティーカップを置く。


「ミネット王女殿下によくしていただいているのね」

「はい。お名前を呼ぶ許可もいただき、仲良くしていただいています」

「そう。よかったわね」

「はい」


思わず笑顔になる。

それとは反対に祖母は真面目な顔になる。


「でもいくら仲が良くてもあの方の嫁ぎ先についていっては駄目よ」


アンリエッタはきょとんとする。


「ええ、勿論ですわ。わたくしはルトに嫁ぎますから」


そこが揺らぐことはない。

この婚約の政略的な部分は置いておいても、アンリエッタは生涯を共に過ごすならエドゥアルトがいい。


祖母はほっとしたように微笑(わら)う。

それからふと少しだけ真面目な顔になる。


「アン、いつもの頼めるかしら?」

「ええ、勿論ですわ」


隣国に行く時によく親戚への届け物を頼まれるのだ。


「少し待っていてちょうだい」

「はい」


祖母自らが立ち上がって取りに行く。

机の上から取って戻ってきたそれをアンリエッタに差し出す。


「これを彼女に渡してくれる?」


祖母から差し出された手紙を受け取る。


「承りました」

「お願いね。アンも気をつけていってきなさい」

「はい」


アンリエッタは笑顔で頷いた。

祖母たちにもお土産と思い出話をたくさん持って帰ってこようと決めた。

読んでいただき、ありがとうございました。

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