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第一王子殿下の恋人の盾にされました。  作者: 燈華


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幕間 ルイ・ラシーヌ

ルイは一人自室で息をついた。


アンリエッタが元気に帰ってほっとしていた。

それと同時に疲れがどっと押し寄せてきた。

一日ずっと心配で心配で(たま)らなかったのだ。


大事な姉が傷つけられているかもしれないと考えるだけで血の気が引いた。

姉上を傷つけられて冷静でいられる自信はなかった。


ルイにとって姉上が一番大事だ。


姉馬鹿と一部に呼ばれていることも知っているけど別に構わない。

ルイはアンリエッタが大好きだ。

その気持ちは何も恥じることはない。

駄目なものだと誰にも言わせない。

姉離れなどするものか。




第一妃からお茶会の招待状が届いた。


まず間違いなく第一王子のせいだ。

恋人の盾にされただけでも腹立たしいのに。

どれだけ姉上に迷惑をかければ気が済むのか。

あまりにも姉上への甘えが目につくようならこちらにだって考えはあるのだ。


姉上はいろいろ危惧(きぐ)しているから釘を刺されてしまったけど。

それでもやるなとは言われなかった。

やられっぱなしでいられないのが貴族の矜持(きょうじ)だ。


ルイのことを(おもんぱか)ってくれたのもあるだろう。

我慢ばかりさせればどこでそれが噴き出すかわからない。

それでルイが傷つくのを恐れたのもあるはずだ。


姉上は優しいからーー。


そして、何だかんだでルイには甘い。

演技だとわかっているだろうにルイの言動に心を揺らしてくれる。

そして、最終的には全て許してくれる。


根底にある姉への気持ちが揺るがないと知っているから。


だからこそやるなら姉上にも家にも迷惑をかけないようにしないと。




本当は今日もついていきたかったが当然無理だった。

さすがに第一妃のお茶会に招待状もなしについていくことはできない。

姉上は専属侍女のマリーだけを連れて王宮へと向かった。




今日は誰も出かけるようなことはせず屋敷にいた。

どうせ誰といたって気もそぞろになっただろうから、それなら屋敷にいたほうがましだ。


ただ座って待っているのは落ち着かないので、それなら勉強でもしていようと思ったが無理だった。

心配で勉強が手につかなかった。

目の前の勉強に集中しようとしても、気づけば姉上のことばかり考えていた。

時間の進みも遅い。



早く帰ってきてほしい。

無事な姿を見せてほしい。



それだけを考えながらじりじりと時間が進むのに耐えていた。

お茶会なんて何時間もやっているはずがない。

それなのになかなか帰ってこない。


何かあったのだろうか。


気を()みながら待ちに待ってようやく姉が帰ってきたのは、太陽も沈もうとしている頃だった。


居間に集まっていた家族は姉の帰宅の知らせに急いで玄関ホールに向かった。

この時間まで留め置かれたとなると、相当消耗しているに違いない。

心配で自然早足となる。

何かあったら話してくれると約束はしてもらったが、本当に話してくれるかはわからない。

場合によってはすっかり隠してしまうだろう。

だからどんなささいなことでも見逃してはならないのだ。



だけど、帰ってきた姉は楽しそうだった。



夕食の時間が迫っていたので話は夕食後となったが、家族の頭の中は疑問符でいっぱいだったろう。それはルイだって同じだ。

結果、姉上以外の家族は気もそぞろとなりながら夕食を終えた。


書斎に移動してようやく姉上から今日のことが聞けた。

姉上は帰りの馬車の中で今日のことを整理してきたと言って、理路整然と一連のことを話してくれた。


意外なことに第一妃と二人だけのお茶会だったようだ。

最悪、お茶会の間、ちくちくと嫌味を言われる針の(むしろ)状態、袋叩きに()うことも心配していたから、それが回避できただけでもほっとした。

第一妃もそこまで考えなしの方ではなかったようだ。


姉上は第一妃の追及はうまく(かわ)すことができたようだ。

第一妃は姉上が普段つけているリボンが第一王子からもらったものではないかと疑っていたようだ。


第一妃の耳に入れた者は、わざとリボンの色を伝えなかったのだろうか?

そもそもあれは婚約者からもらったものだと学院に通っている者は(おおむ)ね知っているはずなのだけど。


疑念が湧く。


第一妃に姉上のことを告げた者は何が目的だったのだろうか。

第一妃がそのまま信じたということは、それだけ信頼している者が上げた情報ということになる。


本当に誰なんだろう?

人物が(わか)れば意図がわかるかもしれない。

……これは少し調べたほうがいいか?

頭の片隅でそんなことを考えながら姉の話を聞く。


それとアリメント国のお茶とお菓子が美味しかったそうだ。

緊張するお茶会で楽しみがあったようでよかった。

この件を口にしたのは、家族への配慮だろう。家族の心を少しでも緩めようとしたに違いない。


帰る途中で第二妃、第三妃とも遭遇したらしい。みんな暇なんだろうか。

まあ、第一王子がちょっかいをかけているらしい令嬢を見たいという好奇心と探りを入れに来たのだろう。


姉上にとっては心臓に悪い邂逅(かいこう)だったようだ。

それはそうだろう。

第一妃だけで手いっぱいだったところに立て続けに第二妃、第三妃と会ったのだから。


誰が第一妃のお茶会に行って第二妃、第三妃に会うことを想定できるだろう?

それも無事にお茶会が終わってほっとしていたとこだったのだから尚更だろう。


すぐに解放してもらえたようだけれど意地の悪いことは言われたらしい。

さすが王の妃は一癖ある。

それくらいの気概がなければやっていられないのだろう。


その後第二王女にお茶に誘われたらしい。

そこで隣国エーヴィヒ王国のことで話に花が咲いてついつい長居してしまったようだ。

まあ、姉上が楽しかったのならよかったよ。


だけど、まさか第一妃のお茶会に行って第二王女と名前で呼び合うほど仲良くなって帰ってくるとは思わなかった。

さすが姉上としか言いようがない。


姉上はルイと違って()で相手の(ふところ)に入るのがうまい。

本人は無自覚のようだけど。


姉上はどこがそんなに気に入られたのかわからないと不思議がっていたけど、無自覚の何かが第二王女の琴線に触れたのだろう。

姉上は第二王女のほうこそ人たらしだと言っていたけど。

相当第二王女のことを気に入ったようだ。


できればもうあまり近寄らないでもらいたい。


姉上によると第二王女は好奇心旺盛な方だそうだ。

いろいろ質問責めにあい、楽しく話している間に時間が経ってしまったと言っていた。


だが本当に第二王女が純粋に姉上に興味を持って接触してきたのかは慎重に見極めなければならない。

母親である第一妃の回し者の可能性もあるのだから。


姉上の人を見る目は信用しているけど、姉上にはお人好しな一面もある。

一度(ふところ)()れると、相手の評価が甘くなってしまうのだ。

それは美点だと思うけど、見ていて危なっかしくも思う。

ずっと傍にいられれば守れるけどそれは無理なことだから、せめて少しだけ疑ってほしい。


裏切られて傷つく姉など見たくはないのだ。


第一王子とベルジュ伯爵令嬢のせいで姉上の平穏な学院生活が滅茶苦茶になった。

姉上は王族の命令だからと、家のために耐えているけど。

本来なら嫌がらせを受けたりあんな噂を流されるような人ではない。


それを受けるのは本来ならそれを受けるのはベルジュ伯爵令嬢だ。

姉上のお陰で彼女はぬくぬくと平穏な学院生活を送っている。


考えるだけで苛立ちが募る。


彼女から貸しを取り立てる時に口出しさせてくれないかな?

姉上だから無理かな。


でもベルジュ伯爵令嬢はそれなりの報いを受けるべきだ。

もし、姉上に毛一筋でも傷をつけたら許さない。

絶対に。


手のひらに爪が食い込み、はっとして力を抜いた。

無意識に強く握りしめてしまっていたようだ。

危ない。

怪我をしようものなら姉上が気にする。

ルイは苦笑して苛立ちを散らした。



ぱたんと寝台に倒れ込む。



ああ、それにしても着飾った姉上は凛としていて本当に見惚(みと)れるほどに綺麗だった。

帰ってきてすぐに着替えてしまったので堪能(たんのう)できなかったのが悔しい。


今度、僕のために着飾ってくれないかなぁ。


読んでいただき、ありがとうございました。


明日もう一つ幕間を投稿します。

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