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第一王子殿下の恋人の盾にされました。  作者: 燈華


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幕間 リリアン・ベルジュ

学院から戻って着替えるとそのままベッドに突っ伏した。

侍女には一人にして、と言ってある。

帰る前に見た光景を思い出し、思わず(うめ)いた。


(はた)から見れば何てことはない光景だ。

クロード様が一人の令嬢と話していた。

ただそれだけの光景だ。

だがそれだけの光景がすごく羨ましかった。


ここ数日、リリアンはクロード様に会うことはできないでいた。それどころか声を聞くことはおろか、御傍に近寄ることすらできていない。

リリアンとクロード様のことを知っているのはヴァーグ侯爵令息だけだからだ。


今は何故かヴァーグ侯爵令息は学院を休んでおり、傍にいるのは別の側近なのだ。

これでは遠くからそっと御姿を見つめることしか叶わない。

だからこそ、彼女が羨ましかった。

クロード様は彼女には堂々と声をかけていらっしゃる。


ーー私は会えないのに。


(ねた)む気持ちが沸き上がってきて慌てて打ち消す。

リリアンに彼女を羨ましがったり妬んだりする資格はない。

それくらいは(わきま)えていた。


アンリエッタ・ラシーヌ伯爵令嬢。

クロード様相手にもしっかりと自分の意見を言うことができる芯の強い人だ。

どんなに悪い噂を立てられても顔を上げて堂々としている。

リリアンにはない強さを持つ人。


リリアンにも彼女のような強さがあればよかったのだろうか?


いや、無理だ。

彼女は周囲の人間に守られている。

兄弟にも友人にもーー自身の姫様にも。


"西"の姫様が、ラシーヌ伯爵令嬢はクロード様に口説かれて困っている、と周囲に周知したと聞いた時は驚いた。

クロード様とのことが姫様にバレたらーーリリアンはただでは済まない。

友人だって、もしかすると家族ですら庇ってはくれないだろう。

"東"の地では生きていけない。下手をすればこの国にいることさえできなくなる。


彼女とは違う。

何もかも彼女はリリアンとは違う。


リリアンはクロード様に綺麗だなんて言われたことは一度だってない。

いつも可愛いとは言ってくれるが、綺麗とは言われたことはないのだ。


羨ましい。


そう思ってはいけないのに、どうしても思ってしまう。

ラシーヌ伯爵令嬢に言っていることは本心ではないとクロード様はおっしゃってくださっているけれど……。

でも、綺麗だ、という言葉は本心だと思う。

リリアンだってラシーヌ伯爵令嬢は綺麗だと思うから。



クロード様は彼女に惹かれたりはしないだろうか?

だって彼女は美人だ。

凛としていて、立っている姿が本当に綺麗で、クロード様と一緒に立っているとまるで一幅の絵画のようだ。



彼女もクロード様に恋をしたりはしないだろうか?

だってクロード様は優しくて格好いい。

この国のことを真剣に考えてくださっている。

とても素敵な人だ。

クロード様のことをきちんと知れば彼女だって惹かれるに違いない。



ーーやだな。



不意にそんな思いが沸き起こってくる。

枕にぎゅっと顔を押しつける。


やだやだやだ。


クロード様の隣に彼女がいるのは嫌だ。

ううん、彼女だけではない。誰がクロード様の隣に並んでも嫌だ。



わかっている。

わかってはいるのだ。

それは分不相当な願いだ。



会いたい。

クロード様に会いたい。



これは、期限付きの恋だ。

どちらかに婚約者ができてしまえば終わりになる恋だ。

だからせめてーー

せめてもう少しだけ。

読んでいただき、ありがとうございました。

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