姉に妹が婚約者を奪われ、無実の罪で断罪され、天罰はいずれ下るといい辺境でのたれ死んだはずだったが、その彼女が夜に王宮に現れるあの悪役令嬢を成仏させろ!と言われて無理やり城に連れてこられた降霊師のお話。
「……絶対にあれはフローラでしたわ!!」
私は目の前にいる女性にヒステリックに叫ばれ、とても困っていました。
死霊使いならあれを成仏させろと彼女は怒るのです。
「いえ、そういわれましても」
私はとても困り切っていました。だって王宮に夜な夜な現れるというこの人の死んだはずの双子の妹とやらの霊の痕跡すらありません。
「私は一応降霊師でして」
「どちらも同じでしょう!」
この方は隣国の王妃様、私は無理やり隣国に呼ばれ、この人の妹であるフローラさんの霊を成仏させろと命令されています。
私の親戚らしいんですが、いとこのはとこのお嫁さんの娘ってほぼ他人じゃないですか!
どうしてもと私は親戚の貴族に頼まれこうやってやってきました。
でもこの人怖いです……。
私は夜になればなんとかいけるかもと言い訳をして王城に泊まることになりました。
「……というかいませんね」
「あのお、あのお」
「え?」
「少しお話があるのですが……降霊師さんですよね?」
夜中に夜な夜なフローラさんが現れるという王宮の廊下あたりをうろつき、やっぱりいませんねとやっていましたら、メイドさんに呼ばれました。
「はい?」
「あのお願いがあるのですが」
私は彼女から聞いたある出来事、それを聞いて、あの命令をする王妃様がとんでもない人だと知りました。
いや一人からのいうことは信じられませんが、このメイドさんに守護する方も言われていて……。
はあしかし、どうしてこう王族とか貴族とかというのは傲慢なんでしょう、違い方もいますが。
「とりあえずお願いはわかりました。やってみましょう」
「ありがとうございます。フローラ様も喜ばれます!」
しかしねえ、私はどうしたってこんなことに巻き込まれる運命のようです。
しかしフローラさんも気の毒といえば気の毒なのですよね。
やってみましょう。
「フローラさんの霊はおられました」
「ほらやっぱりいたでしょう陛下!」
「うむ、なら早速成仏させてほしい」
私はあのろくでもない王妃様と陛下の前で、成仏させたいのなら、彼女から詳しいお話を聞いてどうして夜な夜な王宮に現れるか聞かないとと言葉を続けます。
思い切り嫌がる二人、でもそうしないと成仏しませんと脅してみたらやっと了承してくれましたよ。
「……フローラ・ベリュイットさん、享年18歳、生誕はアクアの年、死んだのは……」
「早くしてよ!」
私が呪文を唱えだすときいっと怒り出す王妃様、というかこの人いつも怒ってません?
私は仕方ないというようになんとか手早く陣をかきあげました。
『……お姉さま、殿下、お久しぶりです』
私の口から漏れ出す声を聞いてひいっと恐れるように身を引く二人、ああやっぱりいつもこうなんです。
だからこの職業、なりたくないナンバーワンなのですねえ。
『辺境の地で病で死んでもう二か月ですわ。そして……』
「成仏してくれフローラ!」
「成仏してフローラ!」
『私はお姉さまを階段から突き落としてませんし、いじめてません。それを認めてください。私は無実です……』
どこかで聞いたようなお話です。どうして婚約破棄ってこういうのとセットになるのですか? 私は風とため息をつきそうになりますが、今はだめです。
「いやしかし」
『私は無実です。それを認めてくださらない限り、こちらにとどまります』
「あなたは無実よ、私が嘘を言ったの、だから早く成仏して!」
そしてそれが嘘というのも同じというか、私は自国でも同じようなことにつき合わせたんですよ! 前にね。
フローラさんが、なら私の命日には必ずお花を墓にお供えしてくださいと言葉を続けます。
こくこくとうなずく二人。
『それが破られたときにはまたこちらにきますから……』
しかしこの反応、フローラさんがかわいそうです。無実の罪をきせられて怒るのは当然なのに、しっしあっちへ行けみたいな対応ですよこれ。
『また破られたときはきますから』
私は二人を見て、もう帰られましたよと告げると、やっと成仏してくれたと二人で満面笑顔になります。
いやその反応はひどいですよ。
「もう帰ってもらっていい、ご苦労だったな」
私はこの一言をもって、下がらされました。気持ち悪いといった感情がその顔にはあります。
恐れなども含まれていますし、やはりこの職業は人に嫌われるナンバー1のようですね。
「しかし、あなたが生きているとわかったら、どうするのでしょうかねえ」
「……まあ死んだと思わせておいたほうがいいとは思ったので、誤報をそのままにはしていますわ。親しいものにだけは生存を伝えましたけど」
私がお話をしているのは生きているフローラさんでした。
実は、彼女、死んではいなかったのです。一時容態を危ぶまれていましたがもちなおし、今は元気でおられます。メイドさんからお伺いしました。
「生霊が夜な夜な抜け出していたとは……」
「意識不明の重体が続いていて……やっと最近目覚めたら王宮に行ってたなんて……」
生霊が抜け出して、ただ廊下をふよふよしていただけのようです。どうも無実を訴えたいという思いで魂が抜け出していたようで。
私が行ったときは意識が戻っていたので、もう生霊がいなかったんですよね。私は魔法でフローラさんの声を真似ただけなんですよ今回。
「これからどうされます?」
「あの人たちから無実だという言質を引き出せたのですが、もう国に戻るつもりはありません。隣国で知人がいますので、頼っていこうと思いますわ」
「それがよろしいかと」
辺境の修道院で私はメイドさんは元気にしていましたよと笑うとよかったわとフローラさんを笑顔になります。
メイドさんに頼まれて、この騒動を終わらせてくれといわれ、ある程度予測していたことが答え合わせできました。
しかし、あの人たちあまり反省していないようでしたが……。
「関わり合いになりたくないので、もういいですわ。それにどうも守護の人たちが離れて行っているようなので、近々王家も危ないかもしれませんわね」
「確かに守護の気配が薄い方々でしたね」
「生霊としてさまよっていたらそんなことも感じるようになれますのねえ」
「私はいつも感じてますけどね」
にこにこと私が笑うと大変ですわねとフローラさんが言ってくれましたが、まあなれたらどうってこともないですよ。
しかしお優しいご令嬢ですね。ざまあとかしなくていいものでしょうか。
「まあ私を見て怖がっていた殿下とお姉さまの様子も面白かったですし」
ころころと笑うフローラさん、優しすぎます。でも私の知っている人もこんな優しい人でしたね。
私は同じように、悪役令嬢というレッテルを貼られても優しい私の愛しい人のことを思い出しておりました。
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