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番外編2 大切な妹(レオン視点)

 私は妹が可愛い。


 二歳下の妹とは歳が近いこともあって、幼い頃はよく喧嘩をした。男女だから私が勝つと思われるだろうが、口喧嘩なので妹が結局は勝った。そんな妹も成長するにつれ、淑やかになり、口喧嘩もしなくなったが、私にはそれが寂しかった。


 女性は男性に従うもの。口答えしてはいけない。そういう教育を受けていた妹は、どんなに理不尽な言い分でも不平そうな顔をしながらも、歯をくいしばって耐えていた。だが、妹のそんな真面目さが仇になった。


 あの日、変わり果てた姿で帰ってきた妹に、私は何も声をかけることができなかった。優しい言葉なんて何の慰めにもならないと思い知らされた。


 しかも相手は侯爵家当主だ。泣き寝入りするしかない。妹が薬を盛ったなんて思えないのに、それなら誰がと思っても怪しい人物が全く浮かんでこなかった。


 妹はそうして全てを諦めたまま、侯爵家に嫁いだ。あの頃の感情を映さないガラスのような瞳は今でも忘れられない。


 本当は引き止めたかった。だが、そうするには状況が悪過ぎた。妹と私の婚約が破棄になり、莫大な慰謝料が降りかかったからだ。これでさらに妹が侯爵家に嫁がないとなると、侯爵家の顔に泥を塗ることになり、こちらからも慰謝料を請求されかねない。しかも対外的には、妹から結婚を迫ったことになっている。


 伯爵家当主である父もだが、次期当主である私も、伯爵家を守らなければいけないという理由で、妹を差し出すしかなかった。


 もっと力があれば守れたのに、と毎日後悔した。それからは会いたくても謹慎中で会わせてもらえなかった。妹はどんな気持ちで、どんな暮らしをしているのかと心配していた。子供が産まれたと簡単な近況を知らせる手紙はあったものの、妹がどういう状況にいるのかはわからずじまいだった。その心配が当たってしまったのはそれからずっと後だった。


 ◇


「ヴィーが階段から落ちて意識が戻らない?」


 突然ティルナート卿が家に来た。何かこちらに落ち度があったのかと真っ青になっていた私たちに、卿は予想外のことを言った。その後卿は真剣な顔で話し始め、ヴィーが階段から落ちた状況、それまでの経緯、あの夜会の全てが明らかになるにつれ、私の心は怒りに染まった。


「ふざけるな!」


 思わず拳を振り上げていた。目の前で卿が吹っ飛ぶが、そんなこと知ったことではない。寄ってたかって妹をいじめた挙句、妹が冤罪だったから償いをしたい? そんな甘い話があるか!


 だが、私も妹を守りきれずこいつに差し出した。私も同罪だ。殴ったことを許せずに私を罰するならそれでいい。なんだか気分はスッキリしていた。


 しかし、話はそれだけでは終わらなかった。意識の戻った妹は、全てを忘れていたのだ。私たち家族のことまで忘れてしまったことに私たちの罪を感じて辛かった。

 だが、気に入らないがティルナート卿が動いたおかげで、私たちが妹を引き取る状況が整った。なのにまた予想外のことが起きた。


 記憶のない妹はティルナート卿を愛してしまったのだ。どうしてこう次から次に妹にとって辛い状況に追い込まれるのか。頭を抱えたくなった。

 思い出した時に辛くなるに決まっている。それでも私たちは下手に動いて妹を刺激してより悪くなるよりはマシだと、静観することにした。


 結果的に、記憶を取り戻した妹は、試練を乗り越えて強い女性になっていた。ティルナート卿にはっきりものを言い、よく笑い、素直に喜び、怒る。淑女としては眉を顰められるかもしれないが、私は幼い頃の妹が帰ってきたようで、嬉しく思う。


 ただ、それを引き出したのがあの男というのが気に入らないが。奴も妹を大切にしているようだし、結局は妹の幸せが一番だ。だからこれでいいのだとは思う。 それでもしばらくは義兄上とは呼ばせてやらない。


 それでも、素直に罪を認め、妹を幸せにすると約束したあの男を認めてやってもいいとは思っている。

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