真実が明かされる時1
ここからシリアス展開に入ります。無理をせずに読んでいただければと思います。
それではよろしくお願いします。
「ああ、ありがとう」
カイル様が言うとメイドは会釈して出て行った。途端にこの場は静寂に包まれた。
私たちは話がしやすいように向かい合って座っている。だけど私はこれからどんな話が始まるのかと、不安で顔をあげられない。
「さて……」
カイル様が口を開いて、思わず私は震えた。そんな私を見たカイル様は苦笑する。
「そんなに怯えなくても取って食べたりしないよ。それで、何が聞きたいんだい?」
言われて私は考えた。知りたいのは全てだけど、何から聞いていいかわからない。だから順番は彼に委ねることにした。
「……貴方が隠していること、全てが知りたい」
「……ああ、わかった」
ふう、と嘆息してカイル様は記憶を呼び起こすように、宙を見た。
「前に私たちが出会ったのは夜会だったと言ったことを覚えているかい?」
「はい、覚えていますが……」
唐突に聞かれて、私は思い出しながら答える。それが一体何の関係があるのだろうかと、私の頭に疑問符が浮かぶ。
「……そもそもの発端は、一年と十カ月前くらいにあったその夜会だった。私はその夜会に参加して君と知り合ったんだ。そうは言っても、お互いに別のパートナーがいた。私は当時付き合っていたルイーザという子爵家の令嬢、君はフェリクスという伯爵家の長男で君の婚約者だった男だ」
「私に婚約者がいたんですか?!」
あまりにも想定外で声が裏返った。
「ああ。政略的なものだったそうだけど、私にはそれなりに仲が良さそうに見えたよ」
「じゃあ、どうして……」
私は彼と結婚せずにカイル様と結婚したのだろうか。
政略的な婚約ならそう簡単に反故にできるはずがない。貴族にとって結婚というのは個人ではなく、家と家との繋がりだからだ。
それに、マクラーレン伯爵家からすると元婚約者の伯爵家よりもティルナート侯爵家と縁を結ぶ方が得だ。だけど、ティルナート侯爵家からするとマクラーレン伯爵家と繋がる利点はない。
何より、あの両親がそんな不義理をするだろうか。
記憶を無くして一度しか会ったことはないけれど、私が記憶を無くして泣いていた母や、わざわざカイル様に頭を下げて連れ帰ろうとしてくれた父の姿と一致しないのだ。
私が黙り込んだのを見て、カイル様は話を再開した。
「……それは、これから説明するよ。どこまで話したかな。私たちにそれぞれパートナーがいたというところまでだったか……それでその夜会の時、君たちと私たちは近くで談笑していた。だけど、私は途中から体調が悪くなって、一人で大丈夫だからと言って、客室で休ませてもらうことにしたんだ」
そこまで聞いても、まだ話が見えない。私は黙ってカイル様の話に耳を傾けていた。
「……最初は熱でも出たのかと思ったんだ。何故か顔や体が火照って仕方なかったから。だから寝ていれば治ると思っていたのに、次第に体が疼いてたまらなくなった。体に籠る熱がどうしようもなく苦しくて、シーツにくるまって耐えていたんだ。そうしたら、君が手洗いに行くためにたまたま通りかかった。ホールから手洗いまでは客室を通らないといけなかったからね。で、私の苦しそうな声が聞こえたんだと思う。大丈夫ですかと言いながら、君が入って来た。私は意識が朦朧としていたからはっきりとは覚えてないが、大丈夫だから放っておいてくれと何度か言った気がする。でも、君は優しいから心配して離れるどころか、手の届く距離まで近づいてきた。そして、私は君を……」
カイル様は口をつぐんだ。沈痛な表情で私を気遣わしげに見ている。おそらく、その言葉を言いたくないのだろう。
カイル様の様子と、話の流れで私は最悪の想像をした。血の気が引いて、背筋を冷たい汗が流れ落ちる。
「……ま、さか……」
嘘だ、嘘だと言って欲しい。そう願った。だけど、おそらく私の想像は当たっている。カイル様は顔を酷く歪めて頷いた。
「……おそらく、君が予想している通りだよ。私は、君を、力ずくで犯したんだ。そして、シェリアはその時の子どもだ……」
読んでいただき、ありがとうございました。




